尿酸値を下げるには生活習慣の改善が必要?〜ストレスを溜めないことが重要〜
健康診断で尿酸値が正常値から外れてしまった。びっくりすると同時に、不安もあるかと思います。高い数値が出てしまったので、下げるために何をすれば良いか。好きなものを飲んだり食べたりできることが心地よく、できるなら生活を変えたくない。けれども、このまま高い数値を放置していたらどのようなリスクがあるのか。そんな疑問をお持ちの方に、尿酸値を下げる方法を徹底的に解説します。
尿酸値とは
尿酸とは、主に肝臓・骨髄・筋肉で作られる代謝物です。細胞の核酸(DNAやRNA)の成分にプリン体が含まれています。細胞が古くなってプリン体が分解される際に、一緒に分解されてできる物質です。8割は体内で生成されますが、残りの2割は食物中の核酸から小腸で合成されます。
尿酸値は血液検査で判定することができます。正常値(基準値)は男性(3.0〜6.9mg/dl)、女性(2.5〜6.0mg/dl)です。基準値の上限は、尿酸の血液中の飽和濃度を示しています。その数値を超えてしまうと、血液中に溶け込めなくなり、各関節や腎臓・尿路に留まることとなります。
尿酸値は主に食事によるタンパク質などの過剰摂取により上昇し、栄養状態が悪くなると低下していきます。そのためタンパク質の摂りすぎ・摂らなさすぎは避け、適切な量を摂っていくことが大事です。
尿酸はプリン体の代謝産物
プリン体は、運動したり臓器を動かしたりするために必要なエネルギー物質です。
古くなった細胞を分解する新陳代謝の過程で、核酸からプリン体が生成されます。プリン体は主に肝臓で分解され尿酸となり、一時的に体内に溜め込まれた後に、主に腎臓から尿に混じって排泄されます。
プリン体と聞くと悪いイメージがありますが、あらゆる生物の細胞に欠かさず存在する物質です。動物や植物を食べることでも体内に入っていき、消化の過程で分解されていきます。最近の研究では、尿酸自体に様々な疾患をもたらす「酸化ストレス」から、私たちの身体を守ってくれる効果があることがわかっています。
尿酸値が高いと高尿酸血症
尿酸値が高いと、痛風になると聞いたことがあるかと思います。しかし、尿酸値が高い状態がつづくことで、痛風だけではなくさまざまな病気を引き起こします。
男女でそれぞれ尿酸値の基準値が設けられており、基準値の上限は血液中飽和濃度に相当します。その基準値を超え、血中の尿酸値が高い状態が継続していると、「尿酸塩」という結晶ができます。
尿酸塩が各関節に溜まることで痛風を引き起こします。痛風発作は急性の単関節炎で、特に足の関節に多いと言われています。
しかしながら、痛風発作時の血中尿酸値は低くなっているといわれており、過去に高尿酸状態がどのくらい継続しているのかが重要です。また腎臓に留まることで慢性腎臓病となったり、血管に沈着することで高血圧・脳卒中・心疾患などの動脈硬化に関連する疾患となりえます。
尿酸値を高める原因には、尿酸の産生が高くなる場合と、尿酸の排泄量が低下する場合の2通りがあります。尿酸値の産生が高くなる場合は悪性リンパ腫・白血病・溶血性貧血・甲状腺機能低下症、尿酸の排泄量が低下する場合は、脱水や尿崩症が挙げられます。
食生活に心当たりがないという方は、上記の疾患が隠れている可能性があるため、早急に受診しましょう。尿酸値は特別な治療を行わなくとも、1〜2週間で自然と正常値に近づいていくといわれていますが、再発リスクも高くなります。
尿酸値が低いと低尿酸血症
尿酸値が低い状態とは、ほとんどが腎臓から尿酸が排泄される機能が亢進していることによる場合です。まれに重度の肝疾患やキサンチン尿症・ウィルソン病などが原因となっている場合があります。
多くの場合は「トランスポーター」という、膜を貫通して物質を輸送する蛋白質の遺伝子に変異が起きています。
低尿酸血症そのものでは症状がおこりませんが、急性腎不全などの合併症が出現して初めて発見されることが多いです。激しい運動後が引き金となり急性腎不全を合併する可能性が高いと言われており、尿路結石を起こしたりします。
遺伝子の変異が原因なので、食事の質で改善するものではなく、難病にも指定されているほどです。血清尿酸値が2 mg/dL以下の人は一度、尿酸を専門とする医療機関の受診をおすすめいたします。
高尿酸血症になると
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えていることを継続している状態をいいます。尿酸の場合6.8mg/dl〜7.0mg/dl以上になると生体内条件では血液中に溶けきれなくなり、体内で析出して尿酸塩の結晶を形成することから定められた値です。
尿酸値が一時的に高いだけでは何も症状が出現しませんが、長期に継続すると尿酸塩沈着症発症のリスクとなります。尿酸値は運動や食事などで簡単に変動するため、複数回の検査を行い高尿酸血症の診断を確定します。
女性に比べ男性のほうが血清尿酸値が高い傾向にあります。男性の高尿酸血症の頻度は女性の20倍も存在するといわれており、日本では30歳以降の男性の有病率は30%にも達します。
女性は、女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされているため、有病率が低いと言われています。しかし閉経し女性ホルモンの量が減ると血清尿酸値がやや上昇します。職場での健康診断の結果によると、無症候性を含む高尿酸血症の頻度は年々上昇傾向にあり、痛風関節炎の患者数も同様に増加しています。
痛風になるリスクについて
痛風とは、突然足の親指などの関節が赤く腫れて激痛におそわれる病気です。風が吹いても痛むことから、「痛風」と呼ばれています。
この症状は急に起こることから「痛風発作」とよばれ、2〜3日は歩けないほどの痛みが続き、その後痛みは徐々にやわらいでいきます。
発作が起きた場合には、消炎鎮痛薬を用いて治療します。その後痛風発作が治まってから、尿酸値をコントロールする薬を長期間服用します。飲み続けることで効果を発揮する薬ですが、痛風の発作が起こらないからといって薬を勝手にやめてしまう方も多く、再発作を起こすケースが非常に多い病気です。
しかし、正しい診断や治療を受けずに放置していると、同じような発作が繰り返し起こりやすくなり、発作を起こすたびに状況が悪化していきます。足の親ゆびのつけ根以外に、足関節・アキレス腱のつけ根・手関節など、関節部分に激痛発作が起こります。耳介に痛風結節や尿路結石ができることもあります。
痛風の原因となる高尿酸血症は、生活習慣、とくに食生活が大きく関わっていると言われています。予防・改善するためには、食べすぎに注意して肥満を改善すること、プリン体を多く含む高カロリー食やアルコールを控えることなど、食生活の改善が必要です。
尿路・膀胱結石になるリスクについて
尿は腎臓で作られ、尿管・膀胱・尿道を経て排泄されます。高尿酸血症により尿酸が結晶化することで、それが石になっていきます。石ができた場所により、腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石になり、石が詰まると激しい痛みを起こします。
水分をあまり取らないで尿の量が減ったり、尿酸のもとであるプリン体を含む食品を多く摂取すると、尿中の尿酸濃度が高まり尿酸が結晶化しやすくなります。
老廃物を尿として排泄できなくなる腎不全にまで悪化してしまうと、透析を受け続けなければなりません。石は酸性液中で固まる性質を持つため、尿が酸性に傾きやすい高尿酸血症患者は特に注意が必要です。
尿酸値を正常にするには
尿酸値が高くなる最も大きな原因は生活習慣によるものです。よって、生活習慣を見直すことが必要です。
食事療法やアルコール制限・運動療法・ストレスコントロールなどを行うことで、改善を期待できます。痛風になった場合、痛風がおさまったら痛風の原因となる高尿酸血症の治療を始めていきます。
生活習慣を改善しつつ、尿酸降下薬を少量から使い始め、徐々に尿酸値を下げていき、おおよそ3ヶ月〜6ヶ月ほどで維持量が決定します。継続して決められた維持量を飲み続ける必要があります。尿酸値をコントロールしているので症状は現れませんが、高尿酸血症が治ったわけではありません。
また、生活習慣の改善が基本となるので、尿酸降下薬を飲み続けて尿酸値が下がったからといって、発症前と同じ生活をしていたら比較的早く発症しやすくなります。生活習慣の改善を継続し、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
どのように計画をたてて、どのような食事を召し上がっていくか、あるいはどんなことから取り組めそうか、医師や看護師や栄養士などと相談をしながら決めていくことをお勧めします。
尿酸値を正常にするための食事療法
高尿酸血症の方には肥満の方が多く、肥満を解消すると尿酸値も下がっていきます。まずは摂取エネルギーを制限していきましょう。またプリン体を多く含む食べ物を食べると尿酸値が上がりやすくなるため、プリン体が少ない食品・飲み物を選択することをおすすめします。カロリーが低いもの・プリン体が少ないものでも、食べ過ぎは尿酸値を高める原因となるため気をつけましょう。
食べ過ぎを防ぐ
肥満を防ぐためにも、摂取エネルギーを抑えることが重要です。適切な摂取カロリーは人によって異なります。どのくらいの摂取が目安になるか、医師や看護師に聞いてみると良いでしょう。
食べ過ぎを防ぐことは、摂取エネルギーを減らすだけでなく、プリン体の摂取も減らすことにつながります。プリン体を多く含む食べ物を避けるようにしましょう。具体例としては、肉や魚・魚卵・内臓(特にレバー)や干物です。また、ビールにも多く含まれています。
また尿酸値が高いと尿が酸性に近づき、尿酸が排出されにくくなります。そのため尿をアルカリ性に傾けることができる野菜類や海藻類を積極的に食べるようにしましょう。
肉や魚を我慢し続けることはストレスに繋がるため、野菜や海藻類をたくさん使って品数を増やすことで、食事にボリューム感を出すことができるでしょう。
アルコールを制限する
基本的にはアルコールは控えるようにしましょう。アルコールそのものが尿酸値を上げる原因となります。しかしながら、お酒をやめることが難しい場合、ある程度の量は許容されます。
あくまで医師との相談のうえで尿酸値の状況を見ながら量を決めていくことが適切ですが、一般的には日本酒1合・ビール500ml1本・焼酎お湯割り1杯、ウイスキーダブル1杯が目安であると言われています。
ビールや紹興酒よりも、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒はプリン体をほとんど含みませんが、カロリーは高いため太りやすい飲み物です。そのため、プリン体がすくないからといってたくさん飲んでもいいわけではありません。
また、アルコールや糖質を含まない、お茶や水を摂ることをおすすめします。体内で生成された尿酸は尿とともに排出されます。お水をしっかり飲むことで、尿がたくさん作られ、その分尿酸が排泄されやすくなります。水分は1日2Lを目安に飲むと良いでしょう。
尿酸値を正常にするための運動療法
肥満を改善するために運動をすることをおすすめします。しかしながら、意気込んで激しい運動をするのは、かえって尿酸を増やしてしまうこととなります。軽い有酸素運動を継続して行っていくようにしましょう。
有酸素運動を行いましょう
運動には、有酸素運動と無酸素運動があります。
有酸素運動とは、軽〜中程度の負荷を時間をかけて行っていくことで、酸素を使って筋肉を動かすエネルギーである脂肪を燃焼させます。代表的なものは水泳・ジョギング・ウォーキング・サイクリングなどです。
一方で、無酸素運動とは短い時間に大きな力を発揮する運動です。エネルギーの発生に酸素を必要とせず、糖をエネルギーとして利用します。代表例として、短距離走や筋力トレーニング・ウェイトリフティングなどの激しい運動を指します。
脂肪を燃焼させようと、いきなり激しい運動をすると、糖をエネルギーとして分解される際に尿酸が作られ、新陳代謝が活発となり尿酸値が急上昇します。よって、激しい運動はむしろ逆効果となってしまいます。おすすめなのは、有酸素運動を行うことです。適度な運動はストレス解消にもつながります。
尿酸値を正常にするためのストレスコントロール
高尿酸血症になるタイプの人は、精力的で行動的な人が多いとされています。ストレス解消のための暴飲暴食や激しいスポーツは身体へのストレスになり、結果的に尿酸値を上げてしまいます。
十分な睡眠や適度な運動をするなど、身体に優しい自分なりのストレス発散法を見つけていきましょう。
ストレスと尿酸値の関係性
ストレスにより尿酸値が上昇すると言われています。ストレスが溜まると、交感神経が優位に働きます。この状態が続くと、自律神経失調症や不眠などの症状を引き起こします。そして、交感神経優位の状態では内臓への血流量が減少します。腎臓への血流量が減少することで、尿酸を尿として排出する量が減少し、その結果尿酸が蓄積されると考えられています。
対策として、良質な睡眠をとることをおすすめします。
睡眠不足は疲労回復が十分にできない上、高血圧・糖尿病等、動脈硬化を引き起こしやすい生活習慣病の原因となります。シャワーではなく、ぬるめの湯船に浸かると副交感神経が刺激されリラックスします。また、睡眠時に胃での食べ物の消化が終わっていることがポイントです。
胃の消化時間は食べ物により異なりますが、おおよそ食後4時間であればよいでしょう。
まとめ
今回は尿酸値の基本的なことと尿酸値を下げるためについて解説しました。今までの習慣から、生活を丸ごと変えていく必要があり、とても勇気と根気がいることであると思います。
上記の内容を踏まえて、尿酸値を下げる方法を理解し、医師や看護師や栄養士と相談をしながら行動へ移してみましょう。