うつ病の診断基準も解説|うつ病のサインと症状、治療法を解説
気分障害の一つであるうつ病。決してめずらしいものではなく、日本人の約15人に1人が経験する身近なものと言われています。
この記事ではうつ病とはどのような症状があるのか、診断基準や治療法、予防法などについて解説します。
目次
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1.うつ病とは
うつ病は、年齢や職業などに関係なくどんな方でもかかる可能性があります。ここではうつ病の特徴や分類などを解説します。
かかりやすい方の傾向
・几帳面
・責任感や正義感が強い
・周囲から信頼される真面目な方
・上手に周囲の手を借りず一人で責任を抱え込む
こんな状態が続いたら注意
こころの状態(精神症状)
・一日中気分が落ち込んでいる
・何をしても楽しめない
からだの状態(身体症状)
・眠れない
・食欲がない
・疲れやすい
などの症状が現れる傾向があります。
上記のような症状があり、滞りなく日常生活を送りづらい場合、うつ病である可能性があります。
気分障害の種類
気分障害には
・うつ病
・双極性障害(躁うつ病)
などがあります。
うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態・気分が上向きになり活動的になっている状態)を繰り返す病気です。
双極性障害はかつては「躁うつ病」と呼ばれていたのでうつ病と同じ、もしくはうつ病の一種と思われやすいのですが、うつ病とは異なる病気です。
そのため、うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なるので、専門家による判断が必要となります。
うつ病の特徴による分類
メランコリー型
典型的なうつ病と言われるタイプ。様々なストレスにより脳のエネルギーが不足、枯渇している状態です。
非低型
良い事に対しては気分は上向く。他人からの批判に過敏などの特徴があります。
季節型
特定の季節にうつ症状が現れ、季節の移り変わりにより回復するタイプ。どの季節間でも起こるが、冬季うつ病が多い傾向。日照時間との関連が指摘されています。
産後
産後4週間以内にうつ病が現れるもの。ホルモンの急激な変化、出産の疲労、育児での不安、睡眠不足など様々な条件が重なりやすいので注意が必要です。
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2.うつ病のサインと症状
ここではうつ病と見られるサインや心身に起きる症状を解説します。
こころの傾向
・気分が落ち込む
・何をしても楽しめない
・悪い方にばかり考えてしまう
・何が原因で気分が落ち込むのか思い当たらない
・問題を解決しても気分が回復しない
・物事の捉え方が否定的になる
・焦りやイライラが強くなる
・自分を必要以上にだめだと感じてしまう
身体に現れる傾向
・食欲が無い
・眠れない
・眠り過ぎてしまう
・性欲が無い
・身体が疲れやすい、だるい
・頭痛
・肩こり
・動悸、めまいがする
・胃の不快感がある、便秘、下痢などの胃腸系の機能の低下
・口、喉が乾く
自分以外の周囲の人にも分かるうつ病のサイン
・反応が遅い
・落ち着かない
・表情が暗い
・涙もろい
・自分を責めてばかりいる
・飲酒量が増えた
3.うつ病の診断基準
うつ病と診断されるのはどのような基準によるのでしょうか。
ここでは診断基準について解説します。
セルフチェック項目も解説しますが、自己判断のみで診断がつくものではないので、あくまで参考として見ていただき、確定的な診断は必ず専門家に状態を見てもらいましょう。
簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)によるセルフチェック
簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology・QIDS -J)という、16項目の自己記入式のチェック基準があり、うつ病の重症度を評価できます。
世界的に著名な精神科医師・John Rush氏によって開発され、世界10カ国以上で使用されているチェック基準になります。
チェック項目は、
・睡眠に関する項目(第1-4項目)
・食欲/体重に関する項目(第6-9項目)
・精神運動状態に関する2項目(第15、16項目)
・それ以外の項目(第5、10~14項目)
の16項目からなり、点数化してうつ病の軽・重度を計っていきます。
詳細なチェック項目は以下の16項目(それぞれに3つの選択肢が用意されていて当てはまるものを回答していく)
1寝つき
2夜間の睡眠
3早く目が覚めすぎる
4眠りすぎる
5悲しい気持ち
6食欲低下
7食欲増進
8体重減少(最近2週間で)
9体重増加(最近2週間で)
10集中力/決断
11自分についての見方
12死や自殺についての考え
13一般的な興味
14エネルギーのレベル
15動きが遅くなった気がする
16落ち着かない
採点方法に定めがあり、セルフチェックを行う際は確認をし、正しい評価を算出できるようにしましょう。
厚生労働省:簡易抑うつ症状尺度QIDS-J
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
うつ病の診断基準
うつ病の診断は、一般的に「DSM-V」と呼ばれるアメリカ精神医学会の診断基準を基に判断されます。
診断項目
1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失
3.食欲の減退または増加、体重減少または増加
4.不眠、または過眠
5.精神運動の焦燥または制止
6.疲労感、または気力の減退
7.無価値感または過剰・不適切な罪責感
8.思考力や集中力の減退、または決断困難
9.死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図
チェックポイント
・1、2の項目の内、当てはまる項目が少なくとも1つある。
それに加えて3~9の項目で当てはまる項目を加算すると5項目以上該当する。
・上記の1~9項目で当てはまる症状がほとんど1日中、毎日、2週間以上にわたって起こっている。
・気分だけでなく身体の不調も伴う
・症状があるために苦しい、辛い、社会生活や職業などが滞っている
など。
うつ症状が一時的にではなく、2週間以上続いている状態を「うつ状態」と呼びます。
治療の方法など改善へ向けての適した対策を取れるように、自己判断は避け、専門家へ相談しましょう。
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4.うつ病の治療法
うつ病と一口に言っても様々な治療法があり、患者さんの症状や方針などでどれを選択していくかが異なってきます。
ここでは以下の治療法について解説していきます。
・何科を受診するか
・休養をとる
・薬物療法
・精神療法
・その他の治療方法
何科を受診するか
・精神科
・心療内科
・内科などのかかりつけの医師に相談する
・勤務先の産業医に相談する
・保健所や精神保健福祉センターの相談窓口を利用する
・スクールカウンセラーに相談する
など
休養をとる
・散歩や軽いストレッチなど有酸素運動をする
・学校、職場、自宅などストレスの元から離れた場所で過ごす
・入院環境も頼る
薬物療法
主に抗うつ薬を用いて治療していきます。
体質に合う薬の種類や使用量などの相談、投薬による副作用の予防・軽減のためにも、納得のいくコミュニケーションが可能な主治医を見つける事が重要です。
心配や不安になった際、遠慮なく話せるか、しっかり話を聞いて状態を見てもらえるか確認しましょう。
・継続して服用する必要があるので、必ず主治医の指示に従う。
自己判断で投薬量を減らす、増やす、中断などはしない。
・投薬を開始して不調などがあった場合は必ず主治医と相談をする。
・すぐに効果が現れる治療ではないので、焦らずに継続する。
・うつ病で現れた身体の不調のための投薬が必要な事もあるので、飲み合わせなども主治医からきちんと説明を受け併用する。
精神療法
精神療法には、
・支持的精神療法(基本的な治療法。患者さんの抱える不安や辛さ、苦しさなどを医師が聞きアドバイス等をする療法)
・認知行動療法(患者さんの考え・認識と実際の状態との食い違いを検証してバランスを取っていく療法)
・対人関係療法(「症状と対人関係問題の関連」を理解して、対人関係に対処する方法を見つけていく療法)
など患者さんの状態により適した療法を行っていきます。
その他の治療法
薬物、精神療法以外にも、
・高照度光療法(太陽光やそれと同等の光を与え、体内時計を調節し生体リズムを整える治療法)
・修正型電気けいれん療法(頭部(額)に電極をあて数秒間電気刺激を与え、身体の苦痛やけいれんを緩和させる療法)
・経頭蓋磁気刺激法(特殊なコイルを使用して脳の外側から大脳を部分的に刺激し、脳の持つ回復力を引き出す治療法。)
などの療法を取り入れ治療を行う場合もあります。
どの療法で治療を進めるにしても共通して言える事は、「治療を進める上で不安や悩みを持ったら、主治医に相談しましょう」という事です。
遠慮なく相談できる、きちんと話を聞いてくれる主治医と連携を取れる事がうつ病治療にとってとても重要です。
そして、1人の医師のみでなく、他の専門家にも意見を聞いてみるという事も選択肢に入れるとよいでしょう。
これは「セカンドオピニオン」と言って、うつ病に限らず様々な疾患で有効な方法です。
複数の専門家の意見を聞き、患者さんの状況を多方向から見る事で、納得のいく適した治療を進める手掛かりとなります。
うつ病の治療経過
うつ病の治療は、復調していくのにある程度の期間が必要となるので、すぐに治療が終わるというものではありません。
治療の流れの中でも、回復したりまた状態が低下したりと段階的に徐々に改善していきます。
そして、以前の元気な状態に回復している=「寛解(全治までではないが、症状が治まって穏やかである)」状態を迎えたと言える事ができるとされています。
治療の期間には、大きく分けて3つの期間があると考えられています。
・急性期:休養、薬物治療を重視する
・回復期:薬物治療、精神療法・カウンセリングを重視する
・再発予防期:薬物治療、精神療法・カウンセリングを重視する
患者さんによって何がうつ病の原因になっているのかは異なりますし、うつ病を引き起こす原因は複数な事も多々あります。
3つの治療期間がそれぞれどれ位の期間になるかは、状況によりたいへん幅があります。
幅はあるものの、大まかな目安としては、
急性期:1か月~3か月
回復期:4か月~6か月
再発予防期:1年~
というのが典型的なうつ病の場合の大まかな期間となります。
治療にあたり、最も重要なのは「回復したと思っても自己判断で薬は止めない」ということです。
「回復期」の途中で寛解の状態を迎え、その際、自己判断で薬を飲まなくなると、結果的にせっかく状態の低下が再発してしまう事も。
減薬していくタイミングや薬自体を終了する時期は主治医とよく相談し、決定していく事がなにより大切です。
例えば薬を飲む期間が長引く事への心配や不安が生じたとしたら、その場合は心配に思っている事を主治医にも伝えてアドバイスをもらいましょう。
その他でも気がかりな事があれば主治医に伝え、その時に適した対応をし、根気強く治療を終える事を目指しましょう。
5.うつ病を防ぐために
何も心配事がない、平穏な日々というのは中々ないものです。しかしこの位の事と無理をしていると結果として心身に許容量を超えた負担がかかってしまいます。
負担のかかり過ぎない日々の過ごし方のコツを解説します。
ストレスとの付き合い方
ストレスが高じると心身に様々な変化を起こします。
・だるい、疲れが取れない、肩こり、消化機能の低下、よく眠れないなどの身体の変化
・気がはれない、イライラ、不安感、被害意識が強くなるなどの気持ちの変化
・身だしなみがだらしなくなる、約束を守れない、引きこもりがちになる、食生活の乱れ、飲酒喫煙量が増えるなどの行動の変化
これらの変化に早めに気がつき、対策を取る事が重要になります。
自分で気がつく事もありますが、行動面の変化から周囲の家族や職場の人が異変に気付き教えてくれる場合も多々あります。
その際には他者からの助言に素直に向き合う、耳を傾ける事が大切になります。
ストレスで追い詰められている場合、自分では変調に気が付いていない場合も多いからです。
知らず知らずのうちにストレスが蓄積している事もよくあるので、自分自身の生活や気持ちを確認する時間を持って見直す事もとても有効です。
役割分担のストレスを軽減する
学業、仕事や家庭など、仕事や役割分担のストレスがあります。
・仕事の効率化を図る
・仕事と休みのメリハリをつけてリフレッシュできるようにする
・仕事を他の人とシェアする、頼まれても引き受け過ぎない等、仕事の抱え込みによるオーバーワークを避ける
などの対策があります。
人員の確保などの問題で中々分かっていてもすぐに解決できない場合もあります。
ですが、環境の改善のために周囲に相談するのも抱え込みの発散となるので全く無駄ではありません。
少しづつでも整うように動けると大分心身にも有効です。
専門家に相談する
ストレスやうつ病の症状に心当たりがある、自分では状況の改善をどうしていいか分からない等の場合は、心療内科など専門家に相談する事も重要です。
一人で悩んだり考え込んでしまい過ぎて修復にエネルギーや時間が更にかかってしまうという事もあります。
・相談窓口に電話、メール、LINEなどで相談する
・勤務先の産業医に相談する
・スクールカウンセラーに相談する
など、相談先は多数あります。
また、相談する際に「話す内容をまとめてからでないといけない」と考える事はありません。
順序良く、理路整然に話す必要はありません。困っている状態を知ってもらう事が重要なので、そのままで聞いてもらうのがよいです。
専門家に話し、聞いてもらう。そのやり取りの中で頭の整理がつく事も多々あります。
うつ病は長期に渡って向き合う事が必要です。周囲の助けも借りながら根気強く、改善を目指しましょう。
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6.参考文献
厚生労働省:みんなのメンタルヘルス総合サイト
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html
国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
https://www.ncnp.go.jp/cbt/guidance/about
厚生労働省:簡易抑うつ症状尺度QIDS-J
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf