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どこまでわかっている? コロナワクチン後遺症最前線

[2022.09.09]

 

ワクチン接種で、不安を感じる方が多いのが、接種後の後遺症です。
ニュースなどで後遺症の疑いのある方の様子が取り上げられることもあり、ワクチン接種の懸念点となることもあります。
コロナワクチンの後遺症に関する情報を見て、接種を躊躇している方もいるのではないでしょうか。

では、コロナワクチンの接種にはどの程度の後遺症リスクがあり、政府ではどのような対応を取っているのでしょうか。
公開されている最新データをもとに、現在判明している内容を紹介します。

 


 

ワクチン後遺症と国が認めた事例は0。注視されているのは心筋炎と心膜炎

 

2022年8月現在の段階では、政府がコロナワクチン接種後に発生した症状を、後遺症であると正式に認定した事例は0件です。
ただし、厚生労働省が公開している統計データでは、接種後に副反応の発現や、ワクチンとの因果関係は不明なものの有害事象が発生しているケースが存在します。
後遺症の疑いのある重篤な有害事象としてとくに警戒されているのは、命にかかわる症状が発現する心筋炎と心膜炎です。
心筋炎・心膜炎の発現確率は非常に低く、割合はごくわずかです。
ほかにも症状は多岐に渡っており、接種直後の倦怠感や痛みが長期に渡り継続するものも挙げられます。

8月の時点では、新型コロナワクチンの1回目接種を終えた人の割合は80%を超えています。
接種回数の増加に伴い、徐々に後遺症の疑いのある症状の報告件数も増えてきました。

ただし、これらの症状のうち、後遺症として因果関係を正式に認められた事例はいまだに存在しません。
「接種後に発症していること」と「ワクチンが原因で発症したこと」は同じではなく、関係性を立証するのが難しいためです。
コロナワクチンの接種で発現する有害事象にはわかっていないことも多く、後遺症として認定を受け、救済制度を利用することには高いハードルがあるといえます。

ワクチンの接種状況と後遺症の現状

2022年8月現在の、新型コロナワクチンの接種状況と、後遺症の現状を見てみましょう。

ワクチンの接種状況

2022年6月29日に発表された政府の公式情報によると、日本における1回目接種から3回目接種までの新型コロナワクチンの接種率は次のとおりです。

1回以上接種:81.9%
2回以上接種:80.8%
3回目接種完了:61.7%

この時点での、国民全体の総接種回数は、2億8,476万2,731回でした。

このうち、死亡や障がいに繋がる可能性のある、重篤な副反応が現れた件数の割合は、ファイザー社製のワクチンで0.003%、モデルナ社製のワクチンで0.0016%でした。
比較的確率の高いファイザー社製のもので、約10万人に3人程度の割合になる計算です。

主な後遺症にはどんなものがある?

新型コロナワクチンの接種後に発現する可能性のある重篤な副反応としては、心筋炎と心膜炎が代表的です。
この二つの症状が発現する確率は、3回目までのワクチン接種のうちでは、2回目がもっとも高くなっています。
政府の公開している統計データによると、心筋炎の発症確率は、割合のもっとも高い「モデルナ社製のワクチンを10代の男性に接種した場合」で、おおむね1万件に1.5件です。

コロナワクチンの一般的な副反応の長期化なども、後遺症の疑いのある症状の一つです。
具体的な症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 強い倦怠感
  • 味覚や嗅覚の異常
  • せきやたん
  • 呼吸困難
  • 発熱
  • 抜け毛

また、どの種類のコロナワクチンを接種した場合でも、ごく稀に接種後のアナフィラキシー症状(急性アレルギー反応)が発現することがあります。

そのほか、アストラゼネカ社製のワクチンでは、接種後に血栓症を発症する恐れがあると報告されています。
発現頻度は10万から25万回に1回程度とごく稀で、若い女性に出ることが多い症状です。

いずれの場合も、症状が発現した際はすみやかにかかりつけ医の診察を受けることが大切です。

他に後遺症では?と考えられているものはある?

新型コロナワクチンとの明確な因果関係が現状明らかではありませんが、医療現場で後遺症の疑いがあると考えられている症状もあります。
症状は多岐に渡りますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 四肢の動作への異常
  • 歩行障害
  • ブレインフォグ(思考力の低下。後述)
  • 胸部の痛み
  • 長期間の高熱の継続

このように、新型コロナワクチンの後遺症として疑いのある症状は多く存在します。
症状が重篤で、求職や離職を余儀なくされる、寝たきりになってしまうといった事例も報告されています。

しかし、こうしたコロナワクチン接種後の症状に悩む方でも、適切な治療や補償を受けられていない場合が多いです。
病院に行っても診察を拒否されたり、検査でも異常がないため対処が難しい、と治療の継続を断られたりといった事例もあります。
なかには、病院をたらい回しにされ、難民のような状況になっているケースもあるようです。

用語解説:ブレインフォグ

ブレインフォグとは、霧(フォグ)がかかったように、頭のなかがぼんやりした状態になり、認知機能が低下することです。
通常の状態と比較して、日常の集中力や記憶力が落ち、全体的な思考力の低下がみられます。
日常生活においては、たとえば次のような影響が出るケースが多いです。

  • 仕事に集中できない
  • 人の話を集中して聞くことができない
  • 言葉を忘れてしまいなかなか出てこない
  • 複数の作業を同時進行させることができない

ただし、ブレインフォグの症状について、コロナワクチンの接種が脳に悪影響を与えているといったデータは現状ありません。
そのため、一般的な副反応である発熱にともなう倦怠感や頭痛を「ブレインフォグ」と呼んでいると考えられています。
コロナワクチン接種によって倦怠感や頭痛が継続する確率は、接種から5日後には10%以下まで低下します。
長期間継続しない場合が大半であり、数日で治まることがほとんどです。
しかし、一部の接種者に1週間以上継続するケースが見られるため、後遺症の一種としての疑いはあります。

 

 

特に注意が必要なのは心筋炎・心膜炎など

コロナワクチンの副反応としてとくに注意が必要なのは、心筋炎や心膜炎です。
心臓の組織に炎症が起こってさまざまな症状を引き起こし、ときには命に関わることもあります。

特に注視されている心筋炎・心膜炎

心筋炎と心膜炎は、政府の副反応検討部会でとくに注視されている副反応の一つです。
新型コロナワクチンの接種後に非常に低い確率で発現すると、複数の事例が報告されています。
心筋炎・心膜炎の発現する割合は均一ではなく、ワクチンの製造元や、接種者の年齢・性別によって異なります。

2022年時点で認可されているワクチンのなかでは、モデルナ社製のものがもっとも心筋炎・心膜炎の発現頻度が高いです。
若年層ほど発現しやすい傾向にあり、女性より男性に多くみられます。
性別によっては数倍~数十倍ほど、統計上のリスクが高くなることもあります。

1回目、2回目、3回目の接種を比べた場合、心筋炎・心膜炎の全体の発現傾向がもっとも高いのは2回目接種です。
2回目接種における、ワクチンの種別・年代別の報告件数をまとめました。

心筋炎の報告件数(2回目接種後。100万回あたりの数値)

年代

ファイザー
(男性)

ファイザー
(女性)

モデルナ
(男性)

モデルナ
(女性)

10代

76.5

6.2

309.9

6.7

20代

31.1

1.1

108.8

4.9

30代

6.9

2.2

16.6

4.6

40代

5.9

1.0

8.4

5.5

50代

3.0

0.9

5.6

4.4

60代

2.0

1.6

6.1

8.8

70代

1.4

1.5

0.0

0.0

80代以上

3.1

2.0

0.0

0.0

 

心膜炎の報告頻度(2回目接種後。100万回あたりの数値)

年代

ファイザー
(男性)

ファイザー
(女性)

モデルナ
(男性)

モデルナ
(女性)

10代

25.0

1.0

55.1

10.0

20代

13.5

0.5

17.1

2.4

30代

4.3

1.3

1.1

1.5

40代

1.9

0.6

3.6

0.0

50代

0.6

1.7

0.0

1.5

60代

1.0

0.6

4.0

0.0

70代

1.9

0.6

0.0

0.0

80代以上

1.0

0.6

0.0

0.0

参考:令和4年8月5日時点の心筋炎・心膜炎の報告状況|厚生労働省

数値上、もっとも高い割合で心筋炎の発現する10代男性のモデルナ社製ワクチン接種後で、確率は1万回につき3回ほどです。
接種後に発現する重篤な症状は無視できませんが、検討時は新型コロナ感染時の重症化リスクとも比較する必要があります。
現状ではコロナワクチン接種における心筋炎・心膜炎の発症確率より、新型コロナ感染時に重症化する危険性の方がはるかに高いため、特別な事情がない場合は、ワクチン接種が推奨されています。

そもそも心筋炎・心膜炎とは?

心筋炎・心膜炎は、いずれも心臓の組織に炎症が発生する疾患で、どこが炎症するかで呼び分けています。
心筋炎は、心臓の筋肉に炎症が発生することです。
これにより、心臓の鼓動に異常が発生したり、心臓の動きが悪くなったりすることで、心不全や致死的不整脈の原因となります。
一方、心膜炎は、心臓内部の心膜(心嚢)に炎症が発生することで発症します。
どちらも、場合によっては命に関わることもある重大な疾患です。

症状としては、代表的な発熱や胸の痛みに加え、次のようなものも一般的です。

 【心筋炎・心膜炎に共通する症状】

  • 頭痛や筋肉痛など風邪症状
  • 嘔吐や下痢など胃腸症状
  • 疲労
  • 息切れ
  • 腫れ(浮腫)
  • 動悸
  • 突然死

心筋炎・心膜炎はコロナワクチン接種後に稀に起こる副反応の一種です。
しかし、ほかにもさまざまな要因で引き起こされる疾患のため、原因が特定できないことも少なくありません。

最近になって注意喚起が追加されたギラン・バレー症候群

厚生労働省は、2022年6月10日、コロナワクチン接種における注意事項に「ギラン・バレー症候群」に関する内容を追記するよう指示しました。
対象となるワクチンは、新型コロナウィルス予防で接種されるもののうち、mRNAワクチンに分類されるものです。
2022年8月時点では、日本で接種対象とされているもののうち、ファイザー社製・モデルナ社製のワクチンが該当します。

ギラン・バレー症候群は、四肢や体に力が入らないことや、しびれなどを主症状とする疾患です。
手や足から力が抜け、思うように動かなくなり、徐々に症状が全身に広がっていく特徴があります。

日常生活においては、たとえば次のような症状や影響がでます。

  • 歩行時のつまずき
  • 階段を上れなくなる
  • 物がつかみにくい
  • 手足の感覚の鈍化
  • 顔の筋肉のまひ
  • 食べ物が飲み込めなくなる
  • 呼吸が苦しい

mRNAワクチン接種後に、このような体力や筋力が低下するなどの異常が現れた場合、すぐに医師に相談しましょう。
各都道府県が設置している、副反応の相談窓口に連絡することもできます。

 

後遺症や重篤な副反応に対する政府の対応はこれから

このように、新型コロナワクチンの後遺症や、重篤な副反応と考えられる症状は各地で報告されています。
しかし、現状すべての患者に補償・救済が行き渡っているわけでなく、これからの対応の充実を待たざるを得ない側面があります。

健康被害については救済制度がある

日本では、予防接種法に規定する予防接種(臨時接種・定期接種)で健康被害が生じた場合に備え、救済制度が用意されています。
2022年8月現在、新型コロナウィルスワクチンの接種は臨時接種の一種として定められており、救済制度の対象です。

健康被害が予防接種によるものと認定された場合、市町村から医療費や年金、死亡一時金、葬祭料などが給付されます。
救済制度を利用する際の手続きの流れは次のとおりです。

  1. 自治体に必要書類を提出
  2. 都道府県を経由し厚生労働省に書類を送付
  3. 疾病・障害認定審査会にて審査を行う
  4. 認定の可否を決定

しかし現状では、予防接種による健康被害との認定が出ているのは、アナフィラキシー症状など接種直後に急激に症状が発現するケースにほぼ限定されています。
これは、新型コロナワクチンが開発されてからあまり期間が経っておらず、副反応の十分な情報がそろっていないことが原因です。
ワクチン接種と有害事象の因果関係を証明することが難しく、申請されたもののうち大部分が否認されています。

2022年7月25日、コロナワクチンの接種後に亡くなった91歳の女性について、厚生労働省が死亡事例としては初の救済認定を行いました。
この時点までに、厚生労働省は3,680件の救済申請を受け、そのうち850人を認定しています。
死亡一時金の支払いが認められたのは、この事例が初めてです。

ワクチン接種後遺症と認められるには高いハードルが

2022年現在、新型コロナワクチンの接種による健康被害が、後遺症と認められるには高いハードルが存在するのが現状です。

政府は、医師などから健康被害に関する報告を適時受けていますが、副反応による症状である疑いが強いケースであっても、予防接種が原因の後遺症と判断された事例はありません。

一方で、直接接種者とつながる医療現場では、コロナワクチンの接種が原因の後遺症と診断したケースもあります。
しかし、この場合でも国が後遺症として認め、救済認定の対象としたものはなく、救済制度の補償は受けられないままとなっています。

政府は、今後もワクチン接種における有害事象の実態解明を継続するとともに、診療体制の構築と治療の知見の収集を行うとしています。

 

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