脂質異常症とは?症状や原因、種類や治療方法について解説
脂質異常症、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的に何を指すのかは少し難しいですよね。簡単に言えば、脂質異常症は血液中の脂質(脂肪)のバランスが崩れた状態を指します。
この状態が続くと、動脈硬化や心臓病のリスクが高まります。しかし、心配することはありません。脂質異常症は生活習慣の見直しや医療的な管理により、うまくコントロールすることが可能です。
この記事では、脂質異常症について、その原因から対策まで、分かりやすく解説します。自分の健康を守るために、一緒に学んでいきましょう。脂質異常症の知識を身につけることで、より健康的な生活を送る手助けとなることでしょう。
脂質異常症とは?
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値よりも高くなった状態のことです。
具体的には、以下の検査項目の値が基準値を超えたり、下回ったりすると脂質異常症と診断されます。
<基準値を超える>
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
- トリグリセライド(TG、中性脂肪)
<基準値を下回る>
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)
日本生活習慣病予防協会の報告によると、国内の脂質異常症(高脂血症)の患者数は、約220万5000人。そのうち男性は約63万9000人、女性は約156万5000人で男性よりも2.5倍も患者数が多くなっています。
女性の脂質異常症が多い理由は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが大きく関係しているからとされています。エストロゲンは、妊娠や出産だけでなく、脂質代謝にも大きくかかわっている女性ホルモンです。
更年期を迎え閉経すると、エストロゲンの分泌が少なくなります。その結果、LDLコレステロールやトリグリセライドの値が高くなってしまうのです。一般的には、エストロゲンが分泌されている間は中性脂肪の値が低く、更年期を迎えるまで、脂質異常症の患者数は女性よりも男性が多いという特徴があります。
高脂血症というと、メタボや暴飲暴食の男性がなる病気と思っている人も多いかもししれませんが、実は高脂血症は男性だけでなく、女性にとっても身近な病気なのです。
脂質異常症の種類
脂質異常症とひとことでいっても、脂質の種類や原因によっていくつかのタイプに分類できます。今回は脂質の種類による分類、脂質異常症の原因による分類の2つを紹介します。
脂質の種類による分類
脂質異常症は、脂質の種類別に次の4つに分類されます。
高LDLコレステロール血症 |
LDL(悪玉)コレステロールが多い |
低HDLコレステロール血症 |
HDL(善玉)コレステロールが少ない |
高トリグリセライド血症 |
中性脂肪(トリグリセライド)が多い |
高Non-HDLコレステロール血症 |
総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値が高い |
脂質異常症の原因による分類
脂質異常症は、原因別に次の2つに分類されます。
原発性 |
生活習慣の乱れ、遺伝などが原因で発症する |
---|---|
続発性 |
甲状腺の機能が低下したり、副腎皮質ホルモンの分泌が乱れたり、糖尿病や腎臓病の影響を受けたり、ステロイドや避妊薬の影響を受けたりなど、なんらかの病気や事象の影響で発症する |
脂質異常症と高脂血症は同じ?
脂質異常症と、高脂血症は本来同じものです。2007年に高脂血症から脂質異常症に名称が変更され、現在は高脂血症を脂質異常症と呼ぶことになっています。HDLコレステロールが低い場合を「高脂血症」と呼ぶのは適当でないことや、従来の高脂血症の診断基準には当てはまらない人がいることがわかったため、名称が変更されました。
脂質異常症の原因
代表的な脂質異常症の原因は食べすぎ、飲みすぎ、肥満、喫煙、運動不足、ストレス、加齢などです。そのほかにも、前述の「家族性高コレステロール血症」のように、遺伝で発症するケースもあります。
ご自身の脂質異常症の原因を詳しく知りたい方は、ぜひ一度当院へご相談ください
脂質異常症の症状
脂質異常症で自覚症状が現れることは、ほとんどありません。いち早く脂質異常症を発見するためには、定期的な健康診断が大切です。
脂質異常症の診断基準
脂質異常症の診断基準は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」に、次のように示されています。
高LDLコレステロール血症 |
140mg/dL以上 |
境界型高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL |
低HDLコレステロール血症 |
40mg/dL未満 |
高トリグリセライド血症 |
(空腹時)150mg/dL以上 (随時)175mg/dL以上 |
高Non-HDLコレステロール血症 |
170mg/dL以上 |
境界型高Non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL以上 |
様々な脂質異常症の診断がありますが、ご自身がどこに当てはまるか気になる方はぜひ一度ご相談ください。
脂質異常症の治療
脂質異常症と指摘された人は、できるだけ早めに治療を開始し、さまざまな病気の発症を防ぐようにしてください。脂質異常症の治療は、次の3つがポイントになります。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
脂質異常症を指摘された人の治療は、まずは食事療法と運動療法をおこないます。卵の黄身やいくら・たらこなどの魚卵にはコレステロールが多く含まれているので、食べる頻度・量を減らします。魚の干物や、加工してから時間が経った揚げ物、スナック菓子などは酸化した脂が多く含まれているので、避けるようにしましょう。
反対に食べたほうがいい食品は、野菜やキノコ類です。同じ油でも良質なオリーブオイルは、LDLコレステロールを減らす効果が期待できます。その他に、大豆製品もLDLコレステロールや中性脂肪を減らす効果があるといわれています。
また、運動することで、中性脂肪など脂質をエネルギーとして消費できる効率のよい体をつくることができます。HDLコレステロールを増やし、動脈硬化の予防も期待できます。ウオーキングやラジオ体操など、体をしっかりと動かす有酸素運動が脂質異常症の人にはおすすめです。
食事療法や運動療法をしても、脂質異常症が改善しにくい人はお薬を使用した治療をスタートします。まれに遺伝が原因で発症する家族性高コレステロール血症の人は、早期に薬を飲み始めるケースもあります。
また、薬を飲み始めたからといって、食事療法や運動療法をやめてよいわけではありません。食事療法や運動療法と併用して、薬を服用することが、より薬の効果を高めたり、合併症の発症予防には効果的だからです。
脂質異常症の改善には時間がかかります。食事療法や運動療法、薬物療法を併用しながら、無理のない範囲で治療をおこなっていきましょう。
脂質異常症の人がなりやすい病気
脂質異常症を治療しないと、血管の中に脂質がくっついて動脈硬化の発症リスクを高めます。動脈硬化が進行すると血管の壁が厚くなったり、硬くなったりして血液の流れが悪くなります。
その結果、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患、アテローム血栓性脳梗塞などの神経・血管系の疾患になりやすくなってしまいます。
また中性脂肪が高い状態が長く続くと、膵炎の発症リスクが高くなります。膵炎は、みぞおちの差し込むような我慢できない激痛が特徴の病気で、入院での治療が必要です。ときには致死的な症状にもつながる怖い病気なので、ぜひ早期に治療を開始して予防できるように努めましょう。
まとめ
今回は脂質異常症について色々と学んできました。この状態は、生活習慣の見直しや適切な医療的な対策により、うまく管理することが可能です。
食事の内容や運動の量、生活のリズム、それらすべてが脂質のバランスに影響を及ぼします。特に、バランスの良い食事と定期的な運動は、脂質異常症の管理にとって基本的なステップです。
また、当院では中性脂肪やコレステロールが高くならないように、食事や生活習慣に気を付けたい方のご相談にも乗っています。あなた自身、そしてあなたの身近な人の心の健康を守るために、スタッフ一同全力でサポートします。
参考資料
1)脂質異常症 厚生労働省 e‐ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html
2)高脂血症
https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/225.pdf
3)一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/dyslipidemia/
4)脂質異常症 “生活習慣病”オンライン
https://www.sageru.jp/ldl/knowledge/cholesterol.html
5)動脈硬化症疾患予防ガイドライン2022年版 日本動脈硬化学会
https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/
http://www.osaka-ganjun.jp/effort/cvd/training/teaching-materials/pdf/memo_03.pdf