尿酸値の標準はいくつ?高尿酸血症と低尿酸血症のリスクも解説!
健康診断で尿酸値が正常値の範囲内から外れてしまった…。健康だと思っていても、もしかすると気づかないうちに大きな病気を抱え始めているのかもしれません。
この記事では、尿酸値が正常値より高くても低くても健康上のリスクが伴うことや、尿酸値を正常に保つためにできる予防方法について紹介します。
尿酸値とは
尿酸値とは血液中に尿酸がどれほど含まれているかを示す数値のことで、血液検査をすることで簡単に調べられます。尿酸値には正常とされる範囲があり、男性は3.0~6.9㎎/dl、女性は2.5~6.0㎎/dlとされており、この範囲から外れると、潜在的な病気のリスクを抱える可能性が高まります。多くの場合、リスクを早期発見する目的として健康診断でもチェックされる項目となっています。
尿酸は産生と排出を繰り返すため、検査のたびに値は変化します。しかし、健康な人の尿酸は産生量と排出量のバランスが保たれているため、正常値の範囲内で推移することが一般的です。
尿酸値の増減は食習慣の影響を大きく受けます。肉や魚など動物性タンパク質の摂り過ぎは尿酸値を上昇させる恐れがあります。一方、栄養不足など健康状態の悪化は低下を招きます。
尿酸はプリン体の代謝産物
そもそも尿酸はどのようにして作られるのでしょうか。尿酸と深く関係しているのがプリン体と呼ばれる物質です。
プリン体と聞くと悪いイメージを持つ人がいますが、実際は、私たちが生きていくのに必要不可欠なもので、運動したり臓器を動かしたりするための大切なエネルギー物質です。
プリン体は、細胞内にあるDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)など核酸の主要成分の1つであり、新陳代謝の過程で古くて不要になった細胞が分解されるとき、この核酸から出てきます。
ですから、プリン体のほとんどは体内で作られています。それに加えて、私たちが日ごろ口にする穀物や肉、魚、野菜などプリン体を含む食品を摂り入れることで外からも入ってきます。
このプリン体が肝臓で分解されたときに出る代謝物の1つ、それが尿酸です。尿酸は一時的に体内に溜め込まれたあと、尿や便として体外に排泄されます。
尿酸値が高いと高尿酸血症
高尿酸血症とは、尿酸値が正常値の上限範囲を超えている状態です。通常、尿酸は血液中に溶け込んでいますが、上限値は尿酸の血中飽和濃度に相当し、その値を超えてしまうと血液中に尿酸が溶け込めないことを意味します。
何らかの原因で増え続け、血液中に溶け込めなくなった尿酸は尿酸塩という結晶になり、体の各組織に沈着します。比較的よく見られるのが関節や腎臓、尿路などへの沈着です。
たとえば、足の付け根などの関節に尿酸塩結晶が沈着すると炎症が起こり、痛みや腫れを伴う痛風発作という急性の単関節炎を引き起こします。尿酸塩が腎臓や尿路に沈着すると、腎結石や尿路結石を起こす恐れがあります。
さらに高尿酸血症を放置しておくと、心臓病や脳卒中など動脈硬化に関係する疾患が発症する危険性が高まりますし、高血圧や慢性腎臓病にかかるリスクも増大します。それで、こうした合併症を誘発する可能性があることを考えると、高尿酸血症を軽く見ることはできません。
尿酸値が低いと低尿酸血症
低尿酸血症とは前項の高尿酸血症とは真逆で、尿酸値が異常に低い状態です。低尿酸血症になる原因は、腎臓の働きに問題があると考えられています。
腎臓は血液を濾過してきれいにする働きがあります。血液中に溶け込んでいる尿酸は腎臓の糸球体と呼ばれる場所で濾過されますが、そのほとんどが尿細管の働きによって血液に戻されます。ほんの一部の尿酸だけが膀胱に送られ、尿と一緒に排泄されます。
しかし、尿酸を血液に戻す役割を担っている尿酸トランスポーターという遺伝子が異常をきたしていると、本来体内に再吸収されるべき尿酸が戻ることができず、その結果、尿酸の血中濃度が低くなり低尿酸血症となります。
低尿酸血症自体は無症状のため、自分がその疾患を抱えていても、そのことにほとんど気づきません。多くの場合、激しい運動をしたあとに急性腎不全になったり、尿路結石を発症したりするなど合併症が見られてはじめて発見されます。残念なことに、低尿酸血症は疾患そのものの認知度も高くないため、合併症を含め適切な診断や治療が十分なされていないのが現状です。
そのため、健康診断の血液検査で尿酸値が2mg/dl以下だった人は、腎臓内科など専門の医療機関で一度しっかりと診てもらうことをおすすめします。
高尿酸血症になると
血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。この数値に決められたのは、尿酸値が6.8mg/dl〜7.0mg/dl以上になると、尿酸が血液中で飽和状態になり、尿酸塩結晶が形成されるためです。
ただ尿酸値が正常値の範囲を超えて高尿酸血症という診断を受けても、特に自覚症状はありません。しかし、体内にできた結晶は関節などに徐々に蓄積され、それが長期間にわたって続くと炎症が起きる尿酸塩沈着症を発症する可能性が高まります。代表的な症状として痛風、尿路結石・膀胱結石などが挙げられます。
痛風になるリスク
痛風は、足親指の付け根など関節が腫れて激しい痛みを伴う病気です。足親指の付け根によく起きますが、それ以外にも足の甲やかかと、アキレス腱の付け根、膝、ひじなどの関節にも発作は起こります。このように痛風が手足など末端の関節に起きやすいのは、尿酸の性質として低温になるほど結晶化しやすいためといわれています。
関節に沈着していた尿酸塩結晶が何かのきっかけで剥がれ落ちると、免疫システムが異物と判断し排除しようとするために炎症が起きます。その結果、その部位が腫れ上がり痛みます。
痛風の要因となる高尿酸血症は、尿酸の産生と排出のバランスが崩れ、排出量よりも多くの尿酸が産生されることによって起きます。排出量を上回るほどの大量の尿酸が産生される原因の1つが食習慣です。
尿酸はプリン体が分解されたときにできる代謝物の1つと述べましたが、プリン体は体内で細胞の新陳代謝やエネルギー代謝のときに作られる以外に、食品からも摂取されています。それで、プリン体が多く含まれている食品を必要以上に摂り過ぎると、尿酸が過剰産生されてしまい、結果として、排出されない、血中にも溶け込めない尿酸が尿酸塩結晶となって関節に沈着してしまいます。そのため、痛風のリスクを下げるには食習慣の改善が不可欠です。
尿路・膀胱結石になるリスク
痛風を患っている人の約20%は尿路結石も併発するといわれています。
尿路・膀胱結石ができる仕組みは、プリン体の摂り過ぎで尿酸の産生量が増加し、尿中への過剰な尿酸排泄があると尿中尿酸濃度が高くなるところから始まります。飽和状態に達すると尿中に溶け込めなくなった尿酸が結晶化、結晶化した尿酸が核となり、その表面にカルシウムやシュウ酸などが付着・凝集して結石となります。
結石は酸性の液体のなかで固まる性質がありますが、高尿酸血症の人の尿は酸性に傾いているため、結石が作られやすい環境にあるといえます。
微小な結石であれば存在も気づかれることなく自然と排泄されますが、腎臓内である程度の大きさまで成長を続ける結石もあります。そして、それが尿管や膀胱まで下りてくると炎症が起き、激しい痛みや血尿などの症状が表れます。
低尿酸血症になると
低尿酸血症は尿酸の血中濃度の低さが大きな特徴です。腎臓に運ばれた尿酸のうち、尿と一緒に排出されるのは約10%程度といわれており、残りのほとんどすべては尿細管によって体内に再吸収され、血液に戻ります。しかし、低尿酸血症になる人は、その機能が正常に働いておらず、尿と一緒に多くの尿酸が排出されてしまうために尿酸値が低くなります。
低尿酸血症も無症状の場合が多いです。しかし、尿酸値が低ければ合併症を引き起こす可能性が高くなります。ここでは、合併症の腎障害と尿路結石について取り上げます。
運動後の腎障害
血液中に尿酸が少ないと、運動した後に急性の腎障害を引き起こすことがあります。運動後急性腎障害といわれるこの疾患は、低尿酸血症の合併症の中でも重篤な部類に入ります。
症状として、運動をしてから数時間から1日の間に急激な腰や背中の痛みを訴えたり、吐き気や嘔吐があったりします。また尿の量が減ることもあります。有酸素運動よりも短距離走といった無酸素運動をしたあとのほうが出やすいといわれています。
一時的に透析が必要になる場合もありますが、予後は比較的よく、2週間から4週間ほどで腎機能は回復します。
運動後急性腎障害は再発の可能性が約20%程度あるため、運動前の水分補給を十分にするなど事前の予防対策をしっかりしておくことが大切です。
尿路結石
尿路結石は高尿酸血症の人だけでなく、低尿酸血症の人にも起こりやすい合併症で1割程度の人が発症します。
低尿酸血症は尿酸の血中濃度の低さに加え、尿中に尿酸量が増えることも特徴の1つです。尿酸の腎外排泄が減少することが原因と考えられています。
腎臓から尿酸が適度に排出されないと、結果的に腎臓内に多くの尿酸が留まることになり、尿中尿酸濃度が飽和状態に達したとき、尿酸が結晶化されます。結晶化された尿酸は成長して結石化し、ある程度の大きさになった結石が腎臓から出て尿路で詰まると、激痛を引き起こします。
尿路結石を避けるためにも、水分をしっかり補給し尿中の尿酸濃度や飽和度を下げるようにしましょう。
尿酸値を正常にするには
血液中の尿酸値は高くても低くても合併症のリスクがあります。生活習慣の良し悪しが尿酸値に影響を与えていることは明らかになっているので、尿酸値を正常値にするために生活習慣の改善を図るようにしましょう。
生活習慣の改善には、栄養とカロリーを意識した適切な食事や水分補給、アルコール飲料の制限、適正体重の維持、適度な運動、ストレスのない生活スタイルなどが含まれます。
すべてをいっぺんに行うことは難しくても、できるところから少しずつ取り組んでいきましょう。継続した生活習慣の改善を行うことで尿酸値を正常値に戻すことができるでしょう。
食べ過ぎを防ぐ
BMI(体格指数)が大きいと尿酸値が高くなるという研究報告があり、肥満気味の人は体重を減らすだけでも尿酸値が低下するといわれています。1日の摂取カロリーを適正なものにしましょう。適正カロリーは標準体重✕30(kcal)、標準体重は身長(m)✕身長(m)✕22で求められます。
尿酸値を正常値内に収めるためにほかにできることとして、プリン体が多く含まれる食品を控えます。たとえば、モツやレバーといった内臓系や干物、ウニやタラコ、納豆など大豆製品、ラーメンのスープなどにはプリン体が多く含まれているので、食べ過ぎに注意しましょう。
尿酸値が上がると尿は酸性に傾き、酸性度の高い尿は尿路結石の発症リスクを高めます。そのため尿をアルカリ性に近づけるには、野菜や海草類といったアルカリ性食品を積極的に摂取する必要があります。
お酒は適量にする
尿酸値を正常値の範囲内に保つのに水分補給は重要ですが、アルコールはその役目を果たせません。アルコールはどの種類であっても、代謝の過程で尿酸値を上げる働きがあります。また、腎臓の機能を低下させて尿酸排泄を抑えてしまうので、体内に尿酸が溜まってしまいます。さらに利尿作用があるので、体内の水分がかえって減少し血中の尿酸濃度が上がり、尿酸値が上昇します。
プリン体の少ないアルコール飲料であればよいというものでもありません。ウイスキーや焼酎など蒸留酒にはプリン体がほとんど含まれていませんが、飲みすぎると内臓脂肪が増えて肥満につながります。
飲酒量は適量をたしなみましょう。日本酒であれば1合、ビールであれば500mlが適量とされています。また、休肝日を設けるのも大切です。
水分制限が必要な病気を抱えていないのであれば、1日2リットル以上の水やお茶を飲むのが理想とされています。
有酸素運動を取り入れる
適度な運動は尿酸値を正常値に戻すのに役立ちます。肥満を解消し、適正体重を維持することを助けます。ただし、激しい運動や無酸素運動は活発な新陳代謝を促すため、プリン体が急激に分解され尿酸の大量産生につながります。つまり、尿酸値がかえって上昇してしまうのです。
尿酸値の観点からすると有酸素運動が適当です。話しながらでも体を動かせるウォーキングなど軽めの運動を継続的に行うといいでしょう。
適度な運動はストレス軽減にも一役買っているといえるでしょう。ストレス解消にアルコールを飲むよりもよっぽど健康的で気持ちを爽やかにしてくれます。
まとめ
この記事では、尿酸値の正常値と共に、正常値から外れた場合、体にどのような影響を与えるかを説明してきました。高尿酸血症も低尿酸血症も様々な病気を誘発するリスクをもっています。
生活習慣の改善を図り、食べ過ぎや飲み過ぎをやめて適度な運動を心がけましょう。尿酸値についての知識をより深め、自分の健康状況を正しく理解して快適な生活を送るようになさってください。
参考サイト一覧
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