大人でも手足口病に感染する可能性|子供より重症化しやすい傾向も
突然ですが、手足口病という病気を耳にしたことはあるでしょうか。
手足口病は子供の三大夏風邪と言われており、「子供が感染した。」という方もいらっしゃるかと思います。
では、感染するのは子供だけで、成人の大人は感染しないのでしょうか。
この記事では、手足口病は大人でも感染するのか、実際に感染した場合、いつから出勤できるのか、注意点とともに詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 手足口病は、原因ウイルスが複数あるため、大人でも感染する可能性がある
- 手足口病に大人が感染する場合、子供からの感染がほとんどで、感染の場は子供のいる家庭や職場が多い
- 大人が感染した場合、子供より重症化しやすい傾向がある
- 手足口病に感染した場合、発熱が改善するまでは、できるだけお仕事を休むことを推奨される
- 大人が手足口病に感染した場合「不顕性感染」という可能性もある
手足口病とは
手足口病は、皮膚症状が特徴的な、子供が感染しやすい三大夏風邪の一つです。
皮膚症状の他に、発熱や身体のだるさなど、一般的な風邪の症状が見られます。皮膚症状は主に、以下の三つの部位に水疱が現れる傾向にあります。
- 手のひら
- 足の裏
- 口内
このような症状から、手足口病と呼ばれています。
治療法としては、安静にすることが重要になります。理由としては、現状効果的な治療薬が開発されていないからです。
手足口病の原因
手足口病はウイルスに感染することで発症します。発症の原因となるウイルスは様々ですが、主に以下のウイルスが挙げられます。
- エンテロウイルス
- コクサッキーウイルス
これらはアルコールなどの消毒剤、熱にも強いウイルスで、ノンエンベロープウイルスとも言われています。
また手足口病は、何度も感染する可能性があります。理由は、手足口病は感染する可能性のあるウイルスの種類が豊富で、感染した種類のウイルスに対しては免疫を獲得しても、別のウイルスに感染する可能性が残っていることが挙げられます。
手足口病患者における大人の数
手足口病に感染する患者は、80〜90%が5才以下の乳幼児で、子供の感染症というイメージが強いです。
しかし感染の原因がウイルスであるため、大人でも感染する場合があります。大人が感染する経路としては、子供からの感染がほとんどで、感染の場は子供のいる家庭や職場が多いです。
また可能性のあるケースとして挙げられるのが、手足口病に感染した子供の親が会社に出勤し、職場にウイルスを持ち込んで、他の大人に感染を拡大させてしまう場合です。
手足口病の感染経路
手足口病は、人から人に感染するウイルス感染症です。
主な感染経路は主に三つで、感染者の咳やくしゃみなどで排出されたウイルスを吸い込むことで感染する飛沫感染、感染者の唾液や鼻水などに存在するウイルスが間接的に体内に入ることで感染する接触感染、感染者の便に存在するウイルスが間接的に体内に入ることで感染する糞口感染が挙げられます。
手足口病の症状
手足口病の代表的な症状は以下の通りです。
- 発熱(37~38度)
- 喉の痛み
- 水疱の痛み
- 手のひらの水疱(2~5mm)
- 足底(足の裏)の水疱(2~5mm)
- 口内の水疱(2~5mm)
- お尻の周囲の水疱(2~5mm)
手足口病に感染すると、手足口病で高熱が出るのは稀で、多くの場合は37度台で、罹患者の30%が38度以上の発熱を起こします。
感染してから3〜5日後に、手のひら、足背や足底、口の中などに2〜5mmの水疱性発疹が出ます。特に口内は激痛を伴います。水疱の症状は必ずしも、手・足・口の3箇所全てに水疱が出るとは限らず、個人差があります。
水疱は痛みを伴い、飲食が困難になったり、足底(足の裏)の水疱の激痛によって、歩行がほとんど不可能になる場合もあります。ほとんどの感染者は、数日で治る感染病で、水疱が治癒する際には、かさぶたを形成しないのが一般的です。
手足口病の症状は、見た目は重そうに見えても、思いのほか平気な顔をしている子供も見られるため、水疱の痛みにも個人差があり、一概には言えません。
エンテロウイルス71(EV71)が原因の手足口病に感染した場合には、他のウイルスによる手足口病と比べて、中枢神経系の合併症を引き起こす可能性が高いことが分かっています。
稀に髄膜炎、小脳失調症、脳炎など、中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状を引き起こす場合があります。
発疹
手足口病の発疹の症状は、手のひら、足底や足背、口の中などに2〜5mmの水疱性発疹が出て、水疱に痛みがあることが特徴で、感染後3〜5日後に現れ始めます。
手や足にできた発疹に関しては、痒みや痛みがないことが多いですが、口の中にできた発疹(水膨れや口内炎)に関しては、痛みを伴う場合が多いとされています。
いずれも3日~1週間程度で症状が消えて治癒しますが、触ったり掻いたりした場合、水膨れの中には、原因となるウイルスが存在しているため、潰してしまうと感染が広がり、発疹の症状が悪化して治りが遅くなる可能性があります。
よって、発疹は無闇に触らず搔かないようにすることが大切です。
喉の痛み
手足口病に感染した場合、喉にできた発疹の症状により、口の中に痛みが現れることがあります。そのため、子供は食事や水分を摂取しなくなる傾向にあります。そのため、喉への刺激が強い食品は避けて、以下のような喉越しの良い食品や、柔らかい食品を食べさせることが大切です。
- 豆腐
- プリン
- アイス
- 冷めたおかゆ
- ゼリー
また十分に水分摂取をし、脱水症状を防ぐことが大切です。
保育園や幼稚園などへの登園は、口の痛みがなくなるまで休むことを推奨します。食欲が出て、その他の熱の症状などが治まって、体調が整ってから行くようにしましょう。
下痢・嘔吐
手足口病の症状には、お腹が緩くなったり、吐いたりするというケースがありますが、下痢の症状が重くなったり、何度も吐いてしまうケースは少ないことで知られています。
また手足口病の原因となるウイルスは、完治した後も数週間という長期間にわたって、便に存在しています。特にエンテロウイルスは、アルコール消毒への耐性があるため、アルコール消毒だけではなく、石鹸での手洗いを徹底することが大切です。
また子供のオムツ交換後は、石鹸での手洗いを徹底し、感染拡大予防を徹底しましょう。
発熱
手足口病では、多くの場合は37度台で、稀に38度以上の高熱が出る方もいます。(感染者の30%程度)
基本的に一般的な風邪の場合と同じような対処で問題ありません。
手足口病の場合、発熱の症状が現れてから、基本的に1~2日程度で下がり、熱が出ていても元気な場合が多いと言えます。
逆に発熱の症状が見られないにもかかわらず、子供がぐったりしていたり、いつもと様子がおかしいなどの場合も、かかりつけ医への受診をしましょう。
また、三日間以上熱が下がらない場合は、発熱の原因が手足口病ではない可能性もあるため、早急にかかりつけ医への相談をするべきでしょう。
手足口病に大人が感染したら?
手足口病というのは子供の感染症というイメージが強いですが、感染の原因がウイルスであるため、大人でも感染する場合があります。
大人が手足口病にかかってしまった場合、どのような症状が現れるのか、職場への出勤はいつから可能なのかということについて、注意点も含めて解説していきます。
重症化しやすい
大人が手足口病に感染した場合、子供が感染した場合の症状と少し異なることが多いと言われています。
大人が感染した場合、発疹のかゆみと痛みなども含め、子供より重症化しやすい傾向があり、子供に比べて発疹が強く現れます。
大人が感染した場合の初期症状として挙げられるのは、以下の通りです。
- 発熱
- 全身倦怠感
- 関節痛
- 頭痛
- 咽頭痛
- 下痢・嘔吐
これらの症状の後に、
- 皮膚の水泡性発疹(水膨れ)
- 口腔内の水泡性発疹
初期症状が治まるまでは約10日間程度かかり、皮膚や口腔内症状が治まるまでは約14日程度続き、子供が感染した場合と比較して症状が強く現れ、長い期間続きます。
出勤はいつから
結論から言うと、手足口病は新型コロナウイルス感染症のように自宅療養などといった決まりはありません。またインフルエンザのように「出席停止」のような、明確な規定もありません。
手足口病の原因となるウイルスの感染力は弱いため、以下のような、標準的な予防策をとっていれば、基本的に出勤することは可能です。
- 手洗いうがい
- 咳やくしゃみのマナー
- マスクの着用
しかし仕事ができるからという理由で、全く休まなくて良いというわけでもありません。
厚生労働省が発表している目安としては、「解熱して1日以上経過して、普段通りの食事ができる状態」とされています。
よって、できるだけ重症化を避けるために、発熱が改善するまでは、できるだけお仕事を休むことを推奨します。
そして可能であれば、出勤の可否は、事前に会社や医師に相談しましょう。
注意点
大人が手足口病に感染した際、症状が治まり感染防止の対策をとれば「出勤可能」ですが、その際に最も重要な注意点としては、職場などで周囲の人への感染を防ぐということです。
手足口病はウイルスによって引き起こされる感染症で、感染力は弱いですが、くしゃみや咳などを介して他の人にうつります。他にも、ウイルスのついた物を触ることでも感染します。
よって食品を扱う飲食業などの職業や、多くの人と直接的に接する営業、受付業務などの場合は特に注意しなければいけません。
また自身の感染が発覚した場合、会社のみではなく、家族や周囲の人と接触しないようにすることも大切です。特に同居する子供や、胎児への影響の可能性が心配されている妊婦などへの感染には十分に注意しましょう。
大人が手足口病に感染した場合、症状が出ない「不顕性感染」という可能性もあります。そのまま気づかず、周囲の人に感染させてしまうケースも少なくありません。
よって、症状がでていないから問題ないとは言い切れず、子供が感染した場合や知り合いが感染した場合は、自分が不顕性感染を起こしている可能性も考慮し、感染拡大防止のための適切な行動を取ることが大切です。
手足口病に感染したら
手足口病に感染した場合、効果的な特効薬はなく、対症療法が用いられます。口の中にできた水疱に対して、鎮痛解熱薬で痛みを和らげたり、粘膜保護剤の軟膏などが処方される場合があります。
また子供が感染した場合は、基本的に受診する診療科目は小児科です。大人の場合は、内科を受診することになります。
手足口病に感染すると、脱水症状のリスクがあるため、意識的に水分を摂取することが重要です。
また喉の痛みで食欲がなくなるため、噛まずに飲み込める食品を推奨します。
保育園や幼稚園などは症状が落ち着いて、口の中の痛みや体の発疹の症状がなくなるまで休むことを推奨します。食欲が出て、体調が整ってから行くようにしましょう。
手足口病の治療法
手足口病に感染した場合は、自宅で安静にして回復を待つことが推奨されます。
手足口病で高熱が出るケースは少なく、基本的には解熱剤を使用するケースは少ないと言えます。
現状、手足口病に対する直接的な治療法はありません。そのため、対症療法が用いられます。
口内の水疱や喉の痛みによって、飲食物を飲み込むことが難しくなるため、脱水症状を招く可能性があるため、場合によっては、医師の判断で点滴からの水分摂取である「経静脈的補液」を検討します。
また、体にできる水疱の症状は痒みを伴わないケースがほとんどですが、痒みが強い場合は、医師の判断で必要に応じて、「抗ヒスタミン剤」を処方し、アレルギー反応を抑制して痒みや発赤などの症状を緩和させます。
手足口病の予防法
手足口病は、ウイルス感染のため、飛沫や手指を介して感染します。感染している家族がいる場合は、基本的に食器やタオルの共有は避けましょう。
手足口病の基本的な予防法として、手洗いうがい、手指・身の回りの消毒が挙げられます。
子供の鼻水や唾液に触れた場合など、さまざまな状況で手洗いと手指消毒を徹底する必要があります。
また、便にもウイルスが存在しているため、子供の排泄後はしっかり手洗い・手指消毒をするように指導しましょう。
赤ちゃんのおむつ交換後は、しっかりと手洗い・手指消毒をすることが大切です。
さらに、夏にエアコンで部屋の温度を下げすぎると、体力が落ちたり暑さに対して弱くなり、夏風邪に感染しやすくなります。
よって、エアコンの温度設定にも気を付けましょう。
まとめ
これまでの内容を踏まえて、手足口病は大人でも感染すること、感染した場合の症状を理解し、適切に対処できるようにしましょう。また、感染した場合の注意点を理解し、最善の行動が取れるようにしましょう。
【参考サイト】
■病気スコープ
■キャップスクリニック
https://caps-clinic.jp/herpangina/
■Doctors File
https://doctorsfile.jp/medication/207/
■ココカラクラブ
■健栄製薬
https://www.kenei-pharm.com/general/learn/disinfection/7487/
■厚生労働省 手足口病
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html#:
■太陽クリニック
https://www.taiyo-cl.com/symptoms04
■Medical Note
https://medicalnote.jp/contents/180202-001-MG
■家来るドクター
https://iekuru-dr.com/blog/teashikuchibyo/#i-13
■AskDoctors