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メトホルミン・メトグルコとは?違いや副作用、ダイエット効果について解説

[2023.08.22]

糖尿病は日本でも年々増えている生活習慣病の一つで、血糖値のコントロールがうまくできていない状態の病気です。日常の食事や運動による管理だけでは、血糖値のコントロールが難しい場合には、薬での治療が必要となります。

そんな糖尿病治療の薬の中でも「メトグルコ」と「メトホルミン」は、血糖値を下げる作用をもつ薬として、多くの患者さんに処方されています。本記事では、これらの薬の働きや使用上の注意点、期待される効果と副作用などについて、分かりやすく解説していきます。

 


メトホルミン・メトグルコとはどんな薬?

メトホルミン・メトグルコは血糖値を下げる効果がある糖尿病の飲み薬です。

血糖値を下げる目的で処方される飲み薬には、以下の3つの種類があります。

  • 膵臓からインスリンを出しやすくする薬
  • インスリンを効きやすくする薬
  • 糖分の吸収をゆっくりにしたり、身体の外に排出しやすくしたりする薬

メトホルミン・メトグルコは、この中でも体内のインスリンを効きやすくする薬の一種で、別名ビグアナイド系糖尿病薬といいます。1950年代から約70年近く処方されているとても歴史のある薬です。

発売開始から現在まで、多くの糖尿病患者さんが服用し、効果や副作用、安全性、長期投与のメリット・デメリットなどさまざまなデータが蓄積されています。そのため、どのようなタイプの糖尿病患者さんに効果が期待できるかもよくわかっていますし、医師の多くが使い慣れている薬です。

このような理由から、最新の糖尿病治療ガイドラインでも、糖尿病治療で用いられる薬のうち一番初めに用いる薬(=第一選択薬)として推奨されています。

さらに、1錠10円未満と自己負担額が安価な薬で、新しい糖尿病治療薬やインスリンと比べると患者さんの経済的負担を軽減できるメリットがあり、多くの患者さんに処方されています。

また2022年に、メトホルミン・メトグルコは以下のような不妊治療の適応承認を得ており、糖尿病に限らずさまざまな年代の患者さんに処方されています。

  • 多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発
    (ただし、肥満、耐糖能異常、又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る)
  • 多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激
    (ただし、肥満、耐糖能異常、又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る)

メトホルミン・メトグルコの効果

ここからは、メトホルミン・メトグルコの効果について解説します。なかでも、血糖値を下げる効果に着目し解説していきます。

メトホルミン・メトグルコは、次のような効果で血糖値が下がります。

  1. 筋肉での糖代謝を促す
  2. 肝臓で糖が作られるのを抑制する
  3. 体内のブドウ糖を便の中に排泄する

順に解説します。

1.筋肉での代謝を促す

筋肉や細胞が動くためには糖分が必要です。体内に取り入れられた糖分は、血液の流れに乗って全身へ運ばれますが、糖尿病の患者さんの中には血液中から糖分をうまく使えない人がいます。

メトホルミン・メトグルコには、その糖摂取能を改善させ、糖分が効率よく消費できるようにして、血液中の糖分の量を減らし血糖値を下げます。

2.肝臓で糖が作られるのを抑制する

肝臓には、空腹になると溜めておいたグリコーゲンを体内に放出し、血糖値を一定に保つ働きがあります。反対に食事をとると、体内へのグリコーゲンの放出を減らし、ブドウ糖(グルコース)を取り込み、グリコーゲンとして溜める働きがあります。

しかし、インスリンがうまく体内で働いていないと、食後のグリコーゲンの放出が減るだけでなく、体内にもうまく取り込めず血糖値が高くなってしまいます。メトホルミン・メトグルコは、肝臓から過剰にグリコーゲンが放出されるのを防ぎ、糖を過剰にため込まないようにする効果があります。

3.体内のブドウ糖を便の中に排泄する

近年の研究では、メトホルミン・メトグルコには、体内のブドウ糖を便の中に排泄するという働きが報告されています。しかし、メトホルミン・メトグルコが腸内でどのように働いているのかは、まだ完全に解明されていません。

またどのくらいの量を飲めば、血糖値が下がるほど便の中に糖分が排泄されるのかもわかっていません。このあたりの薬の作用機序については、今後の研究成果を期待したいところですね。

参考文献:Enhanced Release of Glucose Into the Intraluminal Space of the Intestine Associated With Metformin Treatment as Revealed by [ 18 F]Fluorodeoxyglucose PET-MRI
Diabetes Care. 2020 Jun 3;dc200093. doi: 10.2337/dc20-0093

メトホルミン・メトグルコの副作用

薬には効果だけでなく、副作用があり、メトホルミン・メトグルコも例外ではありません。

ここからは、メトホルミン・メトグルコの副作用を『重大な副作用』と『そのほかの副作用』に分けて解説します。

重大な副作用

メトホルミン・メトグルコの一番重大な副作用は、乳酸アシドーシスです。乳酸アシドーシスとは、乳酸が体内に蓄積して血液のバランスが酸性に傾いてしまった状態です。

乳酸アシドーシスの副作用がおこる頻度はとてもまれで、およそ3~10人/10万人・年ともいわれています。しかし、重篤な乳酸アシドーシスを発症した人のうち50%以上が亡くなってしまうという報告もあるため、予防と早期発見がとても大切です。

乳酸アシドーシスは、次のような方に起こりやすいことがわかっています。

  • 腎臓や肝臓、心臓、肺に病気のある人
  • 透析を受けている人
  • 過去になんらかの理由で乳酸アシドーシスを起こしたことのある人
  • 脱水症状のある人
  • 利尿作用のある薬を飲んでいる人
  • アルコールを大量に飲む人
  • ヨード剤を用いた検査をする人

また、乳酸アシドーシスは重篤度によって、次のような症状がみられます。

初期症状 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状
だるさ
筋肉痛
末期症状 過呼吸
脱水
低血圧
低体温
意識がなくなる

メトホルミン・メトグルコを服用していて、このような症状を自覚したら乳酸アシドーシスを疑います。服用を中止し、速やかに医師に相談しましょう。

参考:

1) Inzucchi, S.E., et al.: JAMA. 2014; 312(24): 2668-2675
2)メトグルコ錠を服用されている方へー乳酸アシドーシスの予防ー Sumitomo Pharma

3)河西浩一, 多田達史, 梶川達志, 石田俊彦(1998)乳酸代 謝と乳酸アシドーシス. 臨床病理 46 : 804―81

そのほかの、メトホルミン・メトグルコの重大な副作用は以下の通りです。

  • 低血糖
  • 肝機能障害、黄疸
  • 横紋筋融解症

そのほかの副作用

メトホルミン・メトグルコの服用中には重大な副作用以外に、次のような副作用が現れることがあります。

消化器 下痢、悪心、食欲不振、腹痛、消化不良、嘔吐、腹部膨満感、便秘、胃炎、胃腸障害、放屁増加
血液 貧血、白血球増加、好酸球増加、白血球減少、 血小板減少
過敏症 発疹、瘙痒
肝臓 肝機能異常
腎臓 BUN上昇、クレアチニン上昇
代謝異常 乳酸上昇、CK(CPK)上昇、血中カリウム上昇、血中尿酸増加、ケトーシス
そのほか めまい・ふらつき、全身倦怠感注 、空腹感、 眠気、動悸、脱力感、発汗、味覚異常、頭重、 頭痛、浮腫、ビタミンB12減少 、筋肉痛

なかでも消化器症状は、乳酸アシドーシスの初期症状である可能性もあるため注意が必要です。

また、重大な副作用と同様に、上記の症状を自覚したらすみやかに医師に相談しましょう。

メトホルミン・メトグルコを服用する際の注意点

メトホルミン・メトグルコは、乳酸アシドーシスなどの死亡率の高い重篤な副作用を起こすリスクがある薬です。そのため、乳酸アシドーシスをおこすリスクが高い患者さんや、脱水や感染症を起こしている患者さんは服用を控える必要があります。

上記に該当しなくとも、お酒を飲みすぎたりすると乳酸アシドーシスの発症リスクはぐんと高くなります。そのほかにも食事が取れなくなったり、吐き気や嘔吐・下痢などの症状があるときは、メトホルミン・メトグルコの服用を中止したほうが、副作用のリスクを低減できる可能性があります。

また、ヨード造影剤検査を受ける場合には、検査g48時間は服用を中止する必要がありますので検査時に注意してください。

なおメトホルミン・メトグルコを服用する際の、詳しい注意点は以下のサイトをご参照ください。

メトホルミン塩酸塩錠MT「トーワ」を服用される方へ

メトホルミン塩酸塩錠MT「トーワ」をのむときに気をつけること

メトホルミンとメトグルコQ&A

最後に、メトホルミン・メトグルコを服用する患者さんから多く寄せられる疑問に回答します。

Q:メトホルミン・メトグルコはおなじ薬?

A:同じ薬です。

薬には正式名称にあたる一般名と、商品名の2つの名前があります。

“メトホルミン”は、製剤の一般名で正式名称は“メトホルミン塩酸塩”です。
メトホルミンを薬として販売するときの商品名が、“メトグルコ”になります。

Q:メトホルミン・メトグルコにダイエット効果はある?

A:国内の研究では、平均BMI25.3のやや体重の多い糖尿病患者さんが54週間服用した場合、平均1.2㎏の体重減少効果が確認されています。

しかし、54週間=約12.5か月かけて平均1.2㎏では誤差範囲ともとれます。

また、最近はメトホルミンをダイエット目的で処方するクリニックも増えています。

しかし糖尿病ではない人や、平均体重の人、痩せている人が服用した場合の効果や副作用はわかっていません。

脂肪燃焼効果も確認できていませんので、運動や食事療法の代わりになるようなダイエット効果は期待しないようにしてください。

引用:Odawara M, Kawamori R, Tajima N, Iwamoto Y, Kageyama S, Yodo Y, Ueki F, Hotta N. Long-term treatment study of global standard dose metformin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetol Int. 2017 Feb 24;8(3):286-295. doi: 10.1007/s13340-017-0309-z. PMID: 30603334; PMCID: PMC6224890.

Q:メトホルミン・メトグルコに若返り効果はある?

A:現在までに、明らかな若返り効果は確認できていません。

しかし、過去の研究では、メトホルミン・メトグルコを服用しているマウスのほうが、寿命が5%伸びたという報告があります。

しかし、人間ではどのくらいの量・期間服用すれば寿命が伸びるのかはわかっていません。

まとめ

「メトホルミン」と「メトグルコ」は、糖尿病の薬の中で知名度が高いものです。これらは肝臓での糖の生産を抑制し、筋肉での糖の利用を促進することで、血糖値を下げる効果があります。適切に使用することで、糖尿病による合併症のリスクを低減させる可能性が高まります。

しかし、薬には副作用も存在するため、使用時には医師の指示に従い、定期的な受診や血液検査を行うことが重要です。自身の体調や血糖値の変化に気を付けながら、適切な治療を受けることで、健康的な生活を継続しましょう。


 

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