インデラルとは?あがり症に対する効果や副作用、正しい飲み方を解説
心臓の動きや血圧に関わる神経伝達物質の受容体をブロックする薬として、βブロッカーという薬があります。その中でも「インデラル」という薬は、長い間多くの患者さんに処方されてきました。
この薬には心臓の動きを落ち着けたり、高血圧をコントロールする効果があり、様々な症状の改善を目指して使用されています。本記事では、インデラルの特徴や効果、使用上の注意点について詳しくご紹介します。
インデラルとはどんな薬?
インデラルはβ遮断薬(ベータしゃだんやく、ベータブロッカー)という種類のお薬で、 心臓の拍動を落ち着かせ心臓を休ませる作用があります。そのため、主に血圧を下げるお薬や、狭心症や不整脈、片頭痛の治療など幅広く使用されています。
インデラルというのは製品の名前で、一般名をプロプラノロール塩酸塩といいます。処方箋やお薬手帳などには、「一般名:プロプラノロール塩酸塩」と記載されている患者さんも多いかもしれません。
プロプラノロール塩酸塩はとても歴史のある薬で、国内では1966年に発売が開始されました。発売されてからこれまで、高血圧の患者さんや狭心症・不整脈を抱える、たくさんの患者さんが服用しています。また片頭痛に対しては、2013年より特例扱いで承認され、片頭痛発作を抑える薬として処方されています。
最近では交感神経の過活動をおさえる効果をうまく活用し、不安感、ふるえ、発汗、赤面、口の乾き、動悸のような交感神経の過活動による身体症状の緩和に処方されるケースも増えています。
参考:日本薬局方 プロプラノロール塩酸塩錠 プロプラノロール塩酸塩錠 10mg「トーワ」医薬品インタビューフォーム 2017年6月改訂(第17版) 日本標準商品分類番号:872123
インデラルの効果
インデラルは以下のような患者さんの治療に用いられます。
- 本態性高血圧症(軽症〜中等症)
- 狭心症
- 褐色細胞腫手術時
- 期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、心房細動、発作性心房細動の予防
- 片頭痛発作の発症抑制
- 右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制
インデラルはβ遮断薬という薬の一種です。β遮断薬は、心臓の筋肉に多く分布しているβ受容体にノルアドレナリンがくっつくのを防ぐことができる薬です。
β受容体が遮断されると、ノルアドレナリンの結合が阻害され、左心室の収縮力が弱まります。その結果、心臓から送り出される血液の量が減り、血圧が下がります。さらに心拍数を抑え、脈拍数をゆっくりにして心臓を休めてくれるのです。
そのほかにも、β遮断薬には気管支にも作用し、気管支を収縮させる効果が期待できます。
参考:医療用医薬品:インデラル
片頭痛発作に対する効果
インデラルは主に高血圧に対する治療薬ですが、片頭痛に対しても処方されることがありあます。その効果についてですが、どのような機序で痛みが改善するかというのはまだ解明されていません。
しかし、末梢神経や自律神経へのβ遮断薬作用だけでなく、中枢神経の神経伝達になんらかの影響を与えているのではないかという研究報告もあります。
さらに、インデラル(プロプラノロール)を対象とした過去のさまざまな研究報告によると、約43~65%の患者さんがプロプラノロールの服用で片頭痛予防効果を実感しています。
2023年現在、片頭痛発作の予防薬としてインデラルの服用は、欧米の片頭痛治療ガイドラインでも、日本頭痛学会のガイドラインでも推奨されていますので、安心して服用していただいてかまいません。
参考:プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン (暫定版) 日本頭痛学会
あがり症に対する効果
あがり症とは、別名パフォーマンス限局型社交不安障害とも呼ばれ、日常での生活には支障はないものの、スピーチや演奏など特定の場面で著しく緊張したり、不安が強くなり行為に苦痛と支障をきたす病気です。
インデラルのβ遮断効果は、交感神経という自律神経の働きを抑える効果があります。交感神経は、人を緊張させたりドキドキしたりする働きがあるので、インデラルを服用することでいつもよりあがり症を軽減させる効果が期待できます。
インデラルの副作用
薬には効果だけでなく、副作用があり、インデラルも例外ではありません。
ここからは、インデラルの副作用を『重大な副作用』と『そのほかの副作用』に分けて解説します。
重大な副作用
インデラルの重大な副作用の一つに、気管支喘息の悪化があります。β遮断薬を服用すると、気管支が収縮します。気管支喘息の患者さんは、発作時に期間が収縮してしまいますので、β遮断薬を服用することで大きな発作や呼吸困難を招く危険性があるのです。
一方で副作用の頻度としては、気管支痙攣1.0%、呼吸困難0.2%、喘鳴(頻度不明)とあまり多くはありません。
もしも、気管支喘息になったことがある患者さんがインデラルを服用して、息苦しさや咳などを自覚したら、医療機関に相談しすぐにインデラルを減量または中止してください。
必要に応じて気管支を広げるβ2作動薬を使用して、喘息発作をおさえてください。
そのほかの重大な副作用には以下があります。
- うっ血性心不全またははその悪化(頻度不明)
- 徐脈(1.6%)
- 末梢性虚血(レイノー様症状等)
- 房室ブロックや失神を伴う起立性低血圧(頻度不明)
- 無顆粒球症、血小板減少症、紫斑病(いずれも頻度不明)
いずれの副作用も、症状を自覚したら薬を中止する必要があるかもしれません。服用を中止し、速やかに医師に相談しましょう。
そのほかの副作用
インデラルの服用中には重大な副作用以外に、次のような副作用が現れることがあります。
0.1〜5%未満 | 頻度不明 | |
---|---|---|
過敏症 | 発疹等 | |
循環器 | 労作時息切れ | 低血圧、胸内苦悶、胸部不快・不安感 |
精神・神経系 | 頭痛、めまい、不眠、しびれ等 | ふらふら感、眠気、幻覚、悪夢、錯乱、抑うつ、気分の変化、精神変調 |
眼 | 視力異常、霧視、涙液分泌減少 | |
消化器 | 口渇、食欲不振、下痢等 | 悪心、嘔吐、上腹部不快感、腹部痙攣、便秘 |
肝臓 | 肝機能異常(AST、ALT、Al-Pの上昇等) | |
そのほか | 脱力感、疲労感 | 筋肉痛、可逆的脱毛、LDH上昇、血中尿素上昇、血糖値低下、乾癬様皮疹、乾癬悪化、抗核抗体陽性化、重症筋無力様症状、重症筋無力症悪化 |
重大な副作用と同様、上記の症状を自覚したらすみやかに医師に相談しましょう。
インデラルを服用する際の注意点
インデラルを服用する際に、注意しなければならない点が2つあります。
- 飲み合わせに注意する
- 治療の目的によって服用量が異なる
それぞれについて、順に解説します。
1)飲み合わせに注意する
一般名リザトリプタン安息香酸塩(マクサルト)という片頭痛の痛みをとる薬を服用している患者さんは、インデラルの服用はできません。
その理由は、リザトリプタン安息香酸塩(マクサルト)を服用している患者さんがインデラルを服用すると、体内でリザトリプタン安息香酸塩(マクサルト)が効きすぎてしまう可能性があるためです。
なぜリザトリプタン安息香酸塩(マクサルト)が効きすぎてしまうのかは、はっきりとは解明されていませんが、薬がうまく代謝されず体に溜まってしまうことが一因と考えられています。
そのほかにも、以下のような薬が効きすぎたり、作用を弱めてしまったりすることが報告されています。
- 交感神経を抑える薬
- 血糖値降下薬
- Ca拮抗薬
- クロニジン
- クラスⅠ・Ⅲ抗不整脈剤
- 交感神経刺激剤
- 麻酔剤
- リドカイン
- ジギタリス製剤など
上記以外にも、さまざまな薬がインデラルとの併用に注意する必要がありますので、インデラルを服用する際には医師やかかりつけ薬剤師に飲み合わせをチェックしてもらうようにしましょう。
2)治療の目的によって飲み方が異なる
インデラルは高血圧や狭心症、不整脈、片頭痛の治療に用いられる際は1日2~3回継続して服用します。しかし、あがり症の患者さんは、あがりそうな状況がおこる1~2時間前に1~2錠服用します。
そのほかにも、年齢や症状によって服用量や頻度が異なりますので、医師の指示に従って服用するようにしてください。
インデラルQ&A
最後に、インデラルを服用する患者さんから多く寄せられる疑問に回答します。
Q:インデラルはやめられますか?いつまで飲み続けるのでしょう?
A:高血圧や狭心症、不整脈などの治療目的で服用している患者さんは、症状が軽快し服用しなくてもよくなるか、他の薬剤に変更するまで服用し続ける必要があります。
片頭痛の発作予防に服用している患者さんは、片頭痛発作の頻度が減れば薬をやめることができるかもしれません。
あがり症対策で服用している患者さんは、あがらなくなったらインデラルを飲まなくてよくなるでしょう。
Q:インデラルをあがり症対策で処方してもらうことはできますか?
→クリニックに確認。
基本保険適用外処方はしていない方針でよいですか?一応処方する方向で執筆しています。
A:インデラルをあがり症対策で処方する際には、あがり症の原因となるうつ病や発達障害など、心や精神の病気が隠れていないかを判断しなければなりません。
当院での処方が不適切であると判断した場合には、専門医療機関の受診をご紹介する可能性があります。
詳しくは、医師にご確認ください。
Q:インデラルをあがり症対策に処方して欲しいのですが、費用はいくらくらいかかりますか?
A:インデラルをあがり症対策目的で処方する場合には、健康保険を使用できません。
そのため、診療費や薬代は全額自費負担です。
実際に負担する金額については、処方する錠数によって異なりますので、医師にご確認ください。
まとめ
インデラルは、βブロッカーという種類の薬の一つで、特に不整脈や高血圧の治療に効果的とされています。心臓の拍動を穏やかにし、血圧を安定させる効果があります。また、不安や動悸の緩和にも役立つことが知られています。また、片頭痛やあがり症の予防など広く用いられる薬です。
しかし、すべての人に適しているわけではなく、特に喘息の患者さんなどは使用に注意が必要です。処方される際は、医師との十分なコミュニケーションを取り、体調の変化に注意しながら利用しましょう。適切な用量と使用方法で、より健康で快適な日常生活をサポートします。