軽い水疱瘡に気づかない?水疱瘡の初期症状とは?対処方法を解説
水疱瘡(みずぼうそう)の症状は個人差があり、軽い水疱瘡の場合はなかなか気付けないこともあります。しかし初期の症状を見逃してしまうことで悪化してしまう恐れもあるため、不安な方も多いでしょう。
今回は水疱瘡の初期症状やその対処方法、いつ病院に行くべきかなどを解説します。
水疱瘡とは
水疱瘡は水痘(すいとう)とも呼ばれ、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる病気です。
子供によく起こる病気で9歳以下の発症率が90%であることから、生後12ヶ月から生後36ヶ月の間に2回のワクチン接種が推奨されています。厚生労働省によると、日本では年に100万人程度が発症し、約4,000人程度が入院、20人程度が死亡していると発表されています。
しかし適切なワクチン接種が行われている影響から、子供の水疱瘡が減少傾向なのに対し、大人の水疱瘡は年々増加傾向です。理由としてはもともとワクチンの予防接種率が低かったことや、高齢者の再感染などが考えられています。
それでは症状や感染経路について、それぞれ詳しくみていきましょう。
水疱瘡の症状
水疱瘡の初期症状は発疹と発熱がほとんどです。他にも頭痛や倦怠感など風邪のような症状も見られる場合があります。
発熱や頭痛、倦怠感は大人によく現れる症状で、大人の場合は重症化しやすいのも特徴です。
水疱瘡における発疹は小さい水ぶくれのような赤い湿疹で、皮膚だけでなく目や鼻や喉、さらに直腸や膣などにできることもあります。
水疱瘡の感染経路
水疱瘡は空気感染、飛沫感染、接触感染の3つの経路から感染します。潜伏期間(症状が出ない期間)が2週間(約10〜21日)ほどと長く、感染していても気づきにくいため、幼稚園や保育園内、学校内での集団感染も起きやすいです。
また、子供同士の接触の多さからも周囲へ感染しやすく、一緒に遊ぶような同年代の兄弟や姉妹がいる家庭では、家庭内感染の発症率も高く90%との報告もあります。
さらに学校や幼稚園での感染も多く、学校保健安全法の「学校伝染病の種類及び出席停止期間」で第2種に分類されており、発疹が全て痂皮化するまで、出席停止の扱いとされています。
軽い水疱瘡も感染する!初期の兆候とは
水疱瘡は前述のように感染力が高いだけでなく、約2週間の潜伏期間もあることから軽い水疱瘡と気づいた段階でも、すでに周りに感染してしまっているケースも多いです。
初期から水疱瘡に気づくことで周囲への感染を防いだり、症状の重症化を防いだりすることが大切です。
ここからは、早期発見するための初期の兆候を、子供と大人に分けて解説していきます。
子どもの場合|痒みのある発疹
初期症状は子どもと大人で異なる場合が多いです。子どもの場合は痒みのある3〜5cmほどの発疹が初期の兆候であり、赤みや膨らみを伴う状態になったのち、水疱という水ぶくれ様の状態へ変化し、その後かさぶたの状態へ変化していきます。
また、その発疹は頭、体、四肢の順番で出現することが多いです。
そして体に多くの発疹ができるものの、赤みや膨らみ、水疱、かさぶたと早く変化していくため、さまざまな状態の発疹が全体に出現している状態になります。
全ての発疹がかさぶたになるには6日ほどかかると言われていますが、経過には個人差があります。
ワクチン接種を受けている子どもでも発症しますが、発疹が少なかったり、発熱がみられなかったりと全体的に初期症状も軽くなる傾向の子供が多いです。
しかし初期症状は軽くても感染力は変わらないため、注意して症状を観察する必要があります。
基本的には大人のように重症化することはなく、軽快することが多いですが、稀に肺などの呼吸器や腸などの消化器に発疹ができることもあります。
大人の場合|発熱と倦怠感
大人の水疱瘡の場合は、発疹が出る前に1〜2日ほど発熱や全身の倦怠感が出現するのが特徴です。
その後は子どもと同じく頭や体、四肢に子どもよりも大きい5〜6cmほどの発疹が出現し、水疱へ変化、かさぶたへと変化していきますが、呼吸器官や消化器官などに発疹が出現したりさまざまな合併症を引き起こしたりと重症化するケースもあります。
特に大人の水疱瘡は重症化するリスクが高く、脳炎や髄膜炎などの合併症を引き起こすことや、初期の妊婦の場合は流産の恐れ、中期以降の妊婦の場合は、胎児の先天性異常や四肢の形成不全などを引き起こすこともあります。
さらに母体が水痘肺炎といって強い呼吸困難を伴う症状を引き起こすこともあり、早期の治療が重要です。他の悪化したケースについては別の段落で解説します。
軽い水疱瘡は病院に行くべき?受診の目安
しかし実際、軽い初期の段階の水疱瘡では、病院への受診を躊躇する方も多いです。どのような症状があった時に受診をすべきか、受診の目安は主に下記の3つです。
- 少しでも発疹を見つけた時
- 食欲がない、だるそうな時
- 発熱がある時
それぞれ理由を解説していきます。
少しでも発疹を見つけた時
気になる発疹を見つけた場合は、早めに病院を受診しましょう。特に子供の場合、痒みを我慢できずに発疹ができた場所を触ってしまい、その手で他の部位を触ることですぐに全身に発疹が広がっていきます。そして周囲への感染も起こしやすいです。
もし発疹を見つけた場合は、重症化のリスクや周囲への感染拡大のリスクを考えて、すぐに皮膚科を受診すると良いでしょう。
食欲がない、だるそうな時
発疹がなくても、食欲がない時やだるそうに見える時も要注意です。大人の水疱瘡のケースで先に倦怠感が出現することが多いものの、子供の水疱瘡の症状にも倦怠感は見られます。
子供の場合は正しく体の不調を訴えられない子供も多いため、様子を見ずに食欲がなかったり、元気がなかったり、だるそうに見える時は早めに病院を受診すると良いでしょう。
発熱がある時
水疱瘡は38度前後の発熱がみられる場合もあります。しかし発熱がある時は水疱瘡だけでなく、さまざまな疾患が隠れている恐れがあるため、早期に受診した方が良いでしょう。
どんな疾患が隠れていても早期に受診をすることで、対処できる方法が増える場合があります。
また、厚生労働省が「子ども医療電話相談実施状況」という受診について相談できる相談窓口を都道府県ごとに掲示しています。もしこの症状でも受診しても良いのか悩んだ場合には、自身の都道府県の該当の窓口に問い合わせてみても良いでしょう。
軽い水疱瘡の家庭での対処法
軽い水疱瘡の場合は、家庭での対処の前にまずは早期の病院受診が必須です。発疹が出てから48時間以内の抗ウイルス剤の服用で、発疹の増加を抑えてウイルスが増加するのを防ぐことが可能とされているため、まずは病院を受診しましょう。
病院を受診した上で、他にも家庭での水疱瘡への対処法を解説していきます。
体温を測り水分補給を忘れない
水疱瘡になると発熱が見られることもあります。そのため、朝や夕方、体調不良時など、適宜対応を測るようにしましょう。
そして発熱すると脱水症状の危険があります。そのため食欲や元気がなくても、水分補給を忘れないようにしましょう。食事も口の中に発疹ができている場合は食べづらいかもしれませんが、おかゆやゼリーなど水分も摂れて食べやすいものを食べると良いです。
また、もし病院受診を済ませていて発熱時の指示をもらっているようであれば、指示に従って内服するのも大切です。
なるべくシャワーで済ませる
水疱瘡になった場合、発疹から感染を起こし、皮膚炎や皮膚の感染症を引き起こすこともあるため、清潔を維持することが重要です。
しかし入浴をして体が温まることで痒みが強くなってしまう場合もあり、入浴はしばらく控えたほうが良いでしょう。主治医から許可が出るまでは、シャワーで体を洗うようにし、体を洗う際も強く洗わずに泡で優しく洗うようにしてください。
かさぶたを剥がしたり水ぶくれを潰したりしない
かさぶたや水ぶくれは痒みを伴っていたり、気になっていたりして触ってしまう方も多いです。しかし触ってかさぶたを剥がしたり、水ぶくれを潰したりすることで、新たな場所に発疹が広がる原因となります。
自分自身に発疹が広がるだけでなく、周囲へ感染を広げてしまう場合もあるため、かさぶたや水ぶくれが気になっても触らずに自然に取れるのを待ちましょう。
使用するタオルを変える
前述のように、水疱瘡は家庭内感染も多い病気です。家庭内感染を避けるためにも、タオルなど共用のものは感染リスクが落ち着くまで共有して使うのを避けましょう。
国立感染症研究所より、感染リスクは発疹出現の1〜2日前から出現後4〜5日、またはかさぶたになるまでとされていますが、感染リスクについては自己判断せず、受診先の医師へ確認するのが良いでしょう。
水疱瘡が悪化するとどうなる?
水疱瘡は早期に病院受診をすることで、前述のように抗ウイルス剤を投与し発疹の増加を防ぐことも可能です。そして基本的には全ての発疹がかさぶたとなり剥がれ落ち、軽快していくケースが多いです。
しかし成人やコルチコステロイドのような免疫機能を抑制する効果のある薬を内服している人、もともと免疫機能が低下している人など重症化リスクが高い場合、水疱瘡が悪化していくこともあります。
さらに、合併症を併発することもあり、成人の400人に1人が肺炎を起こしたり、稀なケースですが脳や肝臓へ感染を起こし炎症を起こしたりするケースもあります。そして妊婦が妊娠20週までに初めて水疱瘡にかかると、妊娠初期の場合は流産のリスク、中期の場合は先天性水痘症候群(CVS)といって胎児に先天性疾患を引き起こす割合が高く注意が必要です。
また、水疱瘡は治癒しても体の中にウイルスは潜んでおり、年単位で経過した後「帯状疱疹」として出現することもあります。帯状疱疹の場合も、家での対処法や早期受診が必要な点は変わりません。
水疱瘡は予防できる?
水疱瘡は悪化のリスクからもかかりたくない病気ですが、予防できるのでしょうか。有効的だと考えられている水疱瘡の予防方法は「予防接種」です。最後に水疱瘡の予防について解説します。
水疱瘡(水痘)ワクチン
厚生労働省や東京都感染症情報センターの提示する、水疱瘡予防に最も効果がある方法は、乾燥弱毒生水痘ワクチンという、いわゆる水疱瘡のための予防ワクチン接種です。
水疱瘡の発症率を抑えるだけでなく、発症した場合の重症化を抑えることも可能です。さらに大人に発症する帯状疱疹の症状や発症を抑えられると言われています。
ワクチンは生後12〜36ヶ月未満の水疱瘡にかかったことのない子供が対象で、3ヶ月以上の感覚をあけて2回接種します。
1回目の接種は1歳になってから早めに打つのが望ましいと考えられており、厚生労働省の考えでは生後12ヶ月から生後15ヶ月の間が標準とのことです。また、すでに水疱瘡にかかったことがある方は、水疱瘡に対する免疫を獲得していると見なされるため、ワクチン接種は不要です。
国内で行われた調査の結果から水疱瘡ワクチン1回の接種で発症者は77%も減少し、2回接種済の場合は発症者は94%抑えることができることがわかっており、水疱瘡予防のためには最善の選択肢と言えるでしょう。
詳しいワクチンの接種情報については、厚生労働省のホームページを参照ください。
免疫グロブリン注射・抗ウイルス剤
免疫グロブリン注射と抗ウイルス剤は主に水疱瘡のウイルスに曝されてしまった免疫不全の患者に対して、重症化を防ぐための予防注射です。
基本的に基礎疾患がない方や免疫不全などではない方の場合は注射やウイルス剤の必要はないものの、免疫不全の方や基礎疾患がある方、妊婦や新生児などの場合は症状が重症化する恐れがあるため注射やウイルス剤が推奨されています。
規則正しい生活を送る
高い有効性が証明されている訳ではないものの、水疱瘡の発症には免疫力の低下が関係しているとされています。特に大人になってからの水疱瘡である帯状疱疹の場合、症状の発現には日々の疲れやストレスなどの免疫の低下が関わっていると言われています。
大人の水疱瘡は前述のように重症化しやすく、さまざまな合併症を起こすリスクもあるため、帯状疱疹を発症しないためにも、規則正しい生活を送ることが一つの予防方法と言えるでしょう。
もしワクチンを接種していても、ワクチンを打ったから必ずかからないという訳ではありません。加齢や疲労などさまざまな体の免疫が低下する要因が重なっていった場合、歳を重ねてから帯状疱疹が発症することもあり得ます。
どのような病気を予防するにしても、規則正しい生活を送ることは非常に重要です。
軽い水疱瘡でも早期受診が重要
ここまで水疱瘡の症状や感染について、受診の目安や家庭での対処法を解説しました。
軽い水疱瘡の場合でも、症状に気づいた時点で迅速に病院を受診するのが周囲への感染や合併症の併発を防ぐことにつながります。
また、潜伏期間は一般的に2週間(約10〜21日)とされていますが、免疫が低下していたり免疫が低下するような持病があったりする場合には潜伏期間が長くなることもあります。
特に子供の体調は子供自身で上手に伝えられず、なかなか家族は気付きにくいため、少しの兆候でも見逃さないように観察するのが大切です。
初期症状をいち早く発見し、必ず早期の受診をしましょう。
参考URL
・厚生労働省「水痘|Q&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/index.html#Q01 )
・NID 国立感染症研究所「水痘とは」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html )
・厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html )
・東京都感染症情報センター「水痘 Chickenpox」(https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/chickenpox/ )