セルニルトンはどんな薬?効果や副作用、注意点を解説
男性に特有の健康問題である「前立腺肥大症」。中高年男性に多く見られるこの病気は、前立腺が肥大することで排尿障害などの問題を引き起こします。多くの方がこの問題で悩んでいますが、その解決策として注目されるのが「セルニルトン」という薬です。
本記事では、セルニルトンが前立腺肥大症にどのように作用するのか、副作用や服用上の注意点について詳しく説明します。セルニルトンを服用されている方、これから服用を考えている方への参考になれば幸いです。
セルニルトンとはどんな薬?
セルニルトンは、前立腺肥大の患者さんや頻尿・残尿など尿に関する悩みを抱えている患者さんに処方される薬です。
植物由来の抗酸化作用、抗炎症作用が上記の症状を和らげ、症状の軽減が期待できる漢方薬です。
一般的には、次のような病名・症状の患者さんに処方されます。
- 慢性前立腺炎
- 初期前立腺肥大症による排尿困難
- 頻尿・残尿および残尿感
- 排尿痛
- 尿線細小
- 会陰部不快感の軽減
年齢を重ねると、尿に関する悩みが増える傾向があります。たとえば、尿の回数が増える頻尿、排尿後もまだ尿をしたい感じが残る残尿感、くしゃみや咳、力を入れたときに尿が漏れてしまう尿失禁などです。
これらの症状は、男性は前立腺肥大、女性は骨盤の周りの筋肉の衰えが原因であるケースが多く、日常生活に支障をきたしている方も少なくありません。
これらの症状を軽減するために、さまざまな薬が発売されていますが、漢方薬であるセルニルトンはゆるやかな効き目と副作用の少なさが人気で、多くの患者さんに処方されているのです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001asyw-img/2r9852000001at63.pdf
セルニルトンの効果
セルニルトンは8種類の植物由来エキスをベースにした漢方薬で、血液の流れを改善し、初期の前立腺肥大症に起因する排尿困難、頻尿、残尿などの症状を緩和します。
一般的な頻尿や尿失禁の治療薬は抗コリン作用という、自律神経(副交感神経)の働きを抑えることで症状が改善・軽減します。とても使い勝手のよい薬ですが、抗コリン作用に由来する薬は前立腺肥大の患者さんには使用できません。
抗コリン薬には、膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用があるからです。前立腺が肥大して尿の出口がせまくなってしまった状態の方に、さらに尿路をせまくする薬を使用してしまうと、より症状が悪化してしまうということですね。
一方、類似する効果が期待できるセルニルトンは抗コリン作用はないため、前立腺肥大の可能性がある男性高齢患者さんにも安心して処方できるのです。
ここからは、セルニルトンに関する研究をまとめた報告を2つ紹介します。
b.セルニルトン ®(cernitine pollen extract,Cernilton®)検索では 12 論文があり、そのうち 4 編を引用した。男性下部尿路症状診療ガイドラインも参考とした。
推奨グレード:C1
- 夜間頻尿などの症状に対する有効性は示唆されているが、他覚的所見の改善効果は認められない(レベル 1)。
- 副作用は少ない。
- プラセボやパラプロストと比較し夜間頻尿への効果が示唆されているが、尿流量、残尿量への改善効果はない。
- 慢性非細菌性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群に対する有用性を示す報告がある。
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/08_prostatic_hyperplasia.pdf
(6)アミノ酸製剤、植物製剤 (a)セルニルトン®(cernitine pollen extract、Cernilton®) 本薬剤に関連する 3 編を引用した。 推奨グレード:C1
- 前立腺肥大症患者の夜間排尿回数に関する報告がある〔レベル 3〕。
- しかし、有効性についてのエビデンスが少なく、さらなるデータの蓄積が必要である。 ・BPH 患者における夜間頻尿に関する報告では、プラセボ群に比較して約30%夜間排尿回数が減少している。
- またアミノ酸製剤であるパラプロストに比較して夜間排尿回数がより減少したとの報告もある。
- BPH 患者に対するセルニルトンの有効性を検討したシステマティックレビューにおいて、プラセボおよびパラプロストよりも夜間頻尿を減少させることが示された。
この Cochran Database Sys Rev は、新たなエビデンスの追加はないという理由で、後年 取り下げられた。
いずれも、セルニルトンを服用した多くの患者さんで夜間頻尿の改善が認められたと報告されています。
もし夜間頻尿でお困りの方は、セルニルトンを試してみてもよいかもしれませんね。
セルニルトンの副作用
セルニルトンを服用して、命にかかわる重篤な副作用が起こったという報告はありません。報告されている副作用の代表的なものは、胃腸障害、胃部不快感、食欲不振などの消化器症状で50人に1人程度の頻度です。ほかの薬との飲み合わせなどで、副作用が起こったという報告もありません。
セルニルトンを服用する際の注意点
セルニルトンは、副作用も少なく多くの患者さんが服用している薬ですが、服用に際して1つだけ注意点があります。
セルニルトンは植物由来エキスの漢方薬です。薬に含まれる植物に対してアレルギーを持っている人は服用できません。
なお、セルニルトンに含まれる植物由来エキスは以下のとおりです。
- チモシイ
- トウモロコシ
- ライムギ
- ベーゼル
- ネコヤナギ
- ハコヤナギ
- フランスギク
- マツ
セルニルトンで効果が実感できないときの治療方法
セルニルトンの服用を開始しても、前立腺肥大に関連する症状が軽減しない、効果が実感できないケースも少なくありません。一度症状が軽減しても、また再燃してしまう方もなかにはいます。
セルニルトンで効果が実感できないケースでは、違う種類の薬を服用したり、前立腺を小さくする手術をおこなったりする場合もあります。当院では、セルニルトンやそのほかの薬を服用しても症状が改善しない患者さんには、専門医療機関へのご紹介もおこなっています。
セルニルトンで効果が実感できない方は、ぜひ一度、当院へお気軽にご相談ください。
まとめ
前立腺肥大症は中高年男性に多く見られる健康問題であり、排尿障害などの不快な症状を引き起こすことがあります。その解決策として、セルニルトンは非常に有用な選択肢です。
本記事では、セルニルトンの作用機序、服用方法、副作用について詳しく解説しました。セルニルトンにはほかの薬と比べて副作用が現れにくく、前立腺肥大症の患者さんでも安心して服用できる特徴があります。
一方で、薬の効果を正しく得るためには、医師の指導が必要です。医師の指示を守って正しく服用し、症状の程度や頻度など体調の変化には注意しましょう。