認知症とは|種類、症状、違い、原因、何科、対処法
認知症とは、様々な原因から、脳の働きが低下する事で、生活に支障が出てくる状態を指します。
認知症は、誰がなってもおかしくない、脳の症状です。
高齢者だけではなく、65歳以下の若年層でも、発症する可能性があります。
この記事では、認知症の代表的な種類、認知症の進行と介護、認知症の方への接し方、認知症は何科に相談すれば良いか、どのような相談機関があるか等を解説します。
認知症とは
「認知症」とは、様々な原因で脳の細胞がダメージを受けたり、うまく働かなくなる事で、「認知機能」が衰え、生活をし辛くなる状態を表します。
認知機能とは、物事を思考する、記憶する、言葉を発する、計算する等、頭の働きの事を指します。
ここでは、認知症の種類や、基本的な脳の働き、認知症の症状などを解説します。
- 認知症の種類
- 脳の働き
- 認知症
- 主な4種類|アルツハイマー、前頭側頭、レビー小体、脳血管性
- 認知症の症状|中核症状、行動
- 心理症状(BPSD)
- 自分でできる認知症チェックリスト
認知症の種類
一口に「認知症」と言っても、認知症の種類、原因となる病気などは様々にあります。
治療方法や対処方法は、認知症の種類やその人の体質・性質などによって事なるので、正しく診断を受ける事が大切です。
脳の働き
脳は、
- 思考(理解、判断など)
- 記憶(覚える、思い出すなど)
- 感情(喜怒哀楽など)
- 感覚(聞く、見るなど)
- 身体全体の調整(体温、呼吸、睡眠など)
など、人が生活していくために必要なシステムの、ほぼ全てをコントロールしています。
人間の脳は、「大脳」、「小脳」、「脳幹」で構成されています。
「大脳」と呼ばれる部分が、身体活動をつかさどる機能を担っています。
「大脳」は「前頭葉」、「側頭葉」、「頭頂葉」、「後頭葉」の4つに分けられ、それぞれに担う機能が異なります。
- 前頭葉(意欲、コントロール)
- 側頭葉(聞く、記憶の保存)
- 頭頂葉(空間把握
- 認識、身体の感覚)
- 後頭葉(見る)
認知症・主な4種類|アルツハイマー、前頭側頭、レビー小体、脳血管性
主な認知症について、解説します。
アルツハイマー型認知症
脳の神経細胞の障害により、脳が萎縮します。 ゆっくりと症状が進行していきます。
症状
- 少し前の出来事を忘れてしまう
- 同じ事を何度も言う
- 帰り道が分からなくなったり、道に迷ったりする
など
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や、側頭葉が萎縮します。
症状
- 他人の目を気にする事なく、やりたい事をやるという行動が見られるようになる
- 「同じ経路で散歩する」「同じものばかり食べる」など、同じ行動を繰り返すようになる
- 興味や関心が無くなると、話の途中でも立ち去るようになる
など
レビー小体型認知症
脳内に、「レビー小体」という物質がたまって、引き起こされます。
症状
- 「ネズミが動き回っている」「子供が部屋にいる」など、具体的な幻視が見られる
- 手足や筋肉のこわばり、動きの鈍り、歩幅が狭くなる等の運動能力の低下により。転びやすくなる
- 時間帯や日によって、しっかりしていたり、ぼんやりしている時がある
- 寝ている時に、足をバタつかせたり、大声をあげたりする
など
脳血管性認知症
脳卒中による脳のダメージで、起こります。 また、血管の凶作により、脳への血流が悪くなって症状が出る場合もあります。
症状
- 手足の麻痺や、ろれつが回りにくいなど、身体の動きが低下する
- 感情をコントロールできずらくなり、少しの事で怒ったり泣いたりする
- 記憶障害や、計画を立て実行する等の能力が低下する
など
認知症の症状|中核症状、行動・心理症状(BPSD)
認知症の症状は、大きく2つに分けられ、脳の細胞の障害で直接起こる「中核症状」と、周囲の関わりの中で起こる「行動・心理症状(BPSD)」という症状があります。
「行動・心理症状(BPSD)」は、周囲の対処の仕方や環境を整えたり、治療する事で改善が見られる場合があります。
中核症状
- 計算ができない
- 時間や曜日が分からなくなる
- 知っているはずの場所で、道に迷う
- 状況の判断がしずらくなく
- 約束などを完全に忘れてしまう
- 段取りよく物事を進められなくなる
など
行動・心理症状(BPSD)
- 不安感が強くなる
- 不眠になる
- 疑い深くなる
- 無気力になる
- よく怒鳴る、怒る
- 物を取られた等の妄想が起きる
など
自分でできる認知症チェックリスト
認知症が気になったら、自分自身や身近な人の行動に当てはまるものをチェックしましょう。
チェック項目は10項目。「まったくない(問題なくできる)」から「いつもそうだ(できない)」の4段階から、最も当てはまる所をチェックし、その合計点数を確認します。
合計点が、20点以上の場合は、認知機能や社会生活に支障が出る可能性があるので、かかりつけ医や、医療機関、相談機関に相談しましょう。
※このチェックリストの結果は、あくまで「おおよその目安」で、医学的診断に代わるものではありません。
認知症の診断には、医療機関の受診が必要となります。
※体調不良など、身体の機能が低下している際は、点数が高くなる可能性があります。
チェック項目 | まったくない (問題なくできる) |
時々ある (大体できる) |
頻繁にある (あまりできない) |
いつもそうである (できない) |
---|---|---|---|---|
①1 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなる事がある | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
② 5分前に聞いた事が思い出せない事がある | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
③ 周りの人から「いつも同じ事を聞く」など、物忘れがあると言われる事がある | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
④ 今日が何月何日かわからない時がある | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑤ 言おうとしている言葉が、すぐに出てこない事がある | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑥貯金の出し入れや、家賃、公共料金の支払いは1人でできる | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑦ 1人で買い物に行ける | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑧ バスや電車、自家用車などを使用して、1人で外出できる | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑨ 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができる | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑩ 電話番号を調べ、電話をかける事ができる | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
(出典:東京都福祉保健局)
認知症の進行と介護
認知症は、種類やその人それぞれで違いがあるものの、大体の場合は、徐々にゆるやかに進行していきます。
様々な制度、サービスを利用しながら、認知症の進行度に合わせて、「できる事」を活かし、「できない事」は補いながら、生活する事が大事になります。
ここでは、認知症の進行度の違いによる症状や、生活の状態などを解説します。
- 認知症の進行度別の症状、生活の状態
- 若年性認知症
- 若い人でも認知症になる可能性がある
- 軽度認知障害(MCI)について
- 認知症も「早期発見」、「早期治療」が大切
認知症の進行度別の症状、生活の状態
認知症の進行状況 | 症状 | 生活の状態 |
---|---|---|
正常 | - | 自立 |
軽度認知障害(MCI) | 物忘れがある、買い物・金銭管理がうまくできない | 問題は起こるが自立 |
認知症・軽度 | 服薬管理、電話や訪問者の対応は難しい | 見守りやちょっとした支援があれば自立 |
認知症・中程度 | 着替えや食事、トイレ等がうまくできない | 日常生活に手助けが必要 |
認知症・重度 | 日常生活動作や会話が難しくなる | 常に介護が必要 |
若年性認知症・若い人でも認知症になる可能性がある
64歳以下の方が認知症になった場合を、「若年性認知症」といいます。40~50代で認知症になると、より早い時期に家庭や職場などで、様々な問題が起こる事があります。
早めに専門医を受診したり、地域包括支援センター等へ相談し、対策をする事が重要です。
早めに診断がつく事で、治療や各種制度を利用する事ができ、困難に対応できる可能性が広がります。
また、認知症以外の病気が隠れている場合もあるので、迷われたら医療機関を受診しましょう。
認知症かな?と思うポイント
- 会話などで、話についていけなくなる
- 仕事のスピードが遅くなる、ミスが増える
- 探し物が多くなる
- 怒りっぽくなる
- 車の運転や料理が下手になる(段取りや操作がし辛くなる)
軽度認知障害(MCI)について
認知症の多くの場合は、認知機能の低下が緩やかに進行していきます。認知機能が、「健康な状態と認知症の間にある状態」の事を「軽度認知障害(MCI)」と言います。
※MCI=Mild(軽度) Cognitive(認知) Impairment(障害)の略
「同じ事を何度も言う」、「同じものばかり買う」など、物忘れは目立つものの、日常生活は自立している状態です。
軽度認知障害の方が、必ず全員認知症になるわけではありません。
軽度認知障害の時期に、治療したり、生活の仕方を見直す事が、認知症の予防、進行や発症を遅らせる事に繋がります。
認知症も「早期発見」、「早期治療」が大切
認知症も、他の病気同様に、早期発見や早期治療が非常に重要です。認知症に早く気がつくと、3つの良い点があります。①今後の生活の準備をする事ができる
- 物忘れの対策として、メモを取る等の日々の生活の中での対策を取る
- 介護保険サービスなどを利用する
- 周囲の人への理解を得る
②治る可能性のある認知症や、一時的な症状の場合がある
認知症を引き起こす病気には、早めに治療すれば改善が可能なものもあります。
- 正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 甲状腺機能低下症
それぞれに適した対応や療法が必要なので、医療機関を受診し、自身の問題が何であるかを特定しましょう。
③薬で進行を遅らせる事が可能な場合がある
アルツハイマー型認知症は
- 早い段階からの服薬などの治療
- 本人の気持ちに配慮した適切なケア
認知症対策に、早めに備える
大事な事がわからなくなってしまったり、考えて決定する事が難しくなってしまう認知症。認知症になってから、すぐに全てが困難になるわけではなく、初期段階では本人自身が決断や自分の思いをまとめる事ができます。
自分自身で、決めておく事、家族に伝えておきたい事を、早めに準備、行動しておくと良いでしょう。
まとめておくと良い事の例
- 保険証、年金手帳の番号、また、大事な書類の保管場所など財産関連の事
- 親戚や友人などの連絡先。関係のメモ。
- かかりつけ医や治療方針、受けている介護サービスの詳細
- 携帯電話やパソコン、タブレットなどの電子機器のパスワードなど
伝えておくと良い事の例
- 自分が大切にしたい事、物事
- 自分にとって嫌な事
- 今後どのように過ごしていきたいか
- 受けたい医療や介護、逆に受けたくないもの
何科に相談|認知症・病院受診までの流れ
認知症かもしれない、と思った場合、どこに相談すれば良いか、医療機関は何科を受診すれば良いかを解説します。かかりつけ医がいる場合
かかりつけ医がある場合、これまでの健康状態や性格などを詳しく知っているので、しっかりと相談できます。現状や今後どうしたいか、心配な事などを詳しく相談し、必要であれば適した専門医療機関へと繋いでもらいましょう。
かかりつけ医がいない場合
もの忘れ外来という名称で、認知症の相談を受け付けている医療機関があります。認知症と診断がつく流れと、診断後の経過観察
「認知症」と診断がつくには、検査機器が揃う病院で診察、検査を行い判断されます。診断後は、自宅近くのクリニック等で処方などを行いながら、経過観察をする事が一般的です。
クリニック等で経過観察を行う中で、症状の変化に合わせて、クリニックの医師が診断を行った病院へ再紹介する場合もあります。
このように、自宅近くのクリニックと、認知症と診断する専門医療機関が連携して、認知症に対応していきます。
認知症の専門医療機関とは|精神科、神経科、神経内科など
認知症の専門医療相談や、診断などを行う「認知症疾患医療センター」が、認知症の専門医療機関にあたります。精神科、神経科、神経内科、老年科などの診療科を持つ医療機関になります。
もの忘れ外来
認知症の診断、治療、生活指導などを行う、認知症専門の外来です。近所に該当する医療機関がない、という場合は、地域で開催される「もの忘れ相談会」や「もの忘れチェック会」に参加して相談されると良いでしょう。
多くの場合、地域と専門医療機関が連携・共同で開催されます。
受診先に迷う等の場合は地域包括支援センターに相談を
- 医療機関への受診先に迷う
- 医療機関への受診に抵抗感がある
地域包括支援センターは、高齢者の方が、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるように支援を行う総合期間です。
認知症にまつわる様々な相談に対応可能です。
認知症の症状への対応方法
ここでは、認知症の方によくある症状や、その対応方法について解説します。- 認知症の方との接し方|怒りっぽくなる、気分が落ちる、不安感
- 認知症の方を支える接し方|気持ちの理解、尊厳重視
- 外出して道に迷う場合の対応方法
- お金のトラブル
- 昼夜逆転して家族との生活時間が合わなくなったら
- 医療機関を受診したがらない
認知症の方との接し方|怒りっぽくなる、気分が落ちる、不安感
認知症になると、どのように感じる方が多いかを知ることで、認知症の方への接し方の参考になります。怒りっぽくなる
- 感情のコントロールが効かずに、怒りが前面に出てしまう
- 何か失敗をした際に、どうしてよいか分からずに混乱し、イライラしたり不機嫌になる場合がある
- 声を荒げたり、手が出てしまう場合もある
気分が沈んでうつ状態になる
- もの忘れや失敗が増えたり、今まで出来ていた事が出来なくて落ち込む
- うつ状態により、意欲が低下する
- 友人や周囲の人とのコミュニケーションから遠ざかり、閉じこもりがちな生活になる
不安を感じる
- 今までとは違ってきている自分に気が付き、不安に思う
- この先どうなっていくのか、家族に迷惑をかけるのではないかと不安を感じる
認知症の方を支える接し方|気持ちの理解、尊厳重視
認知症の方の胸中は複雑です。不安を感じる事もあれば、これまでの経験を尊重して欲しいという気持ちを抱く方も多くいらっしゃいます。認知症の方の気持ちを理解して接する事で、本人や周囲の人々も生活しやすくなります。
本人の気持ちを理解して接する
例) 記憶障害の不安から、周囲に何度も同じ事を訪ねる場合があります。「何時に出かけるのか」、「ごはんはまだか」等→そんな時は… 「何度も同じ事を聞かないで!」と怒ってしまうと、認知症である方の不安は増してしまいます。
「〇時に出かけるよ」「これが終わったら出かけましょう」「お腹が空いてるの?」等、不安を和らげる、受け止める反応が、認知症の方本人の気持ちも守られ、かつ、円滑な関係の維持にも繋がります。
本人の尊厳を大切にし、出来る事を活かしながらサポートする
認知症になっても、全ての事が出来なくなる訳ではありません。 本人のできる事、やりたい事を尊重し、さりげなくサポートしていく事が重要です。例) 料理が得意だった人が認知症になり、段取りがうまく行かなくなったり、火の不始末が増えたりする
→そんな時は… 危ないからといって、まったく料理をさせなくなるのは、本人が不機嫌・不安になったり、能力の低下の進行が早まる事も。
材料を切る、混ぜる、盛り付けるなど、本人が出来る工程をやってもらうと良いでしょう。
外出して道に迷う場合の対応方法
認知症の方が、以前は1人で行っていたスーパーや病院に行くのにも、迷ってしまうようになった場合の対応方法を考えます。なぜ道に迷うのか
認知症により、道順を思い出すことが困難になる場合があります。本人は、目的の場所にたどり着くために、目印などを探して一生懸命に頑張るのですが、道が間違っている事にも気が付かず、歩き進めてしまう事もあります。
外出させる場合は付き添う、声かけ、ヘルパーに頼る
外に行きたいという気持ちを無理に抑えるのは、大変困難な事です。- 認知症の方と一緒に出かける
- 目的と違う所に行こうとしたら「そろそろ帰りましょう」と声をかける
- ヘルパー等付き添いサービスに頼る
家族が常に付き添えない、見守れないという場合は、
- 本人が立ち寄りそうな所や、近所の方に事前に「立ち寄ったら教えてください」と伝えておく
- いつも持ち歩くカバンに連絡先のメモを入れておく
- 服に連絡先を縫い付けておく
- GPS機能のある携帯端末を活用する
- デイサービスを利用して、1人になる時間を少なくする
お金のトラブル
もの忘れが進行すると、銀行の通帳、カード、印鑑などを失くす、しまった場所を忘れる等のトラブルも見受けられます。日常の金銭管理が困難になってきたら
- 日常の金銭管理をサポートする地域福祉権利擁護事業を頼る
- 成年後見制度を活用する
買い物先のレジで計算が分からなくなってしまった
日頃利用しているスーパーや銀行などで、お金の計算ができず困ってしまう事が多くなったら、事前に利用先の店舗の方と- 対応方法
- 連絡方法
不要なものを大量に購入してしまったら
認知症からの判断能力低下により、不要な物を購入する、サービスの契約をしてしまう等のトラブルがあった場合は、地域の消費生活センターに相談し、契約解除のサポートをしてもらいましょう。昼夜逆転して家族との生活時間が合わなくなったら
認知症の方が、昼間寝ていて夜中に動き回るケースもよく見受けられます。家族との生活時間帯が合わなくなりコミュニケーションが取れない、家族が寝られない等の状態に陥ってしまいます。
- 日中に散歩や外出に行き、程よく身体を動かす。日光を浴びる。
- 昼寝は30分以内など、日中の睡眠時間を決め、夜に寝られるように生活リズムを作る
- デイサービスやデイケアに通い、人と接する時間を持つ
- かかりつけ医に相談し、お薬の処方について相談する
医療機関を受診したがらない
もの忘れがひどくなっても、本人は「どこも悪くない」「ぼけてなどいない」と認めたがらず、医療機関を受診したがらないケースも多々見受けられます。- どうして受診したくないか、理由を聞き、「認知症の方本人の気持ちを受け止めた上で心配している」、「進行を遅らせるよう協力したい」と伝える
- 家族のみで医療機関に相談して、認知症の方本人が信頼しているかかりつけ医から受診を勧めてもらう
- すぐに受診ができなくても焦らずに、地域包括支援センターに相談する
いずれにしても、無理に受診を勧めるのではなく、本人の気持ちを酌み、ゆっくり段階を踏むのが大切です。
認知症の方を支える介護サービスの例
認知症に伴う生活のし辛さは、進行状況に合わせて、医療や介護サービスを利用する事で緩和される事が多々あります。ご本人はもちろん、家族も含めて、安心して暮らしていく事ができるために、どのような介護サービス、支援があるのか、どのように利用するのかを知って、活用しましょう。
- 介護保険サービスと介護保険以外のサービス
- 自宅で受けられるサービス|訪問介護、デイケア、ショートステイほか
- 入所して受けられるサービス|グループホーム、介護老人保健施設ほか
- その他のサービス|高齢者見守り事業、民生委員
- 児童委員ほか
- 権利や財産を守るサービス|地域福祉権利擁護事業、成年後見制度ほか
- 消費生活相談
- 利用できる制度|障害者控除対象者認定、精神障害者保健福祉手帳ほか
- 運転免許証の更新
- 返納など|交通安全関連
介護保険サービスと介護保険以外のサービス
介護関連のサービスには、大きく分けて2種類あります。- 介護保険サービス
- 介護保険以外のサービス
介護保険サービスを利用するには
①介護認定申請をして、要支援、要介護の認定を受ける②ケアマネージャーと、本人、家族の相談の上で、心身の状況に合わせたサービス内容を盛り込んだケアプランを作成する
という手順が必要です。
介護保険の申請や利用は高齢者支援課、地域包括支援センターで
介護保険の申請や利用は、- 市区町村の高齢者支援課
- 地域包括支援センター
少しでも心配な事、気になる事があった場合、迷わず相談されると良いでしょう。
自宅で受けられるサービス|訪問介護、デイケア、ショートステイほか
介護保険サービスの中で、自宅で受けられる主なサービスを解説します。住んでいる地域により、ここで挙げるもの以外にも様々なサービスがあるので、ケアマネージャーと相談しながら、適したサービスを見つけましょう。
自宅で受けられるサービスの例
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 訪問入浴
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 小規模多機能型居住介護・看護小規模多機能型居住介護
- 短期入所生活介護・療養介護(ショートステイ)
- 福祉用具の貸与・特定福祉用具の販売
- 住宅改修
- 介護予防・生活支援サービス事業
入所して受けられるサービス|グループホーム、介護老人保健施設ほか
介護保険サービスの中で、入所して受けられる主なサービスを解説します。住んでいる地域により、ここで挙げるもの以外にも様々なサービスがあるので、ケアマネージャーと相談しながら、適したサービスを見つけましょう。
入所して受けられるサービスの例
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)
- 介護老人保健施設(老人保健施設)
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
その他のサービス|高齢者見守り事業、民生委員・児童委員ほか
介護保険以外のサービスになります。 認知症の方を見守るために、様々なサービスがあります。住んでいる地域により、ここで挙げるもの以外にも様々なサービスがあるので、地域の高齢者支援課などに相談して、利用しましょう。
- 地域包括支援センターによる「高齢者見守り事業」
- 訪問給食サービス
- 電話訪問サービス
- 民生委員
- 児童委員による相談活動
権利や財産を守るサービス|地域福祉権利擁護事業、成年後見制度ほか
認知症により、判断能力が低下した際の、福祉サービスの利用や、日々の金銭管理の困難をサポートするサービスがあります。地域の権利擁護センターなどの窓口に相談しましょう。
- 地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)
- 成年後見制度
消費生活相談
認知症により、商品購入やサービス契約の判断能力が低下し、金銭トラブルが起きるケースが多くみられます。悪質商法、契約トラブル、契約解除手続きのサポートなども、専門部署に相談しましょう。
- 地域の消費生活センター
- 都道府県の消費者トラブル相談窓口(例:東京都なら「高齢者被害110番」)
利用できる制度|障害者控除対象者認定、精神障害者保健福祉手帳ほか
認定を受ける事で、様々な控除が受けられたり、支援を受けられる制度があります。制度を利用する事により、生活や治療の継続がしやすくなるので、利用可能か、相談をしましょう。
- 障害者控除対象者認定(所得税、住民税の控除)
- 精神障碍者保健福祉手帳(社会復帰、自立の支援)
- 自立支援医療費制度(通院医療費の補助)
運転免許証の更新・返納など|交通安全関連
免許証更新時の講習や検査
安全運転の継続のため、高齢者の方には、免許証更新手続き前に、一定の検査や講習があります。更新期間満了日の年齢が
- 70~74歳まで:高齢者講習
- 75歳以上:認知機能検査、高齢者講習、運転技能検査(過去3年間に一定の違反歴がある場合)
認知機能検査:所要時間30分程度の検査。判断力、記憶力を確認する簡易な検査。
検査結果により、認知症のおそれがある場合、臨時適性検査の受検、もしくは医師の診断書の提出が求められます。
高齢者講習:運転に必要な身体機能の検査を行い、結果を自覚してもらうと共に、講習や実車による運転指導を行うものです。
運転技能検査:普通自動車により課題走行する事により、加齢に伴う身体機能の低下の程度を判定する検査。
この検査に合格しない場合、運転免許証の更新ができません。
免許証の返納
本人自身の「運転に自信がなくなった」、「家族から心配され、勧められた」等の申し出があれば、年齢や検査結果に関係なく、免許証の返納ができます。これを自主返納と言います。 免許証が無くなると身分証明書が無くなると心配される方もいらっしゃいますが、自主返納をすると、「運転経歴証明書」が発行され、身分証として使用する事ができます。
※運転免許が停止中の方など、自主返納ができないケースもあります。必ず返納の条件をご確認しましょう。
※運転経歴証明書を身分証明書と扱わない機関もあるので注意が必要です。
※運転経歴証明書で運転をする事はできません。
悩まずに相談を|認知症に関する相談機関
認知症かもと思ったら、ご本人やご家族、それぞれの立場での困り事は、抱えずに各種機関に相談しましょう。- 公的機関
- 医療機関
- 物忘れ相談会・相談事業
公的機関
- 地域包括支援センター
- 高齢者支援課、地域支援担当
- 若年性認知症総合支援センター
認知症について相談したい、どのように行動していけば良いか分からない等の、「最初の一歩」は、総合機関である「地域包括支援センター」に相談してみましょう。
医療機関
- かかりつけ医
- 地域連携型・認知症患者医療センター
- 地域拠点型・認知症患者医療センター
また、かかりつけ医が無い場合でも、住まいの地域と連携、もしくはその地域を拠点とした認知症専門の医療機関に、認知症の鑑別診断、相談をする事ができます。
物忘れ相談会・相談事業
- もの忘れチェック会
- 医師によるもの忘れ相談会
- 認知症初期集中支援チーム等による専門相談
お住まいの地域での相談会は、専門医療機関との共催であったり、専門医を招いて実施される事が多いです。
また、病院に行きたがらない方へは、医師や看護師等の専門家が訪問して助言等を行うサービスもあります。
まとめ
認知症は、高齢者や家族、地域など、すべての人にとって他人事ではない問題です。安心して生活していけるよう、抱えこまずに専門家に相談し、現状を把握・理解していきましょう。
生活の仕方の改善や治療を行う上での、パートナーを見つけましょう。
参考文献
東京都福祉保健局 高齢社会対策部 在宅支援課「知って安心認知症」https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/ninchishou_navi/torikumi/pamphlet.pdf
警視庁「運転免許証の自主返納・運転経歴証明書について」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/korei/henno_keireki.html