溶連菌感染症は大人にも感染する!症状や正しい対処法を解説
溶連菌感染症は子供に多くみられる病気ですが、大人にも感染する可能性があります。症状が風邪と似ているため、治療が遅れ重症化したり、合併症を引き起こしたりするケースも少なくありません。
この記事では、溶連菌感染症の症状や感染経路、正しい対処法について解説しています。
また、感染しないための効果的な予防方法もご紹介。
学校や保育園などの集団生活施設で感染しやすく、子供が感染すると家族間でうつるリスクが高くなります。
正しい対処法を知り、感染をしっかりと予防しましょう。
【溶連菌感染症】大人も感染する!
溶連菌感染症は、大人にも感染する可能性があります。はじめに溶連菌感染症とは何か、主な感染経路と考えられる原因を解説します。感染経路や原因を把握することで、正しい予防対策を実施できるでしょう。
溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症とは、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とも呼ばれ、その名の通り「A群レンサ球菌」が原因で起こる感染症です。
鼻やのどの粘膜、扁桃腺などの上気道や皮膚に感染します。
学童期などの子供に多くみられる感染症ですが、大人でも感染する可能性は十分あります。
1年を通して感染はみられますが、比較的12月〜7月に多いです。
この時期はとくに注意し、感染しないために規則正しい食生活や、予防対策を心がけましょう。
感染経路と考えられる原因
溶連菌感染症の主な感染経路は、以下の3種類です。
- 飛沫感染(咳やくしゃみなどの、細菌を含んだ唾液を吸い込むことによって感染する)
- 接触感染(皮膚に付着した細菌が、傷口などの粘膜に接触し感染する)
- 経口感染(細菌が付着した食品を食べることで感染する)
基本的には、人から人へうつる「飛沫感染」や「接触感染」が多いですが、食品を経由する「経口感染」の場合もあります。そのため、感染者と一緒に食事をすることで感染リスクが高まります。
また、感染力は急性期(症状が出始めた頃)に最も強くなり徐々に弱くなるため、症状のない保菌者からの感染の可能性は低いでしょう。
学校や保育園などの集団生活施設で流行し、子供から家族間に感染が広がるケースが多いとされています。そのため子供がいるご家庭では、大人にも感染するリスクが高まります。さらに、ストレスや過労、睡眠不足などで免疫力が低下している場合は、通常よりも感染しやすいため注意が必要です。
溶連菌感染症の症状は?合併症に注意
次は、溶連菌感染症の主な症状をご紹介します。風邪症状に似ているため放置されやすいですが、治療が遅れることで症状悪化や合併症のリスクが高まります。これからご紹介する症状に当てはまる場合は、早めに病院を受診しましょう。
主な症状は風邪に似ている
溶連菌感染症は、2〜5日の潜伏期間の後、以下のような症状が出現します。
- 発熱
- 気管支炎
- 咽頭痛
- 扁桃腺の腫脹
- 全身倦怠感
- 苺舌(舌にいちごのようなブツブツができる)
- 全身の発疹
- 嘔吐
上記症状は、一見風邪にも似ていますが、咳や鼻水が出ないのが特徴です。一般的にこれらの症状は、正しい治療を開始することで通常1週間以内に消失することが多いとされています。
しかし発見が遅れ、正しく治療が開始されないと「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎」などの合併症をきたすこともあるため、早期受診・治療することが大切です。
放置することでの合併症のリスク
治療が遅れると、症状が悪化したり合併症を引き起こしたりする可能性があります。
具体的な合併症としては、以下の疾患が生じる可能性があります。
- 肺炎
- 蜂窩織炎
- 中耳炎
- 敗血症
- 髄膜炎
- リウマチ熱
- 急性糸球体腎炎
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 猩紅熱
注意すべき合併症は「リウマチ熱」と「急性糸球体腎炎」の2つです。
この2つの合併症の特徴と症状を解説します。
【リウマチ熱】
リウマチ熱は、溶連菌感染後の免疫反応によって生じる合併症です。
溶連菌感染症を起こしてから、2〜3週間で発症することが多いですが、数ヶ月後に症状が出ることもあります。
リウマチ熱の症状は以下の通りです。
- 発熱
- 関節炎
- 心臓の炎症
- 神経刺激による不随意運動
- 皮膚の発疹やしこり
これらの症状の確認と共に、血液検査や心臓の超音波検査などから診断します。
リウマチ熱の治療法は、溶連菌に対しての抗生剤投与と、炎症を抑える抗炎症薬投与が一般的です。他にも症状に合わせて治療を行います。
【急性糸球体腎炎】
溶連菌が腎臓に悪影響を与え、急性糸球体腎炎を引き起こすことがあります。
溶連菌感染後約10日間の潜伏期間を経て、発症することが多いです。
症状は以下のものがあります。
- 顔面や足の浮腫み
- 肉眼的血尿
- 乏尿(尿が少なくなること)
- 一過性の高血圧
血液検査や尿検査にて診断が可能です。
治療は、溶連菌に対しての抗生剤投与に加え、症状に応じた薬(利尿剤や降圧剤など)の投与を行います。
必要に応じて食事管理(タンパクやナトリウム制限など)をすることもあります。
溶連菌感染症を疑う症状があったら早めに受診し、合併症の症状も併せて注意しましょう。
急激に悪化する「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」とは?
溶連菌感染症の中に「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」があります。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、β溶血を示すレンサ球菌によって突発的に発症し、急速に多臓器不全などをきたし、敗血症性ショックを起こすことがあります。
子供から大人まで広範囲に渡って発症する可能性がありますが、特に30歳以上に多くみられるのが特徴です。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の初期症状としては、以下のものが見られます。
- 発熱
- 手足の疼痛や腫脹
- 血圧低下
これらの症状は、溶連菌が出す毒素が原因と考えられています。
急速に悪化するのが特徴で、発症から数十時間以内には、手足の壊死や多臓器不全などのショック症状を引き起こすこともあります。
最悪、命を落とすケースも少なくありません。
そのため、溶連菌に感染してしまったら早期対応が重要です。
溶連菌感染症を疑う場合は「内科」か「耳鼻咽喉科」を受診
溶連菌感染症かも?と思ったら「内科」か「耳鼻咽喉科」を受診しましょう。
子供も一緒に受診する場合は「小児科」でも問題ありません。
ここでは、検査方法や治療法に関して解説します。
診察と検査方法
溶連菌感染症が疑われたら、内科か耳鼻咽喉科を受診しましょう。
まずは医師にて診察を行い、溶連菌感染症の症状があるかを確認します。
症状がみられ感染を疑う場合は、のどに溶連菌がいるかを検査で確かめます。
一般的な検査は、のどの奥を綿棒でこすり分泌物を採取しその中に溶連菌がいるかを確認する方法です。
同時に炎症の度合いや他の合併症を引き起こしていないか、血液検査にて確認することもあります。
最近の検査は比較的短時間で結果が出る場合が多いため、15分ほどで溶連菌感染症か否かが分かるでしょう。
主な治療方法は抗生剤内服
溶連菌感染症と判断された場合は、抗生剤が処方されます。抗生剤は溶連菌を退治するために重要な薬です。10日間分ほどの薬が処方されるので、出された薬はしっかりと飲み切りましょう。
他にものどの痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤などが処方されることもあります。医師の判断によって処方される薬が異なるため、指示に従って内服する必要があります。
溶連菌感染症を悪化させないための注意点
溶連菌感染症は、正しい治療法で治さないと、重症化したり合併症を引き起こしたりする可能性があります。そのため、処方された抗生剤は必ず飲み切ることが大切です。
症状がなくなり体調が良くなっても、抗生剤はなくなるまで飲まなければなりません。
途中でやめてしまうと、完全に溶連菌が退治できず再発や悪化のリスクにつながります。
疑わしい症状がある場合は早めに病院を受診し、決められた治療法をしっかりと守りましょう。
職場への出勤はいつから可能?
溶連菌感染症に感染してしまったら、出勤できるのか不安な方もいらっしゃるでしょう。
公益財団法人日本学校保健会では、以下のように定義されています。
”適正な抗生剤治療開始後24時間を経て全身状態が良ければ登園可能”
上記は子供向けに書かれたものですので、参考にしつつしっかりと治療してからの出勤が望ましいでしょう。
抗生剤を飲み始めてから2~3日ほどはゆっくりと安静に過ごし、症状が消失するのを待ちます。症状が消失したあとも、発熱などで体力が落ちていることも考えられるため、十分な休息と身体に優しい食事をとることが大切です。
感染しないための予防方法
最後に、溶連菌感染症に感染しないための効果的な予防方法をご紹介します。
感染時期にはとくに、これらの予防対策を意識しましょう。
こまめな手洗い・うがい
まずは、こまめな手洗いうがいを心がけましょう。帰宅後は流水と石鹸で十分に手を洗い、清潔なタオルを使用します。使い捨てのペーパータオルを使用するのもよいです。
とくに指の間や爪は洗い残しが多いため、小さな子供がいるご家庭では、これを機に子供と一緒に正しい手の洗い方をマスターしましょう。
また、アルコール手指消毒薬も効果的です。外出時には持ち歩き、こまめに実施するよう意識することが大切です。
マスクの着用
さまざまな感染症のリスクが高まる時期(とくに冬の寒い時期)は、外出時のマスクの着用を心がけましょう。鼻と口を正しく覆い、スキマがないように装着することが大切です。
また、のどの痛みなどの症状がある場合は、予防的に家の中でもマスクを着用することで、家族間での感染リスクを減らせます。
家族間での感染に注意
感染場所の多くは、学校などの集団生活施設と家庭内といわれています。家族内で感染が疑われる人がいる場合は、タオルや寝具の共有を避け、食事もタイミングをずらすと効果的です。
とくに兄弟間などは一緒に遊ぶことで感染リスクが高まるため、兄弟で感染者が出た場合は、症状がなくても一緒に検査を受けておくと安心です。
溶連菌感染症を予防するには免疫力を高めることが大切
溶連菌感染症は、免疫力が弱まると感染しやすくなります。
免疫力とは「病気の原因となる病原体から体を守る力」のことです。乱れた食生活やストレスなどは、免疫力を低下させる原因になりかねません。そのため、普段から規則正しい食生活を送り、免疫力を高めておくことが大切です。
ここでは、免疫力が低下する原因や、免疫力を高めるためのポイントをご紹介します。
免疫力が低下する原因
免疫力は、普段の食生活によって大きく左右されるといっても過言ではありません。
あらゆる要因が、免疫力低下につながります。
免疫力を低下させる原因は、以下のことが挙げられます。
- 不規則な生活リズム
- 運動不足
- 睡眠不足
- 栄養バランスの乱れ
- ストレス
- 乳幼児や高齢者
- 妊娠中
これらに当てはまる方は、免疫力低下につながり、感染のリスクが高まります。
普段から規則正しい食生活を意識して、免疫力向上を目指しましょう。
免疫力を高める食生活
免疫力を高めるには、規則正しい食生活を送ることが大切です。
具体的には、次のポイントを意識しましょう。
- 汗を軽くかく程度の適度な運動
- 栄養バランスのよい食事
- タンパク質やビタミンなど、免疫力を高める食材の摂取
- 規則正しい生活リズム
- 十分な睡眠時間の確保
- 体を温める
- ストレスをため込まない
これらのポイントを意識することで、免疫力向上につながります。
日々の感染予防対策ももちろん大切ですが、普段の生活スタイルを見直し免疫力を向上・維持することも重要です。
しかし、いきなり今までの生活から、すべてを改善するのは難しいでしょう。
ひとつずつポイントを意識しながら生活することで、徐々に規則正しい食生活が習慣化し、免疫力の高い身体を維持できます。
溶連菌感染症は大人にも感染する可能性がある!
溶連菌感染症は大人にも感染します。風邪と症状が似ているため、発見が遅れることも少なくありません。しかし、正しく治療が行われないと重症化や合併症のリスクが高まります。疑わしい症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
また、日頃から感染予防や規則正しい食生活を意識することが大切です。とくに冬の寒い季節は他の感染症も多く発生するため、感染予防対策を徹底しましょう。
参考サイト一覧
・厚生労働省.“A群溶血性レンサ球菌咽頭炎”
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html
・田辺三菱製薬/ワクチン.net.“感染症がはやる季節”
https://www.wakuchin.net/disease/season.html
・国立感染症研究所.“IDWR2012年第20号<注目すべき感染症>A群溶血性レンサ球菌咽頭炎”
https://www.niid.go.jp/niid/ja/group-a-streptococcus-m/group-a-streptococcus-idwrc.html
・家来るドクター.”【うつる病気】子供から大人まで気をつけてほしい溶連菌感染症の症状や治療について”
https://iekuru-dr.com/blog/033/#i-8
・厚生労働省.”劇症型溶血性レンサ球菌感染症”
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-06.html
・国立感染症研究所.”劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは”
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/341-stss.html
・ドクターズ・ファイル.”溶連菌感染症”
https://doctorsfile.jp/medication/324/
・塩野義製薬.”こどもに多いのどの病気 溶連菌感染症のおはなし”
https://wellness.shionogi.co.jp/infections/child/streptococcal.html
・大正製薬.”溶連菌感染症の予防方法”
https://www.taisho-kenko.com/disease/523/04/
・社会福祉法人 恩賜財団済生会.”リウマチ熱”
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/rheumatic_fever/
・東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター.”急性糸球体腎炎”
https://www.twmu.ac.jp/NEP/shikyutai/kyusei-shikyutai.html
・医療法人 啓眞会 くにちか内科クリニック” 溶連菌感染症(成人)”
https://kunichika-naika.com/subject/streptococcus
・医療法人社団 大日会 太陽クリニック”溶連菌感染症”
https://www.taiyo-cl.com/symptoms02#:~:text=
・大塚製薬”免疫を学ぼう!”
https://www.otsuka.co.jp/men-eki/
・宮本内科” 粘膜免疫の大切さ”