中性脂肪を下げる方法は?正常値や高い場合のリスクも解説
中性脂肪の高さを健康診断などで指摘されて、気になっている方もいるのではないでしょうか。
中性脂肪は健康状態を知るための重要な指標の一つです。今回はそもそも中性脂肪とは何か、正常値や高い場合のリスク、上がる原因を解説し、中性脂肪を下げる方法を解説します。
中性脂肪とは
中性脂肪はトリグリセリド(血液検査での表記はTG)とも呼ばれ、一般的に脂肪と呼ばれるものを指します。
肉や魚などの動物性食品や食用油などに含まれている脂肪のことで、3本の脂肪酸とグリセロールという物質で束ねられた構造の物質です。
ここからは中性脂肪について、下記の2つに分けて解説していきます。
- 中性脂肪の役割
- 中性脂肪の標準値
それぞれ詳しくみていきましょう。
中性脂肪の役割
中性脂肪は肝臓や小腸で作られる物質です。中性脂肪は不要なものと考えられやすいですが、人間や動物にとって重要なエネルギー源です。
体温の維持や、内臓を外部から守る働き、体をエネルギーとしての役割があり、少なくなると体の冷えを感じやすくなったり、疲れやすくなったりします。しかし、過剰に増えてしまうと生活習慣病のリスクや動脈硬化などのリスクが増加するため、適切な量の摂取・維持が重要です。
中性脂肪の標準値
中性脂肪の基準値は、空腹時(10〜12時間以上の絶食時)で50~149mg/dlとされています。
日本動脈硬化学会の診断基準によると、採血など血液検査で中性脂肪の値が150mg/dl以上の場合は「高トリグリセライド血症」と呼ばれ、メタボリックシンドロームの診断基準にも当てはまるため、早期受診に加えて生活習慣の改善が必要でしょう。
中性脂肪が高い原因
中性脂肪が高い原因は主に生活習慣にあると考えられています。
原因と考えられているものは主に下記の4つです。
- 食生活の乱れ
- 過度な飲酒
- 運動不足
- ストレス
それぞれ理由とともに解説していきます。
食生活の乱れ
中性脂肪が高くなる最も大きな原因は、食生活の乱れです。過度な脂質の摂取や偏った食生活が大きな原因とされており、脂質や糖質、タンパク質が皮下脂肪や内臓脂肪へと変わっていきます。
その中でもジュースやご飯、パンなどの糖質が大きな要因と考えられるものの、過度な糖質制限も健康を損なったり、体力や免疫力低下を引き起こしたりするためおすすめできません。
また、糖質以外に脂質も中性脂肪が上がる原因です。バターや豚肉などの脂質が多い食品はなるべく控えるようにしましょう。
また、マーガリンやビスケット類に含まれるトランス脂肪酸も、中性脂肪を上げるだけでなく動脈硬化のリスクを高めます。日本心臓財団の動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンスにおける動脈硬化性疾患予防のための食事指導においても、「工業由来のトランス脂肪酸の摂取を控える」という項目があり、WHO(世界保健機関)も心疾患のリスクから、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満にするように提示しています。
ここまでであげた食品の摂取が過剰ではないか、食生活を振り返ってみましょう。
過度な飲酒
次に過度な飲酒も中性脂肪を上げる原因と考えられています。
適度な飲酒の場合は肝臓で代謝されますが、過度な飲酒の場合、肝臓で代謝されずに中性脂肪が合成されていき、脂肪肝などの疾患のリスクを高めます。
そもそもお酒はビールや日本酒など、糖質が高いものも多く、糖質の摂取量が過剰になってしまうことも多いです。
また飲酒しながらおつまみや食事をするのも糖質や脂質の過剰摂取となるため、中性脂肪を増加させる原因とされています。
運動不足
中性脂肪を増加させる原因の一つは、運動不足です。
運動で消費する摂取エネルギーが少ないほど、体内に蓄積していく脂肪が増えていきます。
食事で摂取する糖質や脂質が多いほど、消費しきれない脂肪が増えていき、相対的に必要な運動量も増えていきます。しかし、摂取した過剰な脂質や糖質を消費するほどの運動はできず、中性脂肪は蓄積していくという仕組みです。
また、運動不足によって筋肉が減少していくと、基礎代謝も悪くなり中性脂肪が増加していきます。運動は脂肪を減らすという目的だけでなく、筋肉をつけて、基礎代謝をあげていくためにも重要と考えられています。
ストレス
最後にストレスも中性脂肪が上がる要因と考えられています。
ストレスによって交感神経が優位になることで血圧や血糖値が上がり、食生活が乱れたり、過度な飲酒が増えたりします。そのため直接的な要因ではなく間接的に、ストレスが中性脂肪増加の原因となっている人もいるでしょう。
中性脂肪が上がると危険?リスクの高い病気
ここからは中性脂肪が高い場合、どのような病気のリスクが高いのか解説していきます。
中性脂肪が高いと主に下記のような病気のリスクを高めます。
- 脂質異常症
- 動脈硬化
- 脳卒中や心筋梗塞など虚血性心疾患
- 脂肪肝
それぞれ解説していきます。
脂質異常症
体内のコレステロールや脂質のバランスが崩れている状態を脂質異常症といいます。
脂質異常症には高脂血症と低脂血症の二つがあり、高脂血症の中性脂肪の値の診断基準は中性脂肪の値が150 mg/dL以上です。脂質異常症の診断基準には、中性脂肪の値だけでなく、LDLコレステロールやHDLコレステロール、Non-HDLコレステロールの値が用いられます。
メタボリックシンドロームはもちろん、次の見出しで解説する動脈硬化のリスクが高いことを示す病気です。
動脈硬化
動脈の壁が固くなったり、血栓が生じたりすることで、血管が詰まりやすくなっている状態を動脈硬化といいます。
動脈硬化が進行することで、次の見出しで解説する心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性心疾患のリスクが高まっていきます。
動脈硬化の進行に対して中性脂肪が直接的に関わっている訳ではなく、LDLコレステロールの増加が大きな動脈硬化の要因です。しかし中性脂肪が増加することで、LDLコレステロールが増加していくと考えられているため、中性脂肪の増加も動脈硬化のリスクが高まることに繋がっていくと言えるでしょう。
脳卒中や心筋梗塞など虚血性心疾患
前の見出しで解説した動脈硬化が進行したり、高血圧や加齢、喫煙などのさまざまな因子が重なっていったりすることで、脳卒中や心筋梗塞などの虚血性心疾患の危険が高まっていきます。
要因は必ずしも一つではなく、前述した高血圧や加齢、喫煙に加え基礎疾患などさまざまな因子が絡んでいるとされていますが、動脈硬化は虚血性心疾患の主な原因です。
また2020年の日本の死因の第2位に当たるのが「虚血性心疾患」で全体の15%を占め、さらにその中でも心不全が41%、虚血性心疾患が33%と多くを占めています。
心筋梗塞や脳卒中、狭心症などの虚血性心疾患は、どれも命に関わる病気です。脂質異常症や動脈硬化を指摘されている場合は、早めに中性脂肪を下げる必要があるでしょう。
脂肪肝
過剰に脂肪を摂取した場合、肝臓で作られる脂肪は代謝しきれず、中性脂肪やグリコーゲンなどの物質として体に蓄積していきます。
脂肪肝は肝臓に脂肪が蓄積した状態で、そのまま放置していると肝炎や肝硬変、さらに肝臓がんなどの疾患へと進行してしまう危険があります。
脂肪肝はアルコール性脂肪肝といって、アルコールの過剰な摂取が要因であることが多いですが、非アルコール性脂肪肝といって肥満や脂質異常症など脂肪の蓄積が要因であることも多いです。
肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれており、身体に自覚症状が出ないうちに進行していくことが多いです。そのため中性脂肪の増加に加えて肝機能の数値であるALT(GPT)、AST(GOT)などの値が採血で上昇している場合は、早期の受診と生活習慣の改善が必要でしょう。
中性脂肪を下げる方法や改善策
ここまでの原因やリスクを踏まえて、中性脂肪を下げる方法や改善策を紹介します。
主な中性脂肪を下げる方法は以下の3つです。
- 食生活の改善
- 飲酒を控える
- 適度な運動を行う
それぞれ解説していきます。
食生活の改善
前述の原因の項目でも解説したように、エネルギー量のとりすぎが主な中性脂肪増加の原因です。さらに、お菓子などの甘いものや甘いドリンクも原因になっていることが多いため、摂取を避けるか抑えるようにしましょう。
また、脂肪や糖質、タンパク質など摂取を止めるのではなく、栄養バランスを考えて摂取していくことが大切です。例えば精白米を食べる際は、わかめなどの海藻類やきのこなどの食物繊維を多く含んだ食材が入った味噌汁を一緒に食べることで、糖質の吸収を抑える働きをしてくれます。
そして食生活を意識しながら、適正な体重【身長(m)×身長(m)×22】を目指すのも大切です。体重といった数値的な目標値を定めることで努力しやすいため、体重を測りながら規則正しい食生活にしていくと良いでしょう。
飲酒を控える
本来は飲酒を止めることが理想的ですが、付き合いなどで難しい場合は飲酒を控えるようにしましょう。
厚生労働省が提示する健康日本21では、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度とされています。
純アルコールの計算式は下記の式です。
『お酒の量(ml) × アルコール度数/100 ×0.8(アルコールの比重)= 純アルコール量(g)』
一度自身の普段の摂取量を計算して確かめてみて、1日の摂取量を超えてしまっているようであれば、摂取量を見直してみましょう。
また、飲酒する際は糖質の高いビールや日本酒、甘さのあるリキュールなどは避けて、ウイスキーや焼酎などにすると良いです。
適度な運動を行う
脂質異常症はもちろん肥満も動脈硬化を進め、虚血性心疾患などのリスクを高めます。
肥満の解消のためにも適度な運動を行うことが大切です。ただ運動は1日やれば良いというものではなく、継続していく必要があるため、日常生活に運動を組み込んで習慣化していくことが重要です。
例えば、通勤の際に1駅分歩いてみたり、ペットの散歩で軽くランニングしてみたりなど、日常生活に運動を組み込むことで、適度な運動を継続できるでしょう。
生活習慣を改善して中性脂肪を下げよう
ここまで中性脂肪とは何か、中性脂肪が増加する原因や、もたらすリスクに加え、改善方法も紹介しました。
食生活や飲酒、運動、喫煙など生活習慣の改善が中性脂肪を下げることや危険な疾患にかかるリスクを減らすことにつながっていきます。
ただし食生活や運動など、どれも継続的な取り組みが重要なため、生活習慣を改善して長期的な基準値の維持を目指していくことが大切です。
まずは少しずつ取り組みやすいことから実践して生活習慣を改善していき、健康的な中性脂肪の数値を目指しましょう。
参考サイト一覧
厚生労働省e-ヘルスネット「中性脂肪 / トリグリセリド(ちゅうせいしぼう)」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-045.html )
公益財団法人日本心臓財団「動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンス」(https://www.jhf.or.jp/pro/a&s_info/guideline/post_2.html )
厚生労働省「トランス脂肪酸に関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html )
一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」(https://www.med.or.jp/dl-med/jma/region/dyslipi/ess_dyslipi2014.pdf )
一般社団法人 日本健康倶楽部「中性脂肪|中性脂肪とは」(https://www.kenkou-club.or.jp/check_mikata07.jsp )
大正製薬「脂質異常症(中性脂肪値、コレステロール値)の原因」(https://www.taisho-kenko.com/disease/230/01/ )
厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html )
厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(基本)」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-012.html )
NPO法人 食と健康プロジェクト「糖尿病とストレス」(https://www.alic.go.jp/content/000134422.pdf )
国立循環器研究センター「コラム|心不全と虚血性心疾患の疫学」(https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_05.html )
厚生労働省e-ヘルスネット「動脈硬化」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-082.html )
厚生労働省e-ヘルスネット「脂肪肝」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-033.html )
厚生労働省「健康日本21(第二次)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html )