花粉症治療は大きく3種類!自分に合った治療方法を選択しましょう!
鼻づまりや目のかゆみといった花粉症の辛い症状に悩まされ、何らかの治療を考えている方は多いのではないでしょうか。
しかし、闇雲に治療しても、花粉症の改善は見込めません。自分にとってどの治療方法が適しているのか、そもそも花粉症のメカニズムはどうなっているのかなど、あらかじめ知識を身につけておくことが大切です。
今回の記事では、花粉症の基礎知識を踏まえつつ、主な検査方法や治療方法、ご自身で行うセルフケアについて解説します。
花粉症とは
花粉症とは、スギやヒノキといった植物の花粉が原因で起こるアレルギー症状です。基本的に“鼻”と“目”の症状が現れますが、全身の各部位でかゆみや熱が発生するケースも珍しくありません。
主な症状をまとめたので、以下も一緒にご確認ください。
- 鼻の三大症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり
- 目の三大症状:目のかゆみ、目の充血、涙が出る
- 全身症状:倦怠感、熱っぽい、顔・喉・首などのかゆみ、イライラ、集中力低下
さらに、花粉症のメカニズムと原因植物についても解説します。
花粉症のメカニズム
花粉にはアレルギーの原因物質(アレルゲン)が含まれていますが、これが鼻や目から入って粘膜に付着すると、体内で抗体が作られて「マスト細胞」に結合します。マスト細胞とは、簡潔に説明すれば「アレルギー反応に関わる細胞」です。
その後、アレルゲンが再度侵入すると、マスト細胞からアレルギー誘発物質が放出されて、鼻炎をはじめとするアレルギー反応が起こります。
なお、花粉を含むアレルゲンが引き起こす鼻炎は「通年性アレルギー鼻炎」と呼ばれています。
花粉症の原因植物
花粉症の原因というと、一般的にスギやヒノキが知られています。しかし、実際はそれ以外の植物も原因となり得るため、あらかじめ注意が必要です。
主な原因植物を時期とともにピックアップしたので、こちらもご確認ください。
- スギ:2月~4月
- ヒノキ:3月~4月
- イネ科(カモガヤ・オオガワガエリ・ススキなど):5月~10月
- シラカンバ:3月下旬~6月
- ブタクサ:8月~9月
- カナムグラ:8月~10月
このように花粉は1年を通じて飛散するため、しっかりと対策しましょう。
花粉症の診断
花粉症をきちんと緩和させるためには、自分に合った治療方法を選択することが大切です。しかし、治療方法と一口にいっても多種多様なので、どのように探すべきなのか、何を基準に選ぶべきなのかなど、詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。
適切な治療方法を見つけたいなら、まずは医療機関で問診・検査を受けて、花粉症の原因を調べる必要があります。主な検査方法とその概要も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
血液検査
花粉症の診断における血液検査は、以下の2種類があります。なお、検査名にあるIgEは「IgE抗体」という免疫物質のことです。
- 総IgE値測定
- 特異的IgE抗体検査
総IgE値測定とは、血液中に含まれるIgE抗体の総量「総IgE」を調べるものです。総IgEの数値が高いと、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー症状の可能性が疑われますが、花粉症で高くなるケースはあまり見受けられません。
一方、特異的IgE抗体検査は、花粉にだけ反応する免疫物質「特異的IgE抗体」が血液中に存在しているかどうかを調べるものです。特異的IgE抗体がアレルゲンと結合すると、アレルギー症状を引き起こす物質が放出されますが、この検査によって花粉症の判定および花粉の判別が可能です。
皮膚反応検査
皮膚反応検査は大きく分けると、以下の2種類があります。
- プリックテスト
- パッチテスト
プリックテストとは、皮膚の表面を針で軽くひっかいて、その部分を花粉エキスで刺激して反応を調べるというものです。“針”を使うといっても非常に細い針であり、痛みや出血をともなわないため、乳幼児から高齢者まで年齢を問わず実施できます。また、アレルギー反応の有無を15分で判定できるため、即時性に優れていることもポイントです。
もう一つのパッチテストとは、アレルゲンのシートを健常な皮膚(主に背中・上腕外側)に貼り付けて、48時間後に反応を調べるものです。プリックテストより判定に時間がかかりますが、皮膚に接触する物質や成分(金属・樹脂・香料など)を検査できます。こちらも刺激が少ないため、老若男女問わず実施することが可能です。
鼻粘膜誘発テスト
鼻粘膜誘発テストとは、花粉エキスを染み込ませた紙(抗原ディスク)を鼻腔内の粘膜に貼り付けて、その後の反応を調べるというものです。貼付後に鼻づまりが発生したり、くしゃみが何度も起こったりした場合、花粉症の陽性反応と診断されます。
原因と疑われる花粉エキスを使って鼻粘膜に直接アプローチするため、検査の精度に優れていることが特徴です。また、花粉症を発症しているかどうかを判断できる唯一の検査方法となります。
ただし、抗原ディスクの挿入・貼付には高度な操作技術が求められるので、耳鼻科以外の医師による対応は難しいと言われています。技術不足から偽陽性になるケースも見受けられるため、注意しなければなりません。
また、日本国内における鼻粘膜誘発テストの抗原は「ハウスダスト」と「ブタクサ」の2種類のみとなっています。
その他、点眼薬で目の反応を調べるテスト、ブラシで目の粘膜をとってアレルギーを誘発する白血球の存在を調べるテストなどもあります。
花粉症対策
前述の通り、花粉症の治療では自分に合った治療方法を選択する必要があります。闇雲に治療すると、緩和できないどころか逆効果になるかもしれません。
どのような治療方法があるのか、特徴や注意点などを頭に入れておきましょう。
薬物療法:抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬
薬を使った薬物療法は、花粉症の治療において最も一般的なアプローチです。使用する薬としては、以下のようなものが挙げられます。
- 抗ヒスタミン薬
- 抗ロイコトリエン薬
- 鼻噴霧用ステロイド薬
抗ヒスタミン薬は薬物療法の基本となるもので、アレルギー反応を引き起こす「ヒスタミン」の働きをブロックしてくれる薬です。くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状に対して即効性を発揮するので、多くの方々に利用されています。
また、従来の第一世代抗ヒスタミン薬は、眠気や便秘などの副作用が問題となっていました。しかし、現在の主流である第二世代抗ヒスタミン薬は、上記のような副作用が軽減されているので安全です。
抗ロイコトリエン薬は、ヒスタミンと同様にアレルギー反応を引き起こす「ロイコトリエン」の働きをブロックしてくれる薬です。ロイコトリエンが活発になると、血管拡張作用によって粘膜の腫れが起こるので、結果として鼻づまりが起こります。そのため、鼻づまりの症状が強いときに使えば、高い効果が期待できるでしょう。
鼻噴霧用ステロイド薬は、いわゆる「点鼻薬」です。鼻腔内に直接薬剤を噴霧することで、アレルギー反応を抑制します。くしゃみや鼻水など、鼻の症状がひどいときに効果を発揮しますが、何らかの副作用を引き起こす可能性もあるため、あらかじめ注意が必要です。ただし、鼻噴霧用ステロイド薬は鼻だけに効くよう製造されているので、副作用も比較的軽くなっています。
レーザー手術
前述の薬物療法を行っても改善しなかった場合、レーザー手術が選択肢に入ります。鼻粘膜の表面に麻酔をかけてから、炭酸ガスレーザーを照射して、アレルギー反応を抑えるというものです。
レーザーで焼くことにより、腫れていた粘膜が凝固して鼻腔が広がるので、慢性的な鼻づまりも解消できるようになります。また、鼻粘膜自体が硬くなって乾くため、花粉が付着しづらくなることもメリットです。
手術は片方の鼻ごとに5分程度、治療前の処置を含めても30分程度で完了します。痛みや出血が発生することはなく、薬のように副作用が起こることもないため、小さな子供や妊婦の方でも安心して治療できるでしょう。
また、レーザー手術は健康保険が適用されることもポイントです。
免疫療法:皮下免疫療法、舌下免疫療法
花粉症を根本から緩和できるとして、注目を集めている治療法が「アレルゲン免疫療法」です。これはアレルゲンを少量から徐々に量を増やしつつ、繰り返し体内に投与し、アレルギー症状を緩和するとともに、アレルギー自体が起こりにくい体を作ることが狙いとなります。
花粉症におけるアレルゲン免疫療法は、以下の2種類です。
- 皮下免疫療法
- 舌下免疫療法
皮下免疫療法とは、皮下注射によってアレルゲンを投与する方法です。スギ・ダニ以外のアレルゲンにも対応できる、毎日服用する手間がないという点はメリットですが、通院回数が多くなるといったデメリットもあります。
もう一つの舌下免疫療法は、舌の下(裏側)から薬を投与する方法です。こちらは自宅で治療できるので通院回数が少なくて済むうえ、副作用も少なくなっています。一方、スギ・ダニに限定される、毎日服用しなければならないという点はデメリットです。
なお、どちらの免疫療法も健康保険が適用されるので、費用を抑えて治療できます。
花粉症のセルフケア
花粉症の辛い症状から解放されたいなら、早めに適切な治療を受けるだけではなく、ご自身で行うセルフケアも有効です。
病院を受診する場合、それなりの費用がかかってしまいます。健康保険が適用されるケースがあるとはいえ、経済的な事情から治療を受けるべきか迷ってしまう方もいるかもしれません。
また、治療内容によっては複数回通院しなければならないケースもあるので、仕事や学業で忙しい方にとっては悩みどころでしょう。
その点、セルフケアは日常生活の一環として取り組めるため、費用や時間を抑えることが可能です。また、セルフケアで体を労わってあげれば、花粉症以外の面でも健康になることができます。
セルフケアのポイントをまとめたので、こちらも押さえておきましょう。
食生活
花粉症の症状を和らげたいなら、日頃から規則正しい食生活を送ることが大切です。
そもそも花粉症は免疫機能の異常によって起こるので、まずは免疫機能の正常化を図る必要があります。特に“腸”は免疫機能の大部分を占めているため、腸内環境を整えることが花粉症の改善につながるといっても過言ではありません。
腸内環境を整えるためには、食生活で以下のようなポイントを意識しましょう。
- 暴飲暴食を避ける
- お酒やお菓子は控えめに
- 乳酸菌を摂取する(ヨーグルト・チーズ・納豆など)
- 食物繊維を摂取する(ゴボウ・きのこ類・海藻類など)
- ビタミンDを摂取する(干しシイタケ・シラス・サーモンなど)
また、症状が気になる場合、市販薬も活用したいところです。
生活習慣
生活習慣を見直すうえで、特に重要なポイントは「睡眠」と「運動」です。
睡眠不足に陥ると、免疫機能やホルモンバランスが崩れて、花粉症の症状が悪化しやすくなります。そのため、十分な睡眠時間を確保する、早寝早起きを心がけるといった基本的な対策でも、花粉症へのセルフケアとして有効です。
また、日頃から運動することも重要となります。適度な運動は体の抵抗力を高めるだけではなく、ストレス解消効果によって自律神経や免疫機能も整えるからです。
その他、以下のような対策も実践しましょう。
- 帰宅後は花粉を服から払い落とし、うがいや洗顔で洗い流す
- 花粉が付着しやすいウール素材の服は着ない
- 花粉シーズンは布団を外に干さない
- ドアや窓をしっかり閉める
- 外出時は花粉対策グッズをつける(帽子・マスク・サングラスなど)
どれも難しいものではないので、ぜひ取り組んでみてください。
まとめ
花粉症は春に起こるイメージが強いアレルギー症状ですが、実際は1年を通じて発症する可能性があります。症状が悪化すると、日常生活に支障が出ることも考えられるため、治療やセルフケアで改善したいところです。病院で治療を受けるなら、自分自身の状態を考慮したうえで、適切な治療方法を選択しましょう。
参考URL
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https://www.ajha.or.jp/guide/22.html
厚生労働省「的確な花粉症の花粉症治療のために」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
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花粉症ナビ「症状セルフチェック」
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日本医事新報社「第2章 アレルギー性鼻炎の診断と検査[特集:アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント]」
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おおぬき耳鼻咽喉科「アレルギー性鼻炎⑥~アレルギー性鼻炎の治療方法~」
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新百合ヶ丘総合病院「アレルゲン免疫療法について」
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わしお耳鼻咽喉科「アレルゲン免疫療法」
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花粉症ナビ「目と鼻のセルフケア」
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アレジオン「花粉症対策 早めの対策で花粉症をケアしよう」
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https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan-qa_a.pdf
ココカラクラブ「毎日の食事から花粉症対策!摂りたい食材・控えたい食材」
https://www.cocokarafine.co.jp/oyakudachi/health/202112421.html
大正製薬「花粉症にお悩みの方必見!食べ物で美味しく花粉症対策」
https://brand.taisho.co.jp/allerlab/kafun/030/
花粉症ナビ「花粉症を悪化させるNG習慣」
https://www.kyowakirin.co.jp/kahun/measure/ng.html
社会保険出版社「花粉症対策改善編」