カルボシステインはどんな薬?効果や副作用、注意点を解説
風邪や気管支炎など、呼吸器系の症状で困ったときに助けとなるのが「カルボシステイン」です。カルボシステインは、粘液をサラサラにし、気道から排出しやすくする働きがあります。これにより、咳や痰が出る症状の改善が期待できるのです。
本記事では、カルボシステインの効果と作用機序、副作用、服用の際の注意点について分かりやすく解説します。風邪の季節や花粉の時期に備え、カルボシステインについての理解を深めておくと良いでしょう。
カルボシステインとはどんな薬?
カルボシステインは痰の切れを良くしたり、副鼻腔炎のときに鼻の奥に溜まっている膿を出しやすくしたりする薬です。
一般的には、次のような病気の患者さんに処方されます。
去痰(痰を出しやすくする) | 上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、 |
排膿(膿を出しやすくする) | 慢性副鼻腔炎 |
排液(耳に溜まった液体を出しやすくする) | 子どもの滲出性中耳炎 |
1980年代に発売され、現在まで子どもから大人まで幅広い年齢の人に処方されています。幅広い年代で使用できるよう、錠剤やドライシロップ・シロップなどさまざま形態で販売されているのも特徴です。
ちなみに、一般的に子どもに処方されるドライシロップには青リンゴ風味、シロップにはチョコバナナ風味などの風味づけがされていて、飲みやすい工夫がされています。
https://www.takata-seiyaku.co.jp/medical/product/t_2237/CRB-1(10).pdf
カルボシステインの効果
細菌やウイルスに感染して、鼻やのど・肺などに炎症がおこると、細菌やウイルスを身体の外に押し出そうとして、気道や鼻の分泌物が増えます。その増えた分泌物が“痰”です。
細菌やウイルスの種類、炎症の程度、体調などによっては、痰がドロドロしてしまい身体の外に出しにくくなることがあります。カルボシステインは鼻や気道の粘膜が本来持っている、痰や膿を身体の外に出す力をサポートします。
さらに、気道からの分泌物の粘り気をサラサラに変えてくれる効果もあり、炎症で気道や副鼻腔の粘膜がダメージを受けている場合には、粘膜の修復もサポートします。これらの働きによって、痰の切れがよくなり、痰がらみや咳の頻度も減るのです。
カルボシステインの副作用
薬には効果だけでなく、副作用があります。カルボシステインも例外ではありません。
ここからは、カルボシステインの副作用を『重大な副作用』と『そのほかの副作用』に分けて解説します。
重大な副作用
頻度としては極めて低いとされてはいますが、カルボシステインは次のような重大な副作用が報告されています。
- 皮膚粘膜眼症候群
(Stevens-Johnson 症候群:スティーヴンス・ジョンソン症候群) - 中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)
- 肝機能障害
- 黄疸
- ショック
- アナフィラキシー様症状
Stevens-Johnson 症候群は皮膚や関節に赤みをおびた発疹が出て、次第に全身に広がり水ぶくれやただれ、視力障害などが現れます。死亡率は約3%で、眼や皮膚などに後遺症を残すリスクが高い病気です。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4074
TENは皮膚症状だけでなく、高熱やだるさなどを伴います。
スティーヴンス・ジョンソン症候群から進展するケースも多く、敗血症や多臓器不全などを併発し、死亡率は約20%にものぼります。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4037
これらの副作用は、一見風邪の症状と見分けがつきにくいです。しかし、命にかかわったり後遺症を残す可能性が高い副作用のため注意が必要です。カルボシステインを服用し始めてから皮膚症状がひどくなったり、解熱剤を服用しても熱が下がらないなど気になる症状があるときは、すみやかに服用を中止し医療機関を受診しましょう。
そのほかの副作用
カルボシステインには、次のような副作用も報告されています。
消化器 | 食欲不振、下痢、腹痛、気持ちの悪さ、嘔吐、お腹がはる、のどが渇く |
過敏症 | 発疹、湿疹、皮膚の赤み、むくみ、発熱、息苦しさ |
その他 | かゆみ |
いずれの副作用も発生頻度は不明ですが、以下のような場合には処方した医師や医療機関に相談しましょう。
- カルボシステインを服用してから気になる症状が現れた
- 服用後数時間で症状が現れるが次の服用前には症状が軽くなる
- 気になる症状が長く続く
カルボシステインを服用する際の注意点
カルボシステインを服用する際に、飲み合わせに注意する薬はありません。しかし、以前にカルボシステインで過敏症やアレルギー症状を起こした経験がある人は、服用を避けるようにしてください。
そのほかに、肝臓や心臓に病気がある人が服用して、肝機能の悪化や心不全をおこしたという報告があります。痰がからむからといって自己判断で服用せず、医師に相談してから服用するようにしましょう。
カルボシステインQ&A
最後に、カルボシステインを服用する患者さんから多く寄せられる疑問に回答します。
Q:カルボシステインとムコダインは同じ薬ですか?
A:同じ薬です。
カルボシステインは一般名です。ムコダインはカルボシステインの商品名で、ムコダインという薬の中にカルボシステインという成分が含まれています。また、ムコダインは先発薬です。カルボシステインは、ムコダインのジェネリック医薬品にあたります。
それぞれの薬に含まれている成分は同量でも、薬を形作る添加材の種類や量は異なります。さらに、ジェネリック医薬品にあたるカルボシステインのほうが、ムコダインよりも安価で自己負担額は抑えられます。
なお、先発薬のムコダイン、ジェネリック医薬品のカルボシステインで有効性・安全性に大きな差はありません。
Q:カルボシステインは1日何回服用しますか?
A:カルボシステインを服用し、一番薬が効いているのは服用後1.5~2時間後です。時間経過とともに徐々に効果は薄れてしまい、服用後8時間経過するとその効果はほとんどありません。
そのため、カルボシステインは1日3回服用します。ただし、年齢や体重・病状によってその頻度は異なります。医師の指示に従って服用するようにしましょう。
Q:カルボシステインはいつまで飲みますか?
A:風邪などの症状緩和に処方された場合には、症状がよくなるまで、もしくは処方された薬がなくなるまで服用するようにしてください。
また、病気によっては長期間服用することもありますので、医師の指示に従って服用しましょう。
まとめ
カルボシステインは、特に呼吸器系の症状に対して広く用いられる薬です。痰の切れをよくしたり、鼻の奥に溜まっている膿を出しやすくしたりする効果があります。大人から子どもまで、幅広い年齢・体格・病状の患者さんが使えるように錠剤・粉薬・シロップなど多様な製剤が発売されています。
この記事では、カルボシステインの具体的な効果や副作用、服用時の注意点などについて詳しく解説しました。カルボシステインは単なる風邪薬ではなく、その効果を最大限に発揮するためには正しい知識と使い方が重要です。この記事が皆さんの健康管理の手助けとなれば幸いです。
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/pdf/i_mucod.pdf