熱中症の原因、予防、対処方法を解説|熱中症アラート、暑さ指数
近年の初夏から夏の終わりまでの暑さは、年々過酷さを増しており、毎日のように「災害級の暑さ」、「危険な暑さ」と報道では伝えられ、注意喚起が行われています。 この記事では、熱中症の原因や予防、対処方法や、熱中症アラート、暑さ指数とは等を解説します。
熱中症の症状が気になる方へ
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継続した熱中症対策が必要|8月~10月の3か月予報
7月25日に気象庁から発表された「8月から10月までの3か月予報」でも、10月まで厳しい暑さが続く見通しとなっています。
画像出典:NHK NEWS WEB「気象庁3か月予報 “10月まで厳しい暑さ続く”」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230725/k10014141551000.html
2023年8月~10月の平均気温予想 | |
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地球温暖化やエルニーニョ現象の影響により、全国的に暖かい空気に覆われやすい。 そのため、気温が高くなる見込み。 |
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8月 | 東日本、西日本、沖縄・奄美は、平年より高い予想 |
北日本は、平年並みか高くなる予想 | |
9月 | 西日本と沖縄・奄美は、平年より高い予想 |
東日本は平年並みか平年より高くなる予想 | |
北日本では、ほぼ平年並みの予想 | |
10月 | 全国的に平年より高くなる予想。厳しい残暑が続く見込み。 |
熱中症での救急搬送が去年の2.2倍・室内での発生が4割
2023年7月17日~24日の1週間、熱中症での救急搬送者数が、全国で約9190人となり、去年の同時期との比較で、2.2倍にものぼっている事が、総務省消防庁の発表により判明しています。
期間 | 2023年7月17日~24日の1週間 |
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搬送人数 | 2190人 |
前週比較 | 1000人増加 |
前年比較 | 約2.2倍 |
死亡 | 10人 |
中等症~重症 | 3061人 |
軽症 | 6021人 |
65歳以上の高齢者 | 5195人 |
18歳以上65歳未満 | 2961人 |
7歳以上18歳未満 | 935人 |
0歳から7歳未満 | 99人 |
発生場所・住居 | 4005人 |
発生場所・道路 | 1594人 |
発生場所・屋外 | 1083人 |
熱中症の基礎知識
前出の気温の3か月予想や、救急搬送の増加などからも分かるように、年を追うごとに夏の天候の厳しさが増し、それに伴って熱中症になる方も増加し続けています。
ここでは、熱中症になる原因や、予防、対処方法などを解説します。
熱中症になる原因は3つ(環境、からだ、行動)
人間の身体は、元々、体温調節が自然に出来る仕組みになっています。
体温が上がった場合、汗や皮膚の温度で体温調整をし、熱を外気へ逃がす仕組みになっているのです。
熱中症を引き起こすとされている3つの原因「環境」、「からだ」、「行動」が、体温調整機能のバランスを崩す状態になった際に、身体が熱を外に逃がせずに熱中症の状態になってしまいます。
3つの要因それぞれの詳細を見ていきます。
熱中症の原因① 環境
- 急に暑くなった
- 気温が高い
- 日差しが強い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 熱波の襲来
- 締め切った屋内
- エアコンの無い部屋
など
熱中症の原因② からだ
- 乳幼児や高齢者、肥満や糖尿病の方
- きちんとした食事を摂っておらず低栄養状態
- 下痢や疾病による発汗などで脱水状態
- 二日酔いや寝不足などの体調不良
- 運動、活動で体温上昇している
など
熱中症の原因③ 行動
- 屋外での長時間に渡る作業
- 慣れない運動や、激しい筋肉運動をした
- 水分補給できない状況だった
など
これら3つの要因によって、熱中症が引き起こされる可能性があります。
身体のバランスが崩れ、汗や皮膚温度での体温調整ができなくなり、熱が身体にたまってしまいます。
熱中症の予防方法と対処方法
実は熱中症は、屋外だけでなく、室内でもなってしまうので、場所に適した熱中症予防対策をする事が重要となります。
ここでは、熱中症の予防方法と、対処方法を解説します。
室内での熱中症の予防方法
- エアコンや扇風機を使用して室温調整をする
- すだれ、遮光カーテンを利用して、断熱する
- 玄関、庭、バルコニーに打ち水をして、室内の温度上昇を抑える
- 温度計、湿度計を設置し、こまめに室温の確認をする
- WBGT値(※)も参考にして、早めの対策行動を取る
※気温、湿度、輻射(放射)熱から算出される暑さの指数。
運動や作業の度合いに応じた基準値が定められています。
後述する「暑さ指数(WBGT)について」も参照ください。
屋外での熱中症の予防方法
- 日陰を利用する
- こまめに休憩を取る
- 日傘の使用、帽子の着用
- 日差しの弱い早朝、気温の落ちてきた夕方に外出する等の時間管理
からだに熱がこもる事(蓄熱)を避ける対策
- 通気性、吸湿性、速乾性のある衣類を選んで着用する
- 保冷剤、冷たいタオル、首にかけるクールリングなどを利用する
- 屋外、室内を問わず、のどが渇いたと感じる前から、こまめに水分や塩分を補給する
特に熱中症に注意を|高齢者、子ども、障害のある方
- 熱中症患者の約半数は、65歳以上の高齢者となっています。
暑さや水分不足への自覚力、調整機能の低下などから、注意が必要です。 - 成長途中である子どもは、体温調節の機能も発達途中です。保護者や周囲の大人が気を配り、熱中症予防対策の促し、実施をしましょう。
- 障害があり、自身の症状を訴えられない場合もあるため、特に注意をしましょう。
→外出前日に充分な睡眠をとっておく、外出当日の朝食や水分はしっかり摂る、体調の確認
→外出先のルート上に日陰となる場所やミストゾーン、障害者用トイレ、エレベーターの位置などを調べておく。外出先施設(競技場など)の医務室の場所も確認しましょう。
→介助者は、早めの水分補給などの声かけをしつつ、障害のある方の体調変化に気をつけましょう。介助者自身も、熱中症にかからないよう、冷却グッズの準備やルート状況の確認などの対策をしましょう。
熱中症の応急処置|熱中症の疑いがある場合
涼しい場所へ移動する
風通しの良い日陰、エアコンの効いている室内など、涼しい場所へ避難する、させる。
からだを冷やす
衣服をゆるめる、身体を冷やす(首まわり、わきの下、足の付け根が特によい)。
水分補給をする
麦茶、スポーツドリンクなど水分の摂取。塩飴やタブレットなどで塩分も補給する。
迷わず救急車を呼ぶ症状は「意識がない、自力で水が飲めない」
熱中症の応急処置チャート
①熱中症の疑いのある症状が有るか
めまい/失神/筋肉痛/筋肉の硬直/大量の発汗/頭痛/不快感/吐き気/おう吐
だるい・倦怠感/力が入らない・虚脱感/意識障害/けいれん/手足をうまく動かせない/高体温
→「はい」の場合②へ
②呼びかけに応じるか
→「はい」の場合③へ
→「いいえ」の場合は「救急車を呼ぶ」へ
③水分を自力で摂取できるか
→「はい」の場合、水分・塩分を補給する(大量に発汗している際は、スポーツドリンク、経口補水液、食塩水がよい)
→「いいえ」の場合は④へ
④症状が改善したか
→「はい」の場合、そのまま安静にして充分に休息をとり、復調してから帰宅する
→「いいえ」の場合は「医療機関へ行く」へ
「救急車を呼ぶ」
救急車の到着を待つ間に、応急処置を開始する。呼びかけへの反応が悪い場合、無理に水を飲ませるのは避けましょう。
冷却グッズや濡れタオルなどがあれば、首、わきの下、太ももの付け根を集中的にひやす。
→「医療機関へ行く」へ
「医療機関へ行く」
熱中症患者が倒れた際の状況を知っている人が付き添い、状態などを伝える。
環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
暑さ指数(WBGT)について
天気予報などでもよく耳にし、暑さ対策の目安や、熱中症警戒アラートの発表基準となっている「暑さ指数(WBGT)」。
ここでは、「暑さ指数(WBGT)」とは何か、日常生活や運動時の指針などを解説します。
暑さ指数(WBGT)とは、熱中症予防を目的としてアメリカで提案された指数
暑さ指数は、熱中症予防を目的として、1954年にアメリカで提案された指標の事を指します。
「WBGT」は、正式な英語表記で表すと、「Wet Bulb Globe Temperature("湿球黒球温度"の意)」となります。
「WBGT」の単位は、気温と同じ摂氏度(℃)で示されるのですが、その値は気温とは異なります。
日本では、気温との区別をし易いように、「℃」の表記は取って提示される事が多いです。
※単位表記の省略は、日本生気象学会の承諾を得て行われています。
暑さ指数(WBGT)は、「人体と外気との熱のやりとり(熱収支)」に注目した指標です。
以下の、人のからだの熱収支に大きな影響を与える3つの要素を元に算出されます。
- 湿度
- 日射・ふく射ふくしゃ等の周辺の熱環境
- 気温
「日最高WBGTと熱中症患者発生率の関係を示したグラフ」を見ると、暑さ指数(WBGT)が28(厳重警戒)を超えた際、熱中症患者が著しく増加している事が分かります。
平成17年・主要都市での救急搬送データを基とした、「日最高WBGTと熱中症患者発生率の関係」
環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
暑さ指数(WBGT)の算出式
暑さ指数(WBGT)の計算方法は、室内と室外で異なります。
室外での算出式
WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
室内での算出式
WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
画像出典:環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
暑さ指数(WBGT)は、気象庁の観測データと、観測方法に準拠して観測・推定されています。
一般的な生活や運動の場では、より厳しい暑さを感じる環境になっている事が多いと予想されます。
自分が活動する場で、暑さ指数(WBGT)や気温などの最新情報を確認して、熱中症対策に役立てましょう。
暑さ指数(WBGT)の日常生活に関する指針
日常の生活活動を、その活動の強弱で3つに分け、暑さ指数(WBGT)から注意すべき事柄を示しています。
※1 28以上31未満
※2 25以上28未満
画像出典:環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
暑さ指数(WBGT)の運動に関する指針
運動時の気温と暑さ指数(WBGT)を組み合わせた指針を示しています。
※暑さに弱い人とは:体力の低い方、肥満の方、暑さに慣れていない方など
画像出典:環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
熱中症警戒アラートを参考に対策を
近年、よく耳にするようになった「熱中症警戒アラート」。
運用開始されてから3年の、新たな取り組みとなります。
令和2年7月に、環境省と気象庁により、熱中症対策のための効果的な情報として、関東甲信地方で発表を実施スタートされました。
令和3年の4月下旬からは、全国を対象とした情報発信となっています。
ここでは、熱中症警戒アラートの意義、発表のタイミング、熱中症警戒アラートが発表されたらどのような対策をすれば良いのか等を解説します。
熱中症警戒アラートとは「危険な暑さへの注意換気」
「熱中症警戒アラート」は、
- 危険な暑さへの注意を呼びかける
- 熱中症予防行動を促す
などの目的で、発信される情報です。
熱中症警戒アラートの発表タイミングは5時/17時
当日を対象とする予測は、朝5時に更新されます。
翌日を対象とする予測は、夕方17時に発表されます。
熱中症警戒アラートは「暑さ指数」33以上で発表される
熱中症警戒アラートは、前出の「暑さ指数(WBGT)」を用いて発表されます。
- 暑さ指数(WBGT)が「33以上」の予測が出た場合に発表。
- 気象庁の府県予報区等の区分けで発表される。
- 発表内容には、暑さ指数の予測値や予想最高気温などの数値的な事のみではなく、熱中症予防のための、具体的な予防行動も含まれる。
熱中症警戒アラートが発表されたら取る行動の例
- 不要不急の外出は避ける
- 昼夜を問わずエアコン等を使用する。
節電意識の高まりで、がまんし過ぎる方も多くいらっしゃいますが、無理はせずに空調使用で適温にしましょう。 - こまめな水分補給など、普段以上に熱中症対策を取る。
- 暑さに気づきにくい高齢者、子ども、障害者等に対して、周囲の人々から声かけをする。
- 自身の活動範囲の、最新の暑さ指数(WBGT)を確認し、行動の目安にする。
- 活動環境の暑さ指数(WBGT)に応じて、屋内外での運動は、原則中止、もしくは延期する。
熱中症警戒アラートが発表されていない場合でも、活動環境の暑さ、活動内容、体調などによっては、熱中症にかかってしまう可能性がゼロではありません。
暑さ指数(WBGT)を確認して、行動の目安に役立てましょう。
熱中症でよくある質問を解説
ここでは、熱中症でよく見られる疑問を解説します。
熱中症の初期症状は立ちくらみやめまい
熱中症の主な初期症状は、
- 立ちくらみ
- めまい
- 一時的な失神
などが代表格として挙げられます。
環境や体調、行動が元で身体にこもった熱を外に逃がして体温を下げようとして身体が機能すると、
①皮膚の血管が広がる
②全身を流れる血液の量が減って血圧が下がる
③脳への血流が減って、めまいや立ちくらみ、失神などの症状が出る
という流れで、熱中症の初期症状は現れます。
上記のめまい等と併せて、からだのだるさ、吐き気、おう吐、頭痛などの症状も現れます。
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軽い熱中症の治し方は3つのポイントで
熱中症の症状を重症化させないために、3つのポイントを知って、応急処置をしましょう。
- 涼しい場所に移動する、させる(空調の効いた室内、木陰など)
- 衣服をゆるめて、体を冷やす(首、わきの下、太もも付け根など)
- 水分や塩分を補給する(スポーツドリンクや塩飴など)
症状が改善しない場合は、医療機関へかかりましょう。
熱中症になってしまったらどうすれば良いか
熱中症の症状が、軽くても重くても、まずは基本の対処を取りましょう。
意識が無い場合は救急車を呼びますが、その到着までに出来る対策を取りましょう。
- 涼しい場所に移動する、させる(空調の効いた室内、木陰など)
- 衣服をゆるめて、体を冷やす(首、わきの下、太もも付け根など)
- 水分や塩分を補給する(スポーツドリンクや塩飴など)
気を付けたいポイントは、水分は自力で飲める場合にする事です。自力で飲む事ができない状態の人に水を飲ませると、水分が起動に流れ込む可能性があります。
飲めない方には点滴で補うので、緊急で医療機関に搬送しましょう。
熱中症になると熱は何度ぐらい|37.5度以上は要注意
体温が37.5度以上ある際は、危険性が高まるので、医療機関をあたりましょう。
体温が39度以上ある場合は、高熱によって脱水し、更に危険な状態となります。救急車を呼びましょう。
熱中症は何日ぐらいで治るか|軽度で1日ほど
軽度の熱中症(自分で対処が出来る程度)の場合、水分や塩分、栄養補給をして充分な休息を取る事で、長くても1日程度で回復する事が多い傾向にあります。
1日以上経過しても体調が回復しない場合は、熱中症以外の健康上の問題を探る必要が出てきます。無理をせず医療機関をあたりましょう。
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参考文献
環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/
厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
NHK NEWS WEB「気象庁3か月予報 “10月まで厳しい暑さ続く”」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230725/k10014141551000.html
TBS NEWSDIG「全国で9190人が熱中症で救急搬送 先週17日からの1週間 去年の同じ時期と比べ倍増 消防庁が注意呼びかけ」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/624011
気象庁「熱中症警戒アラート」
https://www.jma.go.jp/bosai/information/heat.html