血圧が高いとどうしていけないの? 高血圧の原因や注意点、対処法を解説
目次
血圧とは?
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す力のことを指します。体中すべての血管には圧力がかかりますが、一般的には心臓から各部へと血液を送り出す動脈、特に上腕動脈の圧力を指して「血圧」という場合が多いです。
血圧を決定する主な要因としては、1回の拍動で心臓から全身へ送り出される血液の量、血管の弾力性や拡張具合、手足の末梢血管に血液が流れ込む際の抵抗力、血液の粘度などが関係しています。
また、血圧を計測したときに「最高血圧」と「最低血圧」が表示されると思いますが、これは心臓が拍動して収縮・拡張するのに合わせて、血圧も上下するためです。心臓が収縮して血液が送り出された時の値が「最高血圧」、反対に心臓が血液を溜め込もうと収縮した時の値が「最低血圧」となります。
基本的には、血圧は一日の中で常時変動するものです。夜間や睡眠時は低く保たれており、朝目覚めると徐々に上昇して、日中は高くなることが一般的です。また、冬よりも気温の高い夏の方が血圧が高くなる傾向もあります。
高血圧症とは?
高血圧症とは、安静時でも慢性的に血圧が高い状態です。運動や気温などによる一時的な血圧上昇ではなく、繰り返し測っても常に血圧が高い状態が続くようであれば、高血圧症の可能性があります。
高血圧診療ガイドライン2019によれば、正常な血圧は「最高血圧120mmHg以下/最低血圧80mmHg以下」であり、高血圧の基準は「最高血圧140mmHg以上/最低血圧90以上」となっています。
ちなみに、血圧は病院で測る方が高くなる傾向があり、これを「白衣高血圧」と呼びます。そのため、家庭で測定した血圧の値を重視する病院もあります。
血圧が高いとどうしていけないの?
血圧が高い状態が続くと、体にはどのような影響があるのでしょうか。
高血圧が続くと、血管の内側に常時圧力がかかることで内壁が徐々に厚くなり、「動脈硬化」と呼ばれる状態になります。動脈硬化が進むと、血管の弾力性がなくなり、血栓やプラークが生じて血管が詰まりやすくなります。その結果、脳梗塞や脳出血を引き起こす可能性が高まるのです。
さらに、血液が流れにくい状態は心臓にも負担がかかるため、心臓の筋肉が厚くなる「心肥大」といわれる状態を引き起こします。心肥大になると心臓の機能が低下し、心疾患や狭心症のリスクにつながります。
具体的な疾患例は、以下で解説していきます。
心筋梗塞、狭心症など
心肥大を引き起こす高血圧は、心筋梗塞や狭心症といった心疾患のリスクを高めます。特に、男性のリスクが大きいとされており、最低血圧が10mmHg高くなるだけで、心疾患のリスクが約15%増加するといわれています。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など
高血圧による疾患で最も多く見られるのが、脳卒中です。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血とくも膜下出血の3つに分類されます。
脳卒中のリスクは、最低血圧が10mmHg上昇すると男性で約20%、女性で約15%高くなるといわれています。脳卒中を発症すると、命が助かっても運動障害や言語障害が残りやすく、長期的なリハビリが必要になるケースもあります。
慢性腎臓病
高血圧は、腎臓の機能低下を引き起こします。腎機能が下がると余分な塩分や水分をうまく排泄できず、血液量が増加してさらに血圧が上がるという悪循環を引き起こし、慢性腎臓病を発症するリスクが高まるのです。慢性腎臓病の症状としては、夜間尿や貧血、倦怠感、息切れなどがあげられます。
さらに、慢性腎臓病は脳卒中や心筋梗塞による死亡率を高めることもわかっています。
高血圧症の自覚症状は?
高血圧症は自覚症状の少ない疾患といわれていますが、合併症を発症した場合、頭痛や動悸、息切れなどの症状が出るケースがあります。
前述の通り、高血圧が続くと全身の血管で動脈硬化が進行し、その結果、心肥大を引き起こします。肥大した心臓が活動を続けると、通常時よりも多くの酸素や栄養が必要です。しかし、供給量は変わらないため次第に心臓の機能が低下し、「心不全」という状態を引き起こして、動機や息切れといった症状につながります。
また、急激に高血圧が進行すると脳内の血圧を制御する機能が低下して「高血圧性脳症」を引き起こします。脳に負担がかかり、頭痛や吐き気、意識障害といった症状が現れます。
腎臓病や内分泌の病気など血圧の上がる原因が明らかな高血圧を「二次性高血圧症」といいます。原因が特定できているため、外科手術などにより病気を治療すれば、血圧を下げることが可能です。
本態性高血圧症は、遺伝などの先天的な要因のほか、生活習慣などの環境要因が主な理由と考えられ、生活習慣病にあたるといわれています。そのため、多くの場合は生活習慣の見直しにより改善が期待できます。本態性高血圧症を引き起こすと考えられる代表的な要因と、対策を解説します。
塩分の取り過ぎや野菜不足など食生活の乱れ
高血圧症になる最も代表的な要因といえば、塩分の過剰摂取でしょう。
先ほど紹介した高血圧診療ガイドライン2019では、1日当たりの塩分(食塩)摂取量を「6g未満」と推奨しており、WHO(世界保健機関)では、さらに少なく1日「5g」を目標量としています。対して、2016年の国民健康・栄養調査結果によれば、日本人の1日当たりの食塩摂取量は平均9.9gとなっており、塩分を摂りすぎる傾向があると指摘されています。
また、野菜を食べる量が少ないと、カリウムやカルシウムが不足して、高血圧の原因になることも。カリウムが不足すると腎臓から余分な塩分を排出する働きがうまく機能せず、カルシウム不足は心臓や血管を収縮させる副甲状腺ホルモンやプロビタミンDの過剰分泌を引き起こします。高血圧を防止するためには、どちらも意識して摂取したい栄養素です。
塩分を控えるだけでなく、野菜や魚を中心に、バランスの良い食生活を心がけましょう。魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸は、血圧を下げる働きがありますので、積極的に取り入れることがおすすめです。
肥満
BMI(体格指数)が25以上になると、肥満に位置づけられます。肥満になると、血中のインスリン濃度が上昇するため、交感神経が刺激されて血圧上昇につながります。肥満は、高血圧以外にも糖尿病や脂質異常症、心血管疾患などの原因となりますので、適性体重を維持することが理想です。
具体的には、ウォーキングや体操など適度な運動を日常に取り入れて、BMIを25未満に保つよう心がけましょう。運動を習慣づけると心機能も向上するため、心疾患の防止にもつながります。
過剰飲酒
適量のアルコールは血管を広げて血圧を下げる作用がありますが、過度の飲酒を長期間続けると血圧を上昇させてしまいます。少なくとも週2回以上の休肝日を設けて、適量の飲酒を守りましょう。
とはいえ、「適量」がどのくらいなのかわからない人も多いかもしれません。お酒の適量としては、こちらを参考にしてください。
<男性の1日のアルコール適正量>
- ビール:中瓶1本まで
- 焼酎:半合程度まで
- 日本酒:1合まで
- ウイスキー: ダブル1杯(約60ml)まで
- ワイン: 2杯弱まで
※女性はこの半分程度が目安となります。
また、多くの塩分が含まれているおつまみにも要注意です。スルメや漬物など塩辛いおつまみは少量に押さえて、冷やしトマトやざく切りキャベツなど、野菜類を一緒に食べるといいでしょう。
ストレスや自律神経の乱れ
自律神経の乱れも、血圧上昇の原因となります。
自律神経とは、体温や代謝といった体の機能を制御する神経のことで、体と心を活発にする交感神経と、反対にリラックスさせる副交感神経があります。自律神経の乱れとは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態で、体のコントロールがうまくいかず、動機や息切れなどを引き起こします。
自律神経は、疲労やストレス、緊張、睡眠不足などが原因で乱れているといわれています。ストレスや緊張を感じると交感神経の働きが強くなり、本来休むべき場面でリラックスできず、血圧の上昇につながってしまうのです。
自律神経を整えるには、なるべく疲労やストレスを感じにくい生活を心がけ、十分な睡眠を取るのが一番です。仕事で忙しいからと予定を詰め込みすぎず、休息や趣味の時間を意識して取るようにしましょう。
運動不足
高血圧症の改善や予防に運動が効果的であることは、多くの研究により証明されています。厚生労働省の指針でも、運動療法には降圧効果があるとされ、運動の習慣化が推奨されています。
運動強度としては、「ややきつい」と感じる程度の中強度の運動がおすすめです。あまりに高強度の運動は、逆に著しい血圧上昇を引き起こすことがあります。ウォーキングや自転車などの有酸素運動を、できれば毎日、30分以上を目指して実施してください。
運動は、コレステロールや中性脂肪の減少、そしてダイエットにも効果的です。まずは習慣化することを目標に、簡単な運動から始めてみましょう。
喫煙
たばこの煙に含まれるニコチンは、心拍数の上昇や血管の収縮を引き起こし、高血圧の原因になる物質です。ほかにも、動脈硬化を促進させるため、心疾患や脳卒中のリスクも上昇します。
さらに、たばこを吸うと血管内で一酸化炭素が増加し、酸素が不足するため、心臓の負担を増大させます。心肥大のリスクも高まりますので、やはり喫煙はおすすめできません。
また、たばこには受動喫煙の問題もあります。本人の健康リスクを高めるだけでなく、家族やパートナーなど周囲の人にとっても高血圧の原因となってしまいます。副流煙の影響についても十分注意を払うようにしましょう。
加齢
個人差はあるものの、年齢が上がるにつれて血管の柔軟性が失われるため、ある程度動脈硬化が促進するのは避けられないことです。さらに、血圧を制御する自律神経も加齢によって機能が低下するため、どうしても血圧が上昇しやすくなります。
このため、65歳以上の前期高齢者になると、高血圧の人が大幅に増加します。30代男性の高血圧の割合が23.1%であるのに対し、60歳代では60.4%、70 歳代では68.9%と、6割以上もの人が高血圧になっています。
遺伝
家族や親戚に高血圧の人が多いと、遺伝により高血圧体質になるケースが多いとされています。特に、両親や祖父母など直系の家族に高血圧の人がいる場合は、要注意です。自分にリスクがあることをしっかり認識して、意識的に生活習慣を整えましょう。
また、定期的に健康診断や人間ドックを受けて、病気を早期発見することも大切です。早期発見できれば影響が広がる前に適切な治療を受けられますので、意識して健康診断を受けるようにしましょう。
高血圧は自覚症状が少ないこともあり、自分の血圧値を把握している人は少ないものです。特に、日本人は高血圧の割合が高く、30代男性でも2割以上が高血圧ですが、この中で治療を受けている人は少数でしょう。自覚がないまま長期間放置してしまい、深刻な病状が出てから初めて気が付くケースも少なくありません。
一方で、家庭で血圧測定を行えば、自分で見つけやすい病気ともいえます。特に自覚症状がなくても、普段から血圧測定を習慣づけることで、病気の早期発見につながります。
つまり、血圧測定は体の状態を知るための大切な指標であり、健康のバロメーターなのです。血圧測定の正しいやり方を身に付け、日頃の生活に取り入れてみましょう。
血圧の測り方やタイミング
血圧計は、より精度が高いといわれている上腕式が推奨されています。服をまくり上げて測るイメージがあるかもしれませんが、最近の血圧計は感度が高いため、服の上から腕帯を巻き付けても問題ありません。
計測のタイミングは、起床直後がおすすめです。通常、血圧は日中に高くなり、寝ている間に低くなります。しかし、動脈硬化が進行していると、睡眠時も血圧が下がらなかったり、起床後に急激な血圧上昇が起こったりすることがあります。この状態を「早朝高血圧」といい、日中の血圧は平常に戻ることから、病院で発見されにくいのです。そのため、朝の血圧測定が大切になります。
測る際は、目覚めてすぐ、できれば寝床で測定をするのがおすすめです。血圧計を布団やベッドのすぐ横に置いておき、比較のために寝る前の血圧も測定するといいでしょう。
早朝高血圧の基準は「最高血圧135mmHg以上/最低血圧85mmHg以上」です。高血圧が判明したらすぐに受診し、治療を受けるようにしてください。