血糖値とは?高くなる原因や症状、治療法を解説
血糖値とは、私たちの血液中にどれくらいの糖分(グルコース)があるかを示す数字です。私たちの体はこの糖分をエネルギー源として使います。しかし、血糖値が高すぎたり、低過ぎたりすると体にとっては好ましくなく、糖尿病や低血糖などの病気につながることもあります。
そのため、血糖値を適切に管理することは、健康のために大切です。そこで、本記事では、血糖値についての基本情報から、血糖値をコントロールするための食事や生活習慣のアドバイスまで、みなさんが知っておくべきことをわかりやすく説明していきます。
血糖値を理解することで、より健康的な生活を送るための一歩を踏み出しましょう。
血糖値とは?
血糖値とは、血液の中に含まれるグルコース(ブドウ糖)の濃度のことです。
食事を摂り、炭水化物が体内で吸収されると、ブドウ糖に変換されます。その時にエネルギーであるブドウ糖は一度血液の中にとりこまれ、その際に血糖値は上昇します。反対に、インスリンという血糖値を下げる働きのあるホルモンが分泌されると、ブドウ糖は体内の細胞に取り込まれ、血糖値は低下します。
一般的に食事をとったあとに血糖値が上昇し、その後インスリンの働きに低下するという一連のサイクルで血糖値は変化してます。健康な人でも血糖値は、食事前・後で大きく変化しますが、どのようなタイミングでも正常範囲内で血糖値がコントロールできるように体内のインスリンがうまく働いてくれています。
インスリンの効果で補えないぐらいの量のブドウ糖を摂取したり、インスリンが不足したり、働きが悪くなったりすると血糖値が高くなります。この状態を“糖代謝異常”や“糖尿病”といいます。
日本国内では糖尿病とわかっている人、糖尿病を疑われる人、糖尿病の可能性が否定できない人が約2000万人います。また、その内訳としては、男性19.7%、女性10.8%で男性のほうが多い傾向があり、患者数は年々増加傾向です。
血糖値が高い or 低いってどのくらい?どちらが危険?
では、血糖値が高い・低いとはどのくらいの値なのでしょうか。空腹時の血糖値の正常範囲は70 ~ 109mg/dLで、食事後は140mg/dL未満程度で許容範囲とされています。
血糖値が高いことを気にされる方が多いかもしれませんが、実は血糖値が低い状態も危険をはらんでいます。血糖値が低い状態というのはエネルギーの枯渇を意味しますから、細胞が正常に働きません。
異常に血糖値が低くなってしまうと、痙攣や意識障害をおこし脳細胞にダメージを与えます。ときには命に影響する重篤な状況につながってしまうこともあります。
一方で、ご存じの方も多いかもしれませんが、血糖値が高い状態というのも決して好ましくありません。血糖値が高いと、さまざまな病気にかかるリスクが高くなってしまうからです。
血糖値が高くなる原因
ではどうして血糖値が高くなるのでしょうか。多くの方がご存じかもしれませんが、、“食事”は血糖値が高くなる原因の一つです。炭水化物を摂取すると、体内でブドウ糖に分解され血糖値が高くなります。
またそれだけではなく、血糖値が高くなる原因には次のようなものがあげられます。
- 食べ過ぎ
- 飲みすぎ
- 肥満
- 運動不足
- ストレス
- 生活習慣の乱れ
- 加齢
- 遺伝
- 膵臓など内臓の病気
- ステロイドなどの薬
- 感染症
このように血糖値が高くなる原因は様々あり、ひとりひとり異なるため、複数の原因が関連している場合も少なくありません。生活の背景やこれまでのご病気、家族の状況などを考慮し、原因をつきとめる必要があります。
血糖値が高いときの自覚症状はある?
では血糖値が高い時にはどのような症状が現れるのでしょうか?実は、血糖値が高い状態でのご自身で気づけるような症状はさほどなく、自分の血糖値が高いことに気付かない人がほとんどです。
しかしながら異常に血糖値が高い時には次のような症状が出る場合もあるので、注意が必要です。
- のどが渇く
- おしっこの量が増える
- だるさや疲れを感じる
- 集中力がなくなる
- 傷がなおりにくくなる
- 皮膚にできものができやすくなる
一概にはいえませんが、このような症状が出てきたときには、血糖値が高いことが原因かもしれません。一度病院で検査してみましょう。
血糖値が高いとなりやすい病気
血糖値が高いとなりやすい病気は非常に多くあります。その代表例が糖尿病かと思いますが、糖尿病とは血糖値が基準より高くなってしまい、血液がドロドロになってしまう病気です。この状態では血管が傷つきやすく、多くの病気に関連していきます。
血管が豊富に存在する臓器はほとんどすべて病気になりやすくなってしまいます。たとえば心臓、腎臓、目などが一例です。心臓が悪くなると、狭心症や心筋梗塞などになるリスクも高くなりますし、腎臓が悪くなると、働きが低下し毒素を体の外に出せなくなってしまいます。病状が進行すると、透析も必要になります。
また、目が悪くなると網膜という血管が豊富な組織が破壊されて、視力が低下して最悪の場合には目が見えなくなってしまいます。さらに、血糖値が高いとブドウ糖が末梢神経にくっつき神経が麻痺することで、次のような症状があらわれることもあります。
- 手足のしびれ
- 感覚の麻痺
- たちくらみ
- 下痢・便秘
- 吐き気
- インポテンツ(勃起障害)
このように血糖値が高い状態が続くと、様々な病気になるリスクが格段にあがります。将来の健康のために、自覚症状がない人でも、血糖値が高いと指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。
血糖値が高いときの治療法
ここからは血糖値が高いときの治療法をご紹介します。
治療法のポイントは3つです。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
食事療法
食事は血糖値をコントロールする際に外せないポイントです。体の中に入る糖分の量を調整し、血糖値が高くならないようにする必要があります。
血糖値が高い方に推奨する食事療法のポイントは次のとおりです。
- 丼物はやめて定食にするなど、バランスのよい食事を心がける
- よく噛む
- 満腹まで食べない
- 野菜から先に食べて糖分の吸収をゆっくりにする
- 清涼飲料水やお菓子などの量・頻度を減らす
- 1日3食、規則正しく食べる
- 寝る前に食べない
ご自身にあった食事療法や、どのような食事内容がよいのかわからない方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
運動療法
運動も血糖値を下げる大切な要素です。運動すると糖分が消費され、血糖値が下がりやすくなります。また、継続的な運動で筋肉の量が増えると、より糖分が消費され、さらに血糖値が下がりやすくなるのです。
おすすめの運動療法は、ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動と、軽い筋力トレーニングです。できれば毎日運動したほうがよいですが、まずは可能な範囲でもかまいませんので、継続することが大切です。少しずつ運動する習慣を身につけて、糖分を消費したいですね。
薬物療法
食事と運動が血糖値をコントロールする基本的なポイントではありますが、それでもコントロールできない方は薬での治療も必要です。基本的にはまず飲み薬での治療から始めます。血糖値を下げる薬としては、現在たくさんの種類の薬が出されており、それぞれ働きも異なります。
その人の状況によって、効果的な薬が異なりますので、必ず医師と相談しながら治療にあたってください。また、飲み薬でもコントロールできない方には、“インスリン注射”が処方されることもあります。注射は痛そうだし、面倒だと感じる人もいるかもしれませんが、現在では簡単なキットを使用することがほとんどですので、お気軽にご相談ください。
まとめ
健康的な生活を送るためには、血糖値をうまく管理することが大切です。そのためには、糖分の多いものを避け、バランスの良い食事を心がけ、そして適度に体を動かすことがポイントです。
定期的に血糖値をチェックすることで、血糖値が高くなったり低くなったりしていることを早く察知し、対策を立てることができます。血糖値が気になる方は、ぜひ一度当院にご相談ください。あなた自身、そしてあなたの身近な人の心の健康を守るために、スタッフ一同全力でサポートします。
参考資料
1)令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
2)糖尿病ってなに? 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/04.html#02